第7話
俺はその夜『レオナルド』にインしてみた。
早速マミに連絡を付けるため伝書バトに書き込みをする。
『アズラエルだ、今日は本社に直接、話を聞きに行った。クエスト『デスゲーム』は存在しないと言われた。見解を聞きたい。連絡をくれないか?』
早速送ってみる。
「―――返事が来るまでやることが無い、一度、落ちるか???」
すると、伝書バトが届く。
『公式には確かに『デスゲーム』は存在しない。だが、詳しくは言えないが、『デスゲーム』のプログラムはすでに存在している。このプロクラムがクエストとして発動しているかは、分からない。とにかく、生死を賭けたクエスト『デスゲーム』はこちらとしても完全に把握できていないのが現実。また、本社に行って聞いたなら知っていると思うが、このゲームのユーザーが謎の自殺をしているのは間違えない。それを含めて調査中。以上だ』
どうやら、この『レオナルド』は運営が管理出来ないクエストがあるらしい『サザン陥落』が何よりの証拠。これからどうする。一からクエストをあらい直すべきか。
***
藤野と共に首都ベネチアノの情報屋に来ていた。
「これは旦那、どうしたのですか?」
「状況が変わった。ただ『運命の選択』を調査だけでなくこの『レオナルド』全体に起きていることが知りたい。具体的には『サザン陥落』などの新たなクエストについてだ」
「『サザン陥落』はこの業界でも話題になっていますよ。クエスト事態は簡単、サザンを陥落したとされる中程度のボスを倒しだけで。簡単に言えば、サザンがただの中程度のダンジョンに変わっただけで。何故クエスト変更されたかは謎、一般ユーザーは関心が無いみたいですけど、一部……これは大きな声で言えませんが、GMが動いているとの噂、根拠がなく。情報としては売り物になりませんがね」
やはり、噂になっていたか。
「俺たちはこれから、クエストクリア条件がハイレベルなクエストかたっぱしからクリアを目指して、この『レオナルド』に起きていることを把握したい。何か良いクエストは無いか聞きに来た」
「その様子だと何か情報を得たと思いますが。また、私を利用しますか?」
「いや、これは少し危険なこと一般ユーザーを巻き込みたくない」
「あれあれ、まるでGMみたいですね。ま、良いでしょう。しかし、すでに『紅の騎士団』が動いている様ですよ」
「『紅の騎士団』?厄介な人たちに目をつけられたな」
「高崎、その『紅の騎士団』とは何なのだ?」
「この『レオナルド』で五星と呼ばれる五つのギルドの一つで。しかも、悪い噂は尽きない」
「旦那、今の所は五星クラスのギルドは『紅の騎士団』だけですが、私の経験上さらに参戦するギルドや名の通ったソロプレイヤーが現れるでしょね」
『ブルーバイブル』の情報公開は失策か……いや、『運命の選択』クラスのクエストをソロのおれが出来ることは限られてくる、仕方ないか。
「では、クエスト『咲かない桜』など、どうでしょう?」
「聞いたことがある。NPCの女性が帰らない恋人を待っている、だけのつまらないクエストと、クリア条件でも分かったのか?」
「さすが旦那。リアルに有る、ある場所に同じ桜の木があることが最近、分かったのです。そのリアルの桜を調査すればあるいは」
「ありがとう」
「情報料は低額で良いですよ、ただ、クリアしにくいと言うだけで、クリア報酬も皆無と聞きます」
「分かった、ならこの程度で……」
まず、ゲーム内での調査だ。
俺たちは桜の木のフィールドに向かった。ベネチアノから歩いていける距離なので、転送魔法陣は使わず、桜に向かう。
その途中藤野が何故くだらないクエストをクリアするかを藤野が聞いてくる。
それは簡単な物だと説明した。
まず、サザンの『古代ミイラの秘密』がありきたりで。
もし、誰かが作為的にいじるならちょうど良いクエストだったからだ。
藤野は納得したようだが。まだ、その本質は理解できていないようだった。
やがて、枯れた桜の大木が見えてくる。
調査を始めるとそこに居たNPCが語りだす。
『私は待っている。あの人の帰りを約束したこの場所で―――必ず向かえに来ると』
NPCはこれしか語らなかった。
やはり、リアルで調査するしかないか、
日を改め、電車で1時間、郊外のある町にやってきた。
情報屋から得た住所を目指す。
そこには『レオナルド』内で見たものと同じ枯れた桜があった。
近くで、絵を描いている老人を見つける。
どうする―――話だけでも聞こうと近づいてみると。
そこには『レオナルド』内のNPCの少女が描かれていた。
「おじいさん、この絵は?」
「おや、この老いぼれに、質問とは珍しい……この少女は昔の恋人でね。ばあさんに先だたれて、寂しさから追憶の記憶に残る恋人の絵を描くのが日課でね。ばあさんには、悪いが、この歳になると一番輝いていたころを思い出すものだよ。彼女は私が海外出向に出ている間に病で死んでしまった。その頃はこの桜も綺麗に咲いて、その下で永遠を誓いあったものだよ」
これはクエスト『咲かない桜』と一致する。
なら、クリア条件は……。
もしや、
俺たちはこのおじいさんに頼みこんで、ネットカフェに連れて行き『レオナルド』にインしてもらい。
そして、桜の木に連れて行くとNPCに話かけると。
「帰って来てくれたのですね。私は病でもうすぐ消える、最後に会えて良かった」
NPCはいつもと違う言葉を語りだす。
「双葉さん、こんなところに、居たのですね。帰る事が出来なくて、すまなかった」
おじいさんはそのNPCの事をよく知っている様だった。
そして、おじいさんは泣き出した。
しばらく、そっとしておいてあげよ。
そしてNPCが天に上がって消えると、桜はつぼみが現れ、そして次々と咲き満開になる。
それはとても美しく、心打たれる物があった。これがクリア報酬か……。
そしてクエストクリアの表示
おじいさんは何時までも桜を眺めていた。
そして、おじいさんの追憶の恋が終わりを告げていた。
その夜、季節外れの桜が咲くニュースが流れていた。
やはり『レオナルド』の世界のことがリアルに影響を及ぼしている様だ、これからは、さらに慎重にクエストをクリアしなくては、リアルの世界に何が起きるか分からない。
――――
俺は妹の『優理』と友に密林の中を進んでいた。
「兄さん」
「大丈夫か?優理」
「えぇ、天説の『英雄の剣』にチャレンジだね」
『聖なる滝の中』は密林を越え、険しい山を登り、『王者・ビッグタイガー』が守りし滝の裏に眠る『英雄の剣』を手にするクエストである。
「この『英雄の剣』はゲームでは最強よ」
「特殊条件下では幾つか『英雄の剣』より強い武器はあるらしいがね」
「夢の無い話は止めて」
顔を膨らませる優里であった。
また、クリア条件がペアパーティーで長い道のりと『王者・ビッグタイガー』を倒すのは苦難である為にレア度は高いのである。
―――――
夢か……。俺にとって少し辛い夢であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます