第13話 こんな気持ち初めて

 ポニーしゃまえのベンチにさきほどの老人ろうじんの霊がすわっている。つかさはポニーのほうをている。


 つかさ飼育員しいくいんはなかをはなしているがとおくてれない。祐二ゆうじは、さらにちかづいた。

「マツさんは半年前事故はんとしまえじこでおくなりになりました。」

 つかさこえがかろうじてれた。

「そうでしたか、残念ざんねんです。このさとったんですかね。」

 飼育員はポニーを見つめる。


「おねえさん、このメガネであそこのベンチをて。」

 祐二ゆうじ飼育員しいくいん霊視れいしメガネをした。飼育員しいくいんはメガネをかけてベンチのほうをくと、なみだながはじめた。

「それ、幽霊ゆうれいえるんだ。会話かいわはできないけど。」

 祐二ゆうじ飼育員しいくいんつかさ二人ふたりこえるように説明せつめいした。

「マツじいてたんですね。ポーちゃん、づいてたんだ。」


 このメガネがひとやくった。あきらめかけていた祐二ゆうじにとって、はじめてごたえをかんじた瞬間しゅんかんだった。もうすこ頑張がんばってみようという気持きもちになれた。飼育員しいくいんからメガネをりながら、今度こんどれいはなしができる霊話器れいわきでもつくろうかと考えていた。


「ありがとう。わたしつかさきみ、すごいね。」

 突然とつぜんつかさ言葉ことばに、祐二ゆうじはドキッとした。

「ぼく、祐二ゆうじ。」

 十五年前じゅうごねんまえもどったような感覚かんかくだ。

(『夢の印税生活ー死者の原稿ー』を参照)


 たがいの連絡先れんらくさき交換こうかんしてわかれた。すでに十五年前じゅうごねんまえとはメールアドレスもSNSアカウントもわっている。

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