三十九之剣 「刹那」
ソラ......ソラ、ソラ、ソラ!!ほんとに、来た。完璧なタイミングで。素晴らしい。
エトランゼは、まっすぐ上方から降りてくるソラを凝視し、興奮している。
ソラたちは、村の入り口からではなく、地下にあり、閉鎖的な村の上方に位置する穴から村へと入っていた。村から伸びる黒煙。それを見て、ソラは、煙の出ている場所から村に入れるかもと思ったのです。
どこだ。どこにいる。街を破壊した奴は。
ソラは、廃墟と化した街を見渡し、敵の姿を探す。あたりを見渡すソラの視線は、止まり、地面に倒れ込むタナ、泣き顔の男の子、そして、不気味な笑みを浮かべるエトランゼを視界に捉えます。
タナ、あんな姿に。頑張ってくれたんだな、ありがとう。
ソラは、エトランゼの狂気ともいえる禍禍しい魔力に触れ、エトランゼが、街を破壊した人物であると察します。
「お前か!!!」
ソラは、背中の剣を抜き、戦闘体勢に入りエトランゼに、注意が向きます。
「ようこそ、ソラ。待ってたよ!!でも......こちらばかり、気を向けてもいいのかな」
エトランゼは、微笑みながら両手を広げ、歓迎する素振りを見せる。まるで、ゴールラインまで走りきった選手を迎え入れるような抱擁感。
ですが、急に顔を豹変させ、真顔になります。なんて、落差なんだ。
ソラは、エトランゼから放たれる魔力のほんのわずかな流れの変化を感じ取っていた。ソラの左前方、レンガづくりの展望台へ矢のように大気を射抜きながら進む魔力。
エトランゼが攻撃を加えようとする直前に、ソラは両肩を掴んでいる二人の妖精たちに言います。
「今だ。手を離してくれ」
ソラの指示を受けて、妖精たちは、ソラを離す。それと同時に、ソラの体は風を切るように急速に落下し始めます。
ドゴォーーン!!!
凄まじい轟音とともに、ソラの近くの展望台が突如、崩壊し雪崩のようにその破片が、ソラを襲いかかります。
「ソラ、まさか、これで終わりじゃないだろ」
エトランゼは、ソラを注意深く観察していた。落ち行く建物の破片に、ソラは足をつく。ソラは、目を瞑り、落ち着いた様子です。
そして、エトランゼが瞬きをした刹那、ソラは、姿を消す。
ソラがいない。一体......。
目を開けたエトランゼは、ソラを見失い、辺りを見渡そうとする。ですが、背後から押し潰さんとする、とてつもない大きさの魔力に、見るまでもなくエトランゼは反応し、後ろを振り向こうとします。
"0の構え"
エトランゼが振り向く1秒にも満たないわずかな間。エトランゼは、脇腹辺りに強烈な痛みが走り、気を失いそうになると、地面にゆっくり倒れ込んでいく。この一連の攻撃はほんのわずかな時間の間に行われましたが、二人にとっては、認識するには、十分な時間でした。
エトランゼは倒れ込みながら、ぼんやりソラの顔を見つめ思う。
これが、ソラという男。想像以上だ。
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