面接



「初めまして。ここのお店のマネージャーの藤崎です」


今、目の前では株式会社カメラスタジオH 浜井店の女性マネージャーの方はニッコリ笑顔で対応してくれて好印象だ。


『初めまして。佐藤美咲です。本日は業務中に貴重なお時間を作って頂きありがとうございます』


“面接は第一印象が大事”

私は得意の愛嬌を振りまくが如く、口角を上げて微笑んだ。


「そんなに緊張されなくて大丈夫ですよ。どうぞこちらの椅子に腰掛けてください。今、書類をお持ちしますね!」


緊張感は表に出さないようにしていたつもりだったが、どうやら見破られていたようだ。

けどお店の雰囲気やスタッフさんの対応もとても良くて、安心。

何処かのハローワークのオバハンとは比べ物にならないくらいだ。


「こちらの書類にご記入お願いします」

『はい』


テーブルに置かれた書類に目を通すと氏名や住所、通勤方法や勤務可能日などを記入する欄があり…まだ履歴書も見てもらってもいないのに、このような書類を書くのは想定外だった。


「すいません。履歴書を頂いていませんでしたね」

『あっ。はい…』


私は履歴書を鞄から取り出し、マネージャーさんにお渡しすると履歴書に目を通した。

それを横目に書類を書くが…どんな質問をされるのかと、冷や冷やしてしまう。


「居酒屋のホールをされていたんですね…

ってことは接客は問題ないですかね?」

『はい。接客はとても好きです』


変にドモるのも相手に対して失礼だし、不信感を持たれると思い明るめに答えた。


「そうですか。ちなみになんですが、お客様は基本的にお子様が多いのですが子供は好きですか?」


こっ、子供…!?子供相手の仕事だったのか。


『子供は、はい。好きですよ』


実際は子供は苦手だが、この際嘘も方便だ。


「良かったです。では、就業開始時期なんですがいつ頃から来て頂けますか?」


これって…採用ってこと!?想定外だった為に、一瞬だけ目が泳いでしまいそうになった。


『出来れば早めにお仕事がしたいです』

「わかりました。では来週の月曜日からでいかがですか?

その時に書類の記入と今後のシフトの話と、研修をしましょう」


相変わらずマネージャーは愛想よく微笑んでくれている。

面接が開始し10分も経っていないだろう…まさかこんなに簡単に仕事が決まるとは…


『ありがとうございます!今後、よろしくお願いいたします』

「いえいえ、こちらこそよろしくお願いします」


マネージャーさんは、お話がとても上手い人のようでその後も少しだけお話をした。心の中でガッツポーズをしてしまう程、採用されたことに喜びを感じた。


面接が終わり車に戻るとスマホの画面を操作しLINEを開く。


《株式会社カメラスタジオHで採用になりました!

とりあえずパートだけど、少しずつ頑張っていこうと思う》


文章を作って、一樹に送信した。



【よし!!これでカメレオのライブに行くための資金源はどうにかなったぞ!

昼のお仕事でも頑張るんだから】

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