トラブルメーカー
2時間…かろうじて寝たかな?
寝た気がしない。起床と同時に立ち上がった瞬間、眩暈がした。
全力で休みてぇぇぇ…
けどここで休んだらtwitterの件も水商売の件もケジメをつけずに辞めることになると思った。だから、ムチを打って職場まで運転。
足が前に進まない。
けど時間は経過してしまうし…
どうにかお店の前にまで来たけども、引き返したい気持ちが強い。
“別に悪いことしてないのに逃げる必要がある?”もう1人の自分が問う。
twitterでのことは、そもそも事実無根じゃん。
水商売の過去はそんなに知られちゃいけない過去かな?水商売は悪いことじゃない!
あれだけそう言ってきたくせに逃げるのかよ自分。
『よしっ…』
そう呟いてお店に出勤。
お店は、すでに子供と保護者で溢れてる。
それを見たら、また眩暈が…睡眠2時間は、結構効く。
着替えていると、パートの大黒さんが更衣室を訪れた。
高鳴る心臓の音…
『おはようございます』
「おはよう!」
大黒さんは、至っていつも通りだった。
茜からの電話を受けたのは大黒さん。きっと、私を色々と疑ってるはず。
『あの…昨日の件なんですが。ご迷惑おかけしてすいませんでした』
「うううん。あれは事実じゃないよね?」と首を横に振った後、優しい表情で問う大黒さん。
『はい…私、少し前に特定の人に色々と恨みを買いまして』
「やっぱり?あのね、あの電話があってからマネージャーとも話したんだよ。
美咲ちゃんは可愛いから、困らせようとして誰かが悪戯したんだって」
『…そうだったんですか?』
私から話したいことはたくさんあったのに、大黒さんの話を聞いていたら言葉よりも涙が流れた。
「泣かない泣かない」
そう言って、大黒さんの腕が私の体を包み込んだ。
『ごめっ、んなさいっ…ひっく』
「大丈夫だよ。大丈夫。私もマネージャーも佐藤さんの仕事ぶり見てて、何も疑ってないんだから」
大黒さんからその言葉を聞いて、胸が色んな意味でギューッと締め付けられた。
「おはようございます!」
その声に私も大黒さんもビクッとし、声がする方に視線を移すとマネージャーが立っていた。
しかも、抱き合う私たちをみてキョトンとしている様子。
「マネージャー、昨日の件やっぱり悪戯だったみたい」と大黒さん。
私は『すいません』と深々と頭を下げたが、マネージャーは「佐藤さんやめて。謝らないで!」と肩を叩いた。
大黒さんはその場を離れてマネージャーと二人きりになり、一通りのことを話した。
「佐藤さんが一番ツラいのに、一瞬でも責めるようなことを言ってしまってごめんね。
本当にごめん。」
『いえいえ、原因を作ったのは自分なので』
「そんなことない。
今ね、こういうこと増えてるのよ…頑張ってる人を蹴落とそうとする人。
だから、あの電話があって私もすぐに悪戯だって気づけば良かったのに」
『そんな…私はもう大丈夫ですから。
それに…』
途中まで出掛けた。
“水商売は悪いことじゃない”
それなら過去の話をしても良いんじゃないかって。
今後もこんなことが無いとは言い切れないし…きっと、自分の過去は消せない。
結局、私は元キャバ嬢なんだ。
「どうしたの?」
『ごめんなさい…twitterの件は事実無根ですが。水商売の件は…』
「佐藤さん!」
マネージャーによって言葉は遮られて、反射的に顔を上げた。
するとマネージャーは、いつも通りの笑顔で「過去よりも今頑張ってると言う事実が大事だと私は思ってるよ」と言った。
『マネージャー…私、嘘ついたんですよ。
履歴書も偽造です。本当にごめんなさい。クビになる覚悟で今日は来ました』
心から…心からの…謝罪。
「クビ!?なんで?」
マネージャーは、目が点になっている。
それを見て私も目が点になる。
『職歴を詐称してたんですよ。
それに前職でやっていた仕事は世間体を考えれば良い仕事じゃないことも理解してます』
「もう~!佐藤さん真面目!私も遠い昔、同じような経験が…なくはないよ」
『えっ!?』
思いがけぬマネージャーからの暴露に目を見開いた。
「佐藤さんに初めて会ったとき、同じ匂いがした。うふふふ」
そう言ってマネージャーは更衣室を出ていった。意味深…。
これって、私はここに居続けても良いと考えても良いのかな?
マネージャーの言葉がジワジワと脳内に浸透して、私は少しばかりニヤけてしまった。
今日も頑張るか…!…と、仕事に励んだのはつかの間。
わずか四時間でエンジンがキレてしまい…その日は早退。
【過去のことを関係無しに、自分のことをちゃんと見てくれてる人がいる。
地道に努力をすることは、疲れるけども、結果的に信頼を得られる。
今生きている。生かしてくれてる環境に感謝。支えてくれてる人に感謝。】
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