詠唱

かんたんなことなんだよ

こんなに、ね。

人を呪い殺すことは

長ったらしい呪いなんか必要なくて

儀式の手順なんか踏まなくても

一想いの、

ほんの少しだけ重い

言葉を吐き出せばいい

その気になれば、

言葉の短剣に毒を塗る方法だって

もう知っているでしょう?


ほら、人ならこんなに傷つけた




嘘をついてね

嘘を重ねてね

誰かが潰えて

そしていなくなって

消えてしまって

振り返る勇気ももうなくて

本当は思ってもいない

偽善の言葉を折り重ねて

重ねすぎて

こんなにも重い



回りくどい

遠回りしていく

そんな言葉なんか

そもそも必要ないの


君が言う


誰かを想う言葉や

行動とか、言動だとか

それが妄想だったとしても

それはそれでいいの


たくさんの嘘を重ねて

折り重ねて、それでも立ち続けて

今があるのならね?


隠してきた本音を

誰にも見せずに守ってきたんでしょう?


強く見せかけたり、

色のない涙を

寝る前に流したり

誰も知らない所で

無音声で叫んだり


全部、知っているからね。

そんな君だからね、

私の手加減なしの魔法をかけるのよ?


覚悟して聞いてね。

引き返せない、そんな魔法を今から囁くから。

覚悟して聞いてね?


「君が好きよ」

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