第4話(番外編)夢見る頃を過ぎてもなお

麻里子が、小春や真弓を目の仇にしているのには、モテる事やヤリマンだからという理由だけでは無い。小春は、麻里子がたった一度だけ愛した健二君を横から奪った超本人。


そして、


「ごめんね・・そんなつもりじゃなかったの・・。最初は、全然好きじゃなかったんだけど。

麻里子の事で、彼も色々悩んでて・・それを相談してたら・・。私も、正直彼の事が好きなのか嫌いなのかよくわからないけど、


彼がよく私の事誘うようになったから・・麻里子・・ごめん、ごめんね・・」


と言って、奪っていった。


ちなみに、小春は毎回この方法で男を奪うので確信犯。奪う事が目的で、基本的に男には執着心など無い。だから、すぐに振るのだ。


男はさらに小春を追いかけてくるそうだが、その事を愉快犯のように面白がって私達にレポートする。


あげくの果てに「あんな最低な男、麻里子別れて正解だったよ!」と、麻里子に無神経な報告。


一時期は、完全に里美をグループからハバにしていた姉御肌の麻里子。


だけど、そんな事で怯むような女ではなく。


「麻里子って、本当面白いよね。へえ。こんな事でムキになるんだ。


私と健二君が、一緒に帰る所見てさー。

本当、泣きそうな顔してんの。


普段、怒ってばっかりいる女の泣き顔って結構可愛いのよ。


ああいう顔を、健二君に素直に見せればもっと良かったんじゃないの?ってね。」


と、クスッと笑って私に言った小春を見て。なんかもう、「この女、死ねばいいのに」と思った事があった。


そして、その健二君というのは。実は、真弓のクズ兄貴の事だったのだ。私は、健二君のクズ伝説を真弓から散々聞かされていた。


真弓を男友達にレイプさせて、金を巻き上げていた事など、麻里子も小春も知らない。


真弓がブスだからと、家で虐めていたことなど、麻里子も小春も知らない。キングオブカズならぬ、キングオブクズだと思えるほど屑中のクズ。それが、健二君だった。


私は、その事を昔から真弓から聞いていたから


「こいつら、クズ相手に何一生懸命取り合ってんだよ。取り合う価値もねぇよ。あんな男。」


と、思っていた。


しかし、一個上の健二は顔だけは本当に彫りの深い濃い目のイケメンで人を惹き付ける華があった。


ただし、その爽やかな顔で暴走族に所属していたという話を聞いたときはドン引きした。とにかく、万引きとかカツアゲとかそんな緩い犯罪所ではなく、


噂では逆らった奴は皆、ボコボコにされて湖や川に突き落とされると聞いた。


ボコボコの仕方も、エンジン全開のバイクのタイヤに顔を擦り付けられるとか、


「顔はやめろ。股間を狙え」と、股間を蹴り続けて不能にさせるそうだ。


キン蹴りの達人との異名もあったというかなり、エグい男だったそうだが・・・。


当時、「ヤンキーと交際=イケテル女」という訳のわからない方程式があった為、健二君は学生時代は、クズの癖に超絶イケメンでヤンキーという事だけで、ホントモテまくっていた。


真弓は、濃くて太くて、髪も縮れ毛で、女の割りに無駄に濃い顔で、果てしなく太っていた。今は、ストパーかけて縮れ毛は克服してるけど、ストパーかけすぎて、薄毛になってる。


昔から老けてたから、学生時代から顔はあまり変わっていない。そんなルックスでも、婚活サイトや恋活アプリなど登録すれば、引く手数多なんだなぁと思う。


しかし、連れてくる男がいつも白髪の角刈りジジィとか、ワキガのハゲオヤジとか。無職の宗教家とか。雑食すぎるというか、男を選ばないにも程があるのだ。


選ばなければ、相手は出来るかもしれないけど。まぁ、真弓はSEX出来たらいいんだろうけどね。そういう複雑な人間関係に、常に板挟みだった私。こういう時は、「あえて、傍観者でいるのが一番賢い」と思ったのだ。

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