第11話 開けてびっくり

 祐二ゆうじとゆっくりはなしもしてみたかったが、とりあえず0号室ごうしつへまた引越ひっこしをしなければならない。祐二ゆうじ霊視れいメガネを一本いっぽんくれた。つかさには不要ふようだったか、せっかくだからと、げているちいさなバッグにしまった。

幽霊ゆうれいなくなったことを、どうやってひろめようか?」

 十五年じゅうごねん海外かいがいにいたので、SNSにしても日本にほんのフォロワーなんてほとんどもういない。

 除霊じょれい写真しゃしんをアップしたところで、逆効果ぎゃくこうかかもしれない。アパートのえる場所ばしょまでもどってくると、だれかがなかのぞいているのがえた。

「マツじい?」

 それにしてはわか格好かっこうだ。

空巣あきすか?」

 つかさはそのおおきなからだをできるだけかがめて、そうっと近づいていった。

「あの~、なに御用ごようでしょうか?」

た~!」

 突然とつぜんうしろろからこえをかけられおとこは、かえりざまにしりもちをついて、そのままあとずさりをした。

失礼しつれいな!」

 おとこ幽霊ゆうれいアパートのうわさいてやってきて、つかさ幽霊ゆうれい間違まちがえたようだ。

残念ざんねんですが、幽霊ゆうれいはすべて成仏じょうぶつしました。」

 意気揚々いきようようとしたつかさ説明せつめいに、男はがっかりしてうなだれた。

れいはいませんが、せっかくですからなかをごらんになってください。」

 そういって、玄関げんかんけた。

「やあ、おかえり。」

 マツじいだ。つかさおどろきは尋常じんじょうではない。

成仏じょうぶつしなかったのー?」

 おもわず大声おおごえさけんだ。どうやら、ポニーにうのは日課にっかであり、未練みれんほかにあるらしい。つかさのあわてぶりに

「どうかしたんですか?」

 と、うしろからついてきたわか訪問者ほうもんしゃ不思議ふしぎそうにたずねた。

「はあ、えないひとなのね。」

 つかさは、あせくためバッグからハンカチをそうとした。

「カチャ。」

 かたいものがたる。祐二ゆうじのくれたメガネだ。

「ちょっと、これをかけてみて。」

 おとこわたされたメガネをゆっくりとかけた。

「ワオ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る