朽ちた空中庭園の片隅で、今日も魔法の歌が擦れて響く

尾岡れき

空中庭園の物語


この場所には誰もいなくて

誰もが、もう新世界へ旅立って


猫がまだいたの?

って欠伸して


ベンチの上で背伸びをする


午後三時、正確かどうかもわからない時計がさ

時を刻んで


今日もこの歌が流れるんだね


誰もいなくなって

叶える願いも

なくなって


君がいなくなって

誰もいなくなって

願ったことなら忘れて

だからここで立ち止まって、

記憶だけが嘲笑って


目が霞んで


懐かしさに

喉を鳴らす


雲の上を漂いながら

あてもなく


みんな、新世界に旅立ったよ?

猫が喉を鳴らす


誰もいなくなって

何回目の歌なんだろう?


歌に耳を傾けながら

雲の海に背中を預けながら


君の魔法が溶ける時間を待つ

夜まで遠く


君まで、遠く

まだまだ遠くて


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