第9話

私の名前は『藤野(ふじの)京子(きょうこ)』。原因不明の記憶喪失の原因を調べる為、ネットゲーム『レオナルド』で調査始めた。

今日は高崎に言わずにインしている。

ダンジョン『洞窟に住み着いた夜盗』のクエストを攻略中だ。

私のジョブは中剣、回復スキル、羽による遠距離攻撃、などバランスなどに優れ、完全なソロ向けのジョブである。

また、設定が堕天使なのか、嫌われがちなので、余計ソロが増えるとういう悪循環である。そして、このゲームに記憶を失ってからインした時、驚いた、そのレベルの高さである。

この『レオナルド』内で何か決意をしてプレイしていたのだろう。

ひょっとしたら『運命の選択』はどんな願いも叶えてくれるとの噂……。

クリアを目指していたのは、友達が欲しいから関しれない。

そして、ダンジョン内で敵が出現、戦闘である。

相手はスケルトン戦士系のモンスターである。

私は切りかかり、次々と倒して行く。

「数が多い、いったん、引いて回復する。前衛を頼む……」

私は何を言っているのだろう?

そうか、今日はソロだった。

仕方なく、羽を飛ばして、威嚇しながら、後ろに下がり回復魔法を使う。

やはり、このジョブはソロ向きである。

私は奥へと進んでいく。

このクエストはダンジョン内の夜盗を倒すだけの、つまらないクエストである。

しかし、そのシンプルさから狩場でして有名である。

つまり

「おい、そこの堕天使、お前みたいなジョブは他に行けよ。見たところレベルも高い様だし」

「お前らにガタガタ言われる筋合いはない。こちらも、事情があって来ている」

などと、今の様に他のパーティーに因縁を付けられるのは慣れている。

きっと記憶を失う前も似たようなことが、多くあったのだろう。

最近は高崎がフォローを入れてくれたし。

また、二人でパーティーを組んでいるだけで全然違った。

さらに奥に進むとボスが出現、妖魔化した野党の化物である。

私はいつもの通り、剣で攻撃、引いて回復。

また、剣で攻撃を繰り返す。

しかし、このボスは遠距離攻撃も強いので回復しきれない。

「クゥ、やられるか……」

すると、右手のアザから瘴気が放たれる。

「こんな時になんだ?」

瘴気は剣に絡みつき、剣の色が変わる。

私はボスに剣で切りつけると、物凄い威力を発揮して一撃でボスを倒してしまう。

「ば、化物のだ」

どうやら誰かこの戦いを見ていた者が居るらしい。

「私は『運命の選択』をクリアした者なり、この力はその時に得た。異論の有る奴は出て来い。PKフィールドで相手をしてやる。たとえ、パーティーでかかって来てもOKだ」

辺りは静まり帰っている、言い過ぎたか……この様な闇の力……恐れて当然、帰ろう。

私はダンジョン脱出アイテムでその場を去る。

いつもの事だが後味が悪い。

いくら、『デスゲーム』と『運命の選択』の調査とはいえ、こんな人の多いダンジョンはキツイ。

私は考えてみた。何故、高崎とパーティーを組んだのかを……。

それは同じ匂いがしたからだと、決意を持ってこのゲームをしていることだと。

ログアウトして、高崎に電話を掛ける。

何時らだろう、高崎に電話をするのにこんなに時間がかかり、緊張するのは……。

「いつもの場所で話をしないか?」

私は再度ログインして、いつもの大樹のあるフィールドに向かう。

これはいくらゲーム内とはいえデートの誘いだったかな。

高崎とは『友達以上、恋人未満』の典型的な関係である。

私は迷っていた、高崎との関係を……。

もしかしたら、この私がリアルで普通の人間に戻れたならば、

やめてこう……。

今は呪いを解くことだけに集中しよう。

しかし、少し寂しさを感じた、やはり私は高崎のことを……。

私は大樹のフィールドにたどり着く。

少し早すぎたか、

そういえば、このフィールドは何の為に作られたのだろう?

象徴的な大樹、後から何のクエストを追加するのだろうか?

そして、高崎が現れる。

「高崎、すまない、今日単独行動をしてしまった」

高崎は単独行動について何も言わなかった。

高崎の推理能力なら。何故、突然呼び出したか、分かるはず。

きっと辛い思いをしたと判断して、あえてその話題に触れなのであろう。

やはり、私と高崎ではつり合わない。

私は高崎が何故、ソロでいたか気になった。

高崎ほどのレベルと知識と推理能力があれば五星の幹部になれるはず。

少し聞いてみたが笑顔でソロが気楽だからと答えられた、バカな私でも分かる嘘であった。

しかし、高崎の過去などどうでも良い、今はただ高崎と話したかった。

私は大樹を見やげた、ゲーム内で風も無いのに木の枝や葉が揺れている。

まるで、今の私の様だ……。

そして、私たちはいつまでも語り合った。

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