不完全お父さん



時々ね、思うんだ

君のお父さんでごめんねって

不完全で

部品がどこかで欠落して

それを当たり障りない言葉で

不器用と言うくらいなら

まだ、欠陥商品の方が良い


君の産まれた日のことなら

良く憶えていて

瞼の裏側が今でも眩しくて


魔法にかけられた


不完全で

完全にはなれなくて

すり減らして

君が背筋を伸ばしている瞬間に

いくつものワガママを飲み込んでいることを

知っている


物語を語らって

ページをめくることの、もどかしさとか

本を読み漁っていたら

食べることも忘れていたとか、

たくさんの人がいる場所が苦手とか

ワルいところばかり

遺伝しているようで


時々ね、思うんだ

君のお父さんでごめんねって

不完全で


時々ね

君が言うんだ


「私の話を聞いて?」


ガムシャラな時に

余裕をなくして

焦燥感ばかり持ち帰った時にね


時々ね

思うんだ

不完全お父さんに

魔法をかけてくれた

君が産まれた日のことを


君の産まれた日のことなら

良く憶えていて

瞼の裏側が今でも眩しくて


そんな君に

魔法をかけられたんだ

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