四十一之剣 「再会」
「まあ、いいや。そこそこ楽しめたし。それに、僕たちの目的は、達成されたみたいだしね」
エトランゼは、ため息をつくと、少し不満そうな表情を浮かべています。エトランゼは、ソラとの実力さを見せつけられた後。この危機的な状態にも関わらず、余裕ありまくりなのではないでしょうか。それとも、何か奥の手があるのか。あるいは、実力を出しておらず、実は本気を出していなかったパターンか。まさかの、見栄はりということも考えられます。
「目的なんのことだ?」
エトランゼの言葉にソラが、噛みつく。
「魔王ノ聖剣を手に入れるってことさ」
魔王ノ聖剣。懐かしの響き。小説のタイトルにもなっていますが、なかなか、出てこない。会話の中で、小耳に挟んだ程度です。ここにきてやっと、魔王ノ聖剣、登場の気配。
「魔王ノ聖剣......」
ソラは、エトランゼからその言葉が出てくるとは想像していなかったので、驚いている。それに、エトランゼの「僕たち」という言葉が気になってしょうがない模様です。
「そう、ソラも探してるんだろう。魔王ノ聖剣を。でも、君以上にその剣を欲している人物がいるのさ」
「それじゃあ、お前の他に誰かもう一人いるのか?」
「そうだよー。君もよく知る人物だと思うけどな」
俺がよく知る人物......誰だ。
ソラは、エトランゼの言葉にためらいを感じていた。自分の知っている人物。それもよく知る人物というのだから、動揺してもおかしくはない。ソラは、考えを巡らせて、思い当たる人物を検索にかけてみるが、そんな人物は思い当たりません。
「誰なんだ?そいつは」
つい、ソラは、その人物の正体を聞き出そうと、問いかけ、エトランゼに近づこうとする。
「おっと、動かないほうがいいよ。後ろから、ぐさりと熱々の槍に突きさされらことになる」
「ソラ、危ない!!」
地面に倒れこんでいたタナは、必死の形相でソラに叫ぶ。その視線は、ソラとソラの後ろの正体不明な何かに向けられています。
「なに?!」
ソラが、後ろを振り向くと、人型の炎が長細い槍を構え立っている。身体だけでなく、手に持っている槍も炎で、非常に物騒です。こんな槍で、突き刺されたら、その痛さに思わず叫ばずにはいられません。
そして、ソラを今にも襲いかかってきそうです。いつの間に、そんなところにいるのか分かりませんが、ソラが優勢だったのが、急に劣勢に追い込まれる。やはり、一筋縄ではいかない相手だ。エトランゼ。
「ずっと、僕に意識を向け過ぎだよ。こんなに簡単に後ろをとられるとは。意外と弱いんだね。ソラ」
ここで、初めて、ソラはエトランゼが余裕でいられたのか、わざわざ、攻撃をくらい、自爆し ようとする演技をしたのかを理解します。それは、すべて自分に意識を向けるため。
周りの警戒した状態のソラに攻撃したとしても、目にも止まらぬ速さで防がれてしまいます。そこで、エトランゼは、自分に意識を向けさせるため、あんなことをやっていたのです。
思いきったことを考えますね。成功確率はかなり低めだと思うのですが、そこをあえていくクレイジーな部分がエトランゼの強さの秘密なのかもしれません。
「でも、僕に、この魔法を使わせたのはすごいことだよ。僕の魔法は炎を生み出すだけじゃない。炎に、命を与え、自由に操ることができる」
エトランゼは、自らの能力のすべて出していた訳ではなかったようです。奥の手を隠し持っているとは、敵ながらやるな。
「後ろの奴も、お前の魔力で生み出した炎の人形ということか」
「その通り。これから、もっと楽しいことができそうだったけど、それも、残念ながらできそうもなさそうだ。ソラ。お待ちかねの。君の親友の登場だ」
エトランゼは、指をまっすぐ伸ばし、そのソラの親友という人物を指さした。
何だ、この胸の中のざわめきは。
ソラは、視線を向ける前に、嫌な予感がしてならない。視線の方に振り向いてしまえば、なんとなく、後悔にも似た感情に襲われるんじゃないのか、そう思っています。
このまま、向かないでいい。と、言いたいところですが、そうもいかない。ソラは、エトランゼの指先の人物に目を移す。その人物を見た瞬間、目を大きく広げ驚きの表情を浮かべ、笑顔になります。
「テラ......テラじゃないか!!久しぶり、まさか、こんなところで会うなんて!!」
テラ。どこかで聞いた名前だ。物語の最初の方に確か、魔王を倒すべく、協力をしていたソラの親友。ここにきて、再登場とは。
「......」
そんなテラですが、何も語らず、顔色ひとつ変えず、ソラの横を通りすぎると、エトランゼの方に近づいていきます。
「テラ......どうしたんだよ?」
ソラに話しかけられたテラ。背中には、禍禍しい魔力を宿した大剣が、鞘に収まっています。テラは、何か覚悟を決めた様子で険しい顔つきになると、言った。
「俺は、お前の知る俺ではない。ソラ、お前との関係は、今、ここで断ち切る」
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