2ページ

「惚れた弱みですか。分かるような気がする。それで、マスターが惚れたポイントってどこだったんですか?」

「あー、そうだね」

 惚れたポイント。まぁそりゃぁこれしかないでしょ。

「格好いいから」

「あー分かるぅ! 俺もっ」

「だよねー!」

 テンション上がって斉藤君とハイタッチ。だってバーテンダーって格好いいんだもん。

「もちろんカクテルが好きってこともあるんだけどね」

 うちは代々酒飲みの家系だし。

「そうですよね~。恰好良くて、大好きなカクテルも作れるし飲めるし、素敵な仕事ですよね」

 俺もそう思う。これ以上に俺に会う仕事はないと思うもん。なんて、言い過ぎ?

「でもどうしてバーテンダーに? マスターは高校を卒業してから修行されたんですよね?」

「そうだよ」

「その歳でバーテンダーになるって決めるって凄いですよね。っていうかそもそもどうやってマスターと出会ったんですか?」

「あー」

 それな。めっちゃ単純だよ? 笑うなよ?

「好奇心」

「え」

「だから好奇心だよ、好奇心。夜の仕事ってなんか格好いいなって漠然と思ってて、休みの日に飲み屋街に行ってみたんだよ。そしたらマスターに偶然出会ったってわけ」

「高校生なのに夜遊びを? マスターやっぱりやんちゃだったんですね」

「やっぱりってどういうこと」

「いや、その、ワイルド、的な?」

 また斉藤君の瞳があっちへ行ったりこっちへ行ったり。全く自分の師匠をどんな奴だと思っているんだ。って、俺の師匠も破天荒だったから、これも仕方ないのかも?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る