3発:イキり勃ったら即ヤルしかない!

「――と云うワケなのデス。分かりましたデスかー?」


「…うむ。ほとんど意味はワケ分からンが、とにかく、すごい自信ってことは分かった」



 幼女から受けた説明をかいつまんで意訳はなそう。


 彼女は、神様らしい。

 何も根拠はないんだが、とにかく凄い自信なので、そうしとく。

 ここに引っ掛かっちまうと腹パンが飛んでくる上、話も進まんで、軽くスルーしておく。


 衝撃の事実だったのは、俺はどうやら“”らしい。

 “社会的な死”じゃなく、医師の診断をあおぎ、法的な死、戸籍上、生物学上、死んだっぽい。

 まあ、生きていたとしても社会的な死はまぬがれようないから、このさい、ここもスルーしておこう。


 んで、人生に未練がある人間は、どうやらこの“シロ”っちゅー、不思議時空ふしぎじくうに引きずり込まれるらしい。

 管理人みたいな、神様的な人と面接し、OKが出たらどこか別の世界で転生し、新たな人生を歩み、“功徳くどく”的なナニかを積むことで元の世界に再転生、あるいは、人生に満足すれば天国的なところへいけるらしい。


 らしい、らしい、と推測ばっかなのは、なに一つ、根拠がないから。

 とにかく、お子様の妄言もうげんに一々噛みついてもしゃーないし、ガキ特有の暴力がおっかねぇーから、納得したていにしとかないと面倒なんだな、コレが。

 まあ、賢者モードの俺だからこそ理解できるってだけで、普段だったらそもそも、このガキそのものをスルーする。

 ――そんな程度。


 その程度のはずなんだが――



「…えーと、幼女……じゃなかった、神様。

 これから俺はどうすればいいの、かな?」


「はい、護居颯汰ごいそうたさん。

 あなたは、きたいですか?きたいですか?それとも、きたいデスか?」


「さっき、イッたばかりなので、もうイイです…じゃなくてッ!

 同音異義語どうおんいぎご過ぎて、ナニがドレを指すのか、サッパリ分からんのですけど?」


「このまま死んじまうか、もちっと生きてたいか、どっちを選ぶんデスか?」


「あ、ああ!そりゃ~、まぁ、もうちょっと生きていたいと云うか、人生でやり残した事はないけど、そもそも何もしてないから、ってだけの話なんで…

 ちなみになんですけど、今、死んじゃうと俺って天国と地獄、どっち行くんですか?」


「地獄(キッパリ!」


「回答、はやっ!!…そう云うの、もうちょっと、タメて云ってもらえませんかぁ?それなりにショックなんで」


「で、どっちにすんの~、デスか~?」


 あっ、この幼女、飽きてきやがったな。

 ガキはすぐ飽きるからイヤなんだ。

 俺の人生がかかってんだぞ!

 まぁ、元々の人生は始まってもねーくせに終わっちまったんだが。

 もう少し、マジメに付き合えよ、まったく。

 ま、こんな女装コスプレしたおっさんが力説しても、説得力皆無なんだが。


「え~、と。“転生”の方向で、お願いしたいかなー、って」


「ん~、しておくのデス」


「アレっ!?ここで即決される話じゃないの?それにッ、その言葉、体のいいお断りの常套句じょうとうく

 出来ればすぐにでも転生できれば、って。何せ、こんななもんで、早く着替えたいというか、なんというか」


「手続き、が必要なのデスよ。住界変更には転生届が必要なのデスよ。

 元の世界で転生出届を提出、これを転出の14日前までに行い転生出証明書を発行し、これを次の世界で転生入届と共に提出、これを転入から14日以内に行わねばならないのデス」


「うわぁ~っ、お役所仕事だな~」


「手続き以外にも重要なことがあるのデス。転生先の調整、デス。

 次の転生先の“難易度”が高いと、また、すぐ死にますからねぇ~、仕方ないデス。

 特に、護居颯汰ごいそうたさん。あなた、超越界プレーローマレベル『ゼロ』デスから、次の転生先がすぐに見つかるとは限らないのデスよ~」


「…なンか、就活しゅうかつみたいだな……」


「色々大変なのデスよ~」


 いや、ダメだ。

 待ってなどいられない。

 恐らく、俺はで待っていたら、間もなく確実に、から出たくなくなる。

 俺をそんじょそこらの引きこもりニートと一緒にするな!

 俺はニートの中のニート、ニートの帝王“オーバーニート”だ!

 一度、もる、と決めたら、とことん籠もる。

 鋼鉄はがねの意思。

 ブレない信条。

 その決意たるや、家族が俺はいないものとする、と扱う程。

 故にッ!

 今、で動かなきゃ、テコでも動かん!

 死んだ後にまで、もたもた動かんのじゃ、話にならん!

 次の人生では、ヤッてヤルッて!!


「ダメだッ!今すぐに転生させてくれっ!

 じゃあないと、俺はここから動かなくなる!神様っ、あんた、一番えらいんだろ?

 手続きなんかスッ飛ばしてくれ!転生先は、ドコでもイイ!

 ドコの世界であっても、今度こそ俺は、輝いてみせるッ!!!」


「!!えっ、えっ!?急に暑苦しいのデス。スイッチ入ったのデスか?

 なんか、悪いもんでも喰ったのデスか?」


「そりゃさっき、俺が云ったセリフだ。なんも喰ってねぇー」


「うにゅにゅ……その意気込み、買うしかありませんデスね!

 分かりました、特例デスよ、特例。ルールを曲げてまで転生をくのデスから、必ず次の人生では頑張るのデスよ」


「おう、よっ!」


「では、護居颯汰ごいそうたさん。あなたに特別に、を貸し与えるのデス」


「!!?こっ、はッッッ!!!」



 ――怒濤の展開、次回を待てっ!

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