「採点の時間」(10)

 全身が光に包まれ、それと同時に破裂音が鳴り響く。

 風が冷たい。

 なんだか体も軽い。


 そして――


「ぎゃあああああああああああああああああ!!!」


 スペードがうるさい。


 あとどこかで白雪先輩の笑い声がする。


「どうだ、スペード。俺の魔法は一味違うだろう」


 言いながら二人の元へ歩みを進める。後十秒といったところか。


「何で近づいてくるのよ! というか貴方、自分が何をしているか分かってるの!?」


「どうした? 人間である俺が魔法を使ったらいけないのか?」


「そんなこと言ってないわよ! わざとやってるの!?」


「一体何のことやら」


 言いながら、さらに二人に近づいていく。もう目の前だ。

 ナナの表情は曇ったままで、目も合わせようとしない。まだ掛かるか。

 対照的にスペードは手で顔を覆っているものの、指と指の間から、しっかりこっちを見ている。こっちというか、こっちの一部分を。


 やっぱこうして見てる分にはただのガキだな……。


「止まりなさい!」


 一際大きい声を出して、スペードが俺に指を差す。

 これはあれか。銃を突き付けられたようなものか。動くと撃つ――もとい、燃やす。


 ここまでだな。

 俺は立ち止まり、映画で見た作法に乗っ取って手を挙げる。ホールドアップだ。


「手を挙げるのをやめなさいよ! 下げて! 隠して!」


 やれやれ。注文が多いお嬢様だ。俺は手で一部分を隠すが、その時にナナと目が合った。準備完了ってわけだ。


「流石スペード家のお嬢様だな。俺の魔法なんか通じないわけか」


「はぁはぁ……。貴方、本当に馬鹿にしているの? 不敬どころじゃないわ。魔法界なら死刑よ?」


「おお、怖い。だけどな、不敬って言うなら、お前もそうじゃないか」


「一体何の話? やっぱり燃やされたいの?」


「今は試験の最中なんだろう。火事が有っても、不審者が出ても、『余所見』はしちゃいけないよな」


「はっ!」


 スペードは慌てて振り向くが、もう遅い。そのための時間稼ぎだったのだ。

 ナナの頭上には、バレーボール……コートぐらいの大きさの砂球が出来上がっていた。



「やっちまえ!! ナナ!」



「スターゲイザー・ウィークエンド!」


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