スイートバイオレット
カゲトモ
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コンコン、と開店前の扉がノックされた。それは正面の扉じゃなくて、裏口からのものだった。
「はーい」
裏口を叩くなんて、ミケくらいしか思い浮かばないが、入って来る素振りはない。いつもなら勝手口の名前そのままに、了承など得ずに勝手に入って来るというのに。
商店街の誰かだろうか? 分からないけれどとりあえず開いてみる。勧誘なら裏口叩かないだろ。
「はい?」
がちゃり、と扉を開けば、そこにいたのは予想通り見知った顔だ。
「ミクリさん?」
「とミケさんです。こんにちは」
「こんにちは?」
一先ず挨拶をして状況が分からないままミクリさんを迎え入れる。後ろからついて来たのは既に顔面工事を終え、オネェスタイルになったミケだ。
「どうしたんですか、こんな時間に」
「すみません、お時間大丈夫ですか?」
「えぇまぁ、あとは開店時間を待つだけでしたから」
仕込みも掃除も終わらしているし、これからテレビでも見ようかと思っていたくらいだ。
「えと、何か飲まれます?」
「それでは、何か温かいものをお願いできますか」
カウンターに座ったミクリさん、その隣には何とも言えない表情のミケだ。うーん、これはもしかして?
「ミケも紅茶でいいか?」
ミケはこくんと頷くだけだ。これは・・・何があったんだ。少し前にミクリさんに言われた“恋占いが必要な人が身近にいる”のことだろうか? 確かに一度話してみるとは言っていたけど・・・
「そうです、そのことです」
あーやっぱりね。
カップを二つ並べて出すと、ミクリさんが真っ直ぐ俺を見て言った。
「今日、ミケさんのお店に伺っていて」
「なるほど」
それで、どうなったんだ一体? ってか、恋占いって何、どんなこと言ったの。ミケは一言も話さないし。
「ちょっとお話を聞いて、視ただけです」
視た、ね。うん。
「思っていたより、絡まってはいませんでしたけど」
「絡まっていなかった?」
「占いと視た結果では、ですけどね」
ですけど、ってことはそれ以外に何かあるってこと?
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