第6話(番外編)夢見る頃を過ぎてもなお

健二君と、初めてご飯を食べに行った。

というより、初めてマトモに顔を見合わせて話をした。


昔は、ずっとヤンキーで怖いというイメージしか無かったが、話し方はソフトでとても優しかった。


最初は、ビクビクしながら座っていたが段々健二君の優しげな眼差しに、少しずつ安心するようになっていった。


でも、内心ではまだ疑いの心はあったものの・・・。しかし、私のそんな思いを払拭するかのように衝撃的な話を健二君は、話しだすのだった。


「まさか、こうして由香里ちゃんと話が出来るようになるなんて。嬉しいよ。


実は、あの頃俺のクラスに麻里子ちゃんと来てた時あったでしょ?あの頃さ、由香里ちゃんの事ずっと好きだったんだよ。


毎日毎日、来てくれて本当に嬉しかった。

けど、顔見てたら何か話せなかったんだ。」


えっ?私の事が好きだった?ちょ、ちょっと待って?健二君、その時麻里子と付き合ってたよね?私は、その付き添いで毎回付き合わされていたんだけど?


「本当に、あの時は。困っていたんだよ。


妹(真弓)の友達で、麻里子ちゃんっていう積極的な女の子がいてさ。


ほら、君も凄く仲良かったから良く知ってるよね?ちょっと大きめの背丈の女の子・・。


俺にも正直良くわからないんだけど、いつも家の前で待ち伏せされててさ。


で、俺を見るなりいつも「ワー!」って笑顔で手を振ってくるの。


正直、そんなに話したこともないし。仲良くもない。


「あの、何なんッスか?」って聞いたら、


「妹さんから、写真見せて貰ってぇー、健二先輩本当カッコイイなって思ってぇー、ファンなんですー!」って、言われてさ。


まぁ、当時からヤンキーの輩が俺の家の前を待ち伏せすることもあるし、


俺の家は、色々複雑な事情もあって。

色々、親の借金の取り立てとかも来るからさ。


個人的には、家の前であまりウロウロされるの正直困ってたんだよね。


あまり若い女の子を、危険な目にあわすわけにもいかないから「オメェ誰だよ。帰れよ」って言ったの。


そしたら、「私と付き合ってくれたら帰ります」とか言うの。


で俺、「はぁ、何言ってんの。オメェ。訳わかんねぇよ。っうーか、オメェなんて知らねェし。帰れ!」って、怒鳴ってやったの。


当時、俺は筋金入りのヤンキーだった。だけど、実はビビりでもあったんだよね。


正直、段々この女の積極的ぶりにビビって来たの。ああ、女怖えって。


そしたら、「うわぁぁぁ!」って泣き出して。更にどうしていいかわかんなくなって。


そしたら、向こうから親父の借金取りがウワァワァ来てさ。


「あっ、やべえ!」思って、麻里子ちゃんの手を引いて路地裏に連れて行った訳よ。そしたらさ。なんか、強引にキスされたんだ。


で、俺「うわぁぁぁ!」って、逆に声出しそうになったけど。取り立てが近くに来てたから、声出せないし。


そしたら麻里子ちゃんが、


「あなたの気持ちは、わかったわ♡

こんな所に連れていくなんて・・。ウフ♡

」って言ってその日は去っていったの。


そしたらさ。数日たって、妹が「お兄ちゃん、麻里子と付き合ってるって本当?学校中で、噂だよ。」って言われたの。


で、「はぁぁぁ?」って思って。そういや、あれから毎日由香里ちゃん連れて俺のクラスに遊びに来る。


あれ、何でなんだ?って、ずっと思ってたの。まさか、麻里子ちゃん。勘違いしてる?って、その時気づいてさ。


しかも、妹から聞いたんだけど。麻里子ちゃんの話によると、俺が麻里子の部屋に言って手を出してる話にまで発展しててさ。


正直、嘘八百ネタばかり流されてて、本当にブチ切れて!でも、相手は年下の女の子だから切れても殴ったり怒ったりは出来ない。


だから、手紙で「もう辞めてください。」って書いて妹に渡して貰う事にしたんだよね。


でも、妹にはさ。学校中の人たちに「あれは嘘」って言うのは辞めてあげてって言ったの。


だって、そんな事したら。麻里子ちゃんが、ペテン師だって噂立てられて学校行けなくなるだろ?一応、俺の事一度でも好きになってくれた人だから。

俺、別に悪者になってもいいかなって思ったの。


その後、里美って女の子が「健二先輩、なんか重苦しい顔してますけど、大丈夫ですか?


私、先輩の妹の友達の小春って言うんです。私で良かったら、何でも聞きます!」と、声をかけてきた。


なんかもう、めんどくさいのまた来ちゃったよ。と、思って無視してたの。


そしたら、今度はこの子が校舎の門の前で強引に待ち伏せして、無理矢理腕組んできてさ。


その時、麻里子ちゃんが悔しそうな顔して見てたから。


「これで諦めてくれるかな」って、内心思ってて。


実際に、この事件から麻里子ちゃん俺に付きまとわなくなったし。


それと同時に、小春も俺に付きまとわなくなった。多分、小春はこの光景が見たかっただけなんだろうなと思った。本当、女性って面倒くさいなって思った。


あと、ホラ吹き女は実は麻里子ちゃんだけじゃなくて、俺の妹からもしかして変なネタ言われてなかったかな?実は、妹から最近「お兄ちゃんごめん。」って言われてさ。


何の事?って聞いたら


「私、お兄ちゃんの事が好きだったから。取られたくなかったから・・。


でも、由香里の事が好きって知ってたから・・。


部屋に日記あるの見つけちゃったの・・。日記も、勝手に見てごめんなさい・・。


私、お兄ちゃんに騙されて。お兄ちゃんの友達に襲われてトラウマになったって由香里に嘘ついてた。


全ては、由香里とお兄ちゃんを引き離す為・・。


私がメンヘラ糞ビッチになったのは。お兄ちゃんのせいなんかじゃない。お父さんのせいだった・・。」


と言って、泣き出して止まらなくなったんだ。俺と真弓は、実は本当の兄弟じゃないんだ。異母兄弟なんだ。


俺の実母は親父と離婚して、直ぐに家出したんだ。俺を残して。それから親父は、すぐに水商売してた真弓の母と再婚した。


それからすぐに、真弓は産まれた。多分親父が不倫してて、真弓の母との間に子供が出来て揉めたんだ。


しかし、俺の親父。タチの悪い事に、真弓が育ってきてからイタズラするようになったんだ。


それだけに限らず、親父は外での女遊びを辞めずキャバクラや風俗で遊ぶのを辞めない。稼ぎだけでは足らず、どんどん借金が増えていったんだ。


俺は、なんかもう家に帰るのが嫌で。やがて家に寄り付かなくなり、どんどんグレていった。


段々暴走族からもお誘いがかかり、本気でグレていった反面、妹の事も心配だったから木刀もって助けにいってた。


こんな感じで、家庭内は常に散乱していたからいつも家の中はグチャグチャで、人を招く事も特になかった。


高校になると、妹が援助交際はじめ出した。そのお金で親の借金返そうとしてるのを知った俺は、本気で親父を殺そうとした位だ。


しかし、妹は「お兄ちゃんに、苦労させたくないから」としか言わない。


俺は、「ここを出よう」と言って妹の手を引いて家を出た。


二人位なら、俺が必死でバイトしたら何とか暮らせるだろと。そんな感じで、最初は二人暮らししていたんだが。


ある日、妹が今度は俺に襲いかかろうとしたんだ。


で、「お、おい!何するんだ!」って言って。そしたら、「お兄ちゃんがずっと好きだった」と言う・・・。守ってやろうと思っていた反面、怖くなった自分もいて。


ビクビクしていたら、妹が泣き出して「ごめん、もう言わない。もう、しない。」と言って、何もしなくなった。


あれから殆ど家に帰ることなく、妹は色んな家を転々としていると聞いた。


出会い系サイトで釣った男達の家を見つけては、部屋さえあれば何処でもいいという状態だったと言っていた。


俺は、何かもうどうしていいかわからなくなった。何も助けられないし、何も出来ない。なんかもう、自分の無力さ加減に自分で自分が嫌になった。


そんな時に、今の妻に会ったんだ。自殺しようと、線路に飛び込もうとしたら。今の妻が助けてくれた。


今では、娘も二人いて幸せだよ。ただ、ずっと由香里ちゃんの事を覚えてて。何も話せないまま終わっちゃったから、こうしていつか話せたらいいなと思っていたんだ・・・。」

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