人生ハードモード?
10月15日、東北地方は秋が終了し冬の寒さが身にしみる。
「佐藤さん、次のお客様12時半からだから案内お願いね」
『はい』
そして、カメラスタジオの仕事は七五三シーズンの為かなりの忙しさを見せている。
勤務時間が朝の9時から夕方の6時過ぎまでなんて、ざらにあるし…
コンビニが終わってからも出勤せざる終えなくなったりと、本当に多忙。
おまけにチャットも始めたものだからてんてこ舞い状態。
「ねぇねぇ~お姉ちゃん見て~!」
子供のお着替えを手伝っていると、後ろから違う子供に話しかけられ振り向くと…
男の子が下半身の大事な部分を見せながらニヤニヤとしている。
『ああー!そういうことしたら警察の怖いおじさんが来ちゃうよ~』
軽く脅すとその子供は「嫌だ~」と言って、ズボンとパンツを履いてくれた。
そして今度その子供の袴の着付けをしていると…
「お姉ちゃん、おっぱい!おっぱい!」そう言って、指先で私の胸元をツンツンと触ってきた。
このクソガキめぇ…ったく。と思いながらも作り笑顔で『お姉さんのおっぱい触ったら指が腐って、明日にはなくなっちゃうよ?』と再び脅すと恐れた表情で、すぐさまやめてくれた。
稀にこういうお触りをしてくる子供っているんだが、大人も子供も大差ないと考えさせられる。
だってキャバ時代にも、胸を触ってこようとするお客様って居たし。
スカートの中に手を突っ込んでこようとするバカなお客様も居た。
ああいうお客様は、鳥の脳ミソのサイズが同じくらいなんだろう。
もしくは、赤ちゃん返りした大人の格好をした赤ちゃんと同じか。
子供は可愛い。
子供は天使だ。
子供は泣くのが仕事だ。
子供は悪戯をしてなんぼだ。
…とは、言うけども…やっぱり私も人間だから、この仕事が嫌になることがある。
子供の泣き声を聞くたびに本当に苛立つ。
普段なら、はいはいって思えることに腹が立ったりね。
うん…生理前だから仕方ない。冷静に冷静に。
その日も仕事が終わったのは19時過ぎ。
SNSで“今日もお仕事お疲れ様自分。ゆっくり風呂にでも浸かろう!”と、何の気なしに投稿したら…
例の苦手な茜先輩が〈お疲れ様!ゆっくり休んでね!〉とコメントをしてきた。
安定の無視を決めて帰路を急ぐ。
…~♪~…
運転中にスマホが鳴り響いて、車を道端に止めてスマホを見るとカメラスタジオからの電話だった。
何だろう?明日の出勤の時間が早くなったとか?
『はい。お疲れ様です』
「お疲れ様です。佐藤さんに聞きたいことがあるんだけど」
『あっ、はい。何でしょうか?』
「佐藤さんtwitterやってる?」
『やってますけど、どうかしました?』
どうして、自分のプライベートのことを突然聞かれたのか意味がわからなかった。
しかも何やらマネージャーは、焦ったような話し方で。
「今職場に電話があって、匿名で。
大黒さんが電話を受けたんだけどね
そちらに美咲はいますか?って」
『はぁ…それはどういうことでしょうか?』
「美咲さん仕事の情報をtwitterに書いていない?子供を殴りたいとか、ムカつくとか」
『えっ!?何のことですか!?』
…いや、内心思ってますよ。思ってますけどもね。そんなの身に覚えもないし書くわけもないし。
「さっき女の人から、美咲さんがtwitterにそういうことを書いてて、今後一切そちらのお店は使いませんって言ってきたのよ」
マネージャーの言葉が耳を通るたびに、心臓の音が嫌に高鳴る。
『いやいや、書いてませんし。
そもそも私のtwitterは鍵がついてるので特定の人しか見れないんで。一般の人は見れないんはずですけども』
んんんっ?何かがおかしい。
たしかに私はさっきtwitterで投稿をした。
あれから5分ほどしか経過していない…
そこにコメントをしてきた人が約1名。
いや、まさかそこまでしないか…
んじゃ誰が…?
「えっ、なにそれ?怖いんだけど!」
『…すいません。どんな理由であれ私のせいで職場にご迷惑をおかけしてしまって』
「佐藤さんはtwitterに子供を殴りたいとか書いてないんだよね?」
かなり疑われてる様子。
書いてもいないのに…疑われたことが一番ショックで、やりきれない。
『書いてません』
「わかった。あとね、水商売で働いていたような人を子供が行くような場所で働かせて良いんですか?と言ってきたのよ」
その言葉を聞いた瞬間に、何て返したら良いのか分からないくらいに視界が真っ暗になった。
…嘘でしょ。
「佐藤さん、水商売してたの?」
『いえ、そんな経験もありません』
…とは言ったけど、これは嘘。
「わかったわ。
明日もう一度話をしましょう」
『わかりました』
あえて、堂々とした。
疑いをかけられたこともショックだが、私が水商売をしていた過去を知られたことも…かなりショック。
脳内が働く働く。犯人探し。
twitterの友達は私が水商売をやっていた過去を知る人がほとんどだ。
けど今何処で働いてるのかを知ってる人はいないはず。
そして脳内にヒントが浮かぶ…それは今から4ヶ月前のこと、偶然町中で茜先輩に会った日の出来事。
向こうから話しかけられたが、こちらは極力話したくなくて、話を手短に納めたが、そのときの会話の一部に…
「今なんの仕事をしてるの?」
『今はカメラスタジオHですよ』
「そうなんだ!今度息子と写真撮りに行こうかな」
…そうだ。これだ。やっぱり犯人は茜。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます