弟の彼女の悩み


季節はあっという間に夏。クーラーが効いた部屋から出るのが少し億劫になるくらいに今年の夏も暑い…。


…~♪~…


LINEの効果音が鳴りスマホの画面を見ると、8つ下の現役高校3年生である弟、龍弥からだった。


<そろそろ家に着くよ~>


その連絡に《はいはーい》とレスを送る。


『そろそろ来るってよ』

「おぉそうか。珍しいよな~あいつが美咲と呑みたいだなんて」

『龍弥じゃなくて、香織ちゃんが誘ってきたんだってば』


そう、今日は龍弥の彼女である香織ちゃんも我が家に来るらしい。

香織ちゃんは、龍弥の一つ上で専門学生一年目。今春からK町からM市に引越した。

実はあまり話したことがない。それなのに、香織ちゃんが龍弥に“お姉さんと呑みたい”と言ったらしい。

きっと、何かあるに違いない。


そうこうしてる間に「お邪魔します」と言う声が二人分聞こえて、玄関に駆け寄った。


『いらっしゃい』


香織ちゃんは少し人見知りがあるのか、ぎこちなく私と一樹に笑いかけた。

その様子を見たせいか一樹は「今日の飲み会大丈夫かな?」と心配そうに耳打ちしてきた。


飲み会が始まると龍弥は一応未成年だし就活中なので、ジュース。私達はお酒で乾杯をした。こういう時にキャバで働いていた経験は大いに活かせる。人見知りの香織ちゃんの心を開くかのように会話を振る。


30分もすると香織ちゃんは自分から話してくれるようになった。


はぁ~一時はどうなるかと思ったけど、良かった良かった。


「トイレ!」そう言って龍弥は席を外した。

龍弥がいなくなって少ししてから、香織ちゃんの唇が動いた。


「実は、私キャバクラでバイトしてます」


その発言に、一瞬心がブレかけたけど…私は何処かでそれを予感していたので彼女から目を反らすことなく『そっか。龍弥は知らないんだよね?』と質問を返した。


「知りません」

「ちなみにお店は何処なの?」

一樹は若干動揺してるようだったけど、すぐにいつも通りに戻って質問をしていた。


「ジュエルです」


店名を聞いた瞬間に、ヤバッ…と思った。これは、少し香織ちゃんと話す必要がある。


『そっか』

「龍弥君には…」

『内緒にするよ』

「キャバのことなら、美咲に聞きな。一応、元No1だし」

なんて冗談交じりでぶっこむ一樹に“そうなんですか!?すごい!”と食い気味で聞いてくる香織ちゃん。


そうこうしてる間に龍弥が戻ってきて、さっきまでの話題から違う話題にそらした。


そして、様子を伺って…


『香織ちゃん、ちょっと女子会しない?龍弥、借りても良い?』

「可愛いからっていじめるなよ~!」

そんな冗談を笑いながら言う龍弥は、何も知らない健気な男の子で少しだけ胸が苦しくなった。


『あぁ、バレた?可愛いからちょっとイジメようと思ってたんだけど』

なんて冗談を返すと、私と香織ちゃんは一緒に外へ出た。

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