第1話(番外編)アンドロイドのプレゼント
(こちらは、「この胸に溢れんばかりのありったけの想いを」にて未来が変わる事もないまま年也が中年になっていった場合の話になります。)
ニート、独身、45歳。
この時点で、社会的に俺は負け組だ。
こんな俺に毎年巨額の仕送りを送る父親に甘えてしまった俺でさえ、全く働かなくても都心の高級マンションに暮らすことができる。
必死に働かないと生きていけない人を横目で見ながら「俺は普通のニートとは違う」って、ずっと思っていた。
三谷コーポレーションの社長を務める父も、俺をコネで自分の会社に入社させようとしたが俺の遅刻癖の酷さに愛想をつかせてすぐに解雇させた。
それでも、可愛い俺のためにと毎月数百万の仕送りとお正月には数億円のお年玉が振り込まれまる。
お金ってあまりに多くありすぎると、人間はロクな事に使おうと考えないんだと思う。俺は、このお金で「俺の性処理用ロボット」を開発する為に数億円のお年玉を全て投資する事にしたんだ。
狂ってるかもしれないけど、それが俺のお金の使い方だ。
俺の性処理ロボットは、俺の父の職場でリストラされた社員達を集めてチームを組んで作ることにした。
彼らは、最初は理不尽な父のリストラに不満を募らせ集団で殺人計画を企てていた程だ。殺害予告は俺の所にも来たので、どうせなら彼らをお金を使って再雇用しようって思ったんだ。
こういうお金の使い方も、俺は悪くないと思う。どうせ、親からの仕送りなのだから父の恨みを解消する為に使うのが本望だ。金の恨みは、金で解決すればいい。
俺が雇った社員に、「性処理ロボット、なぜ男性なのですか?もしかして同性愛者ですか?」と聞かれたので、「つべこべ言わずに、さっさと作れ!」と言って分厚い札束で思い切りビンタした。
彼の頬がほんのり赤く染まり、俺はゾクゾクと武者震いがした。きっと、こんな事で興奮する俺はかなりの変態かもしれない。
俺は社員に、理想の男性像をレクチャーした。肌の色は色白で細身の華奢なイケメン風。なるべく少女漫画に出てくるような、王子様系で頼む。お金なら、いくらでも払う。できれば、この写真の通り作ってくれないか。
俺が人気絶頂のイケメン俳優の写真を渡すと、「これは著作権的にちょっと」と言われたが、「著作権ごと俺が金で買う」と脅した。
この世にお金で買えないものはない。俺のお年玉は無敵だ。
俺が発注したロボットは、まるで生きた人間のように喋る精巧な作りをしていた。
ロボットは俺のいうとおりに動くように人工知能が組み込まれており、流石多額のお金を投資しただけの事はあるなと惚れ惚れした。
俺はこうして巨額のお年玉で、食べたい時に食べたいものを食べ、寝たい時に寝てロボットに性処理をしてもらう。こんな日々がずっと繰り返されるのだ。
全ての欲望を処理できたら、きっと幸せな筈だ。俺はずっとそう思っていたが、ちっとも心が満たされない。
それどころか、ずっと俺が文句を言い続けていた社員の鈴木がチームの女性と結婚する事を知って訳もわからず発狂した。
俺が欲しかったのは、欲望を満たすものではなく人の心なのか。人の心・・・。どんなに巨額のお年玉でも鈴木の心を買うことは出来ない。燻り続けた俺の心は、気がつけば破壊へと向かっていった。
ロボットと狂ったように愛し合い、狂ったように泣き崩れた俺は・・・泣きながら鈴木の名前を連呼しながらロボットを裸で抱き続けるのだ。
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