ひと息ついて話をしよう
芹意堂 糸由
第1話 プロローグにアスファルト
雲は重なっていた。
手前にある雲と、後ろで流れている雲。
斜陽はそれらを照らして、雄大に空を暖めていた。
私はそれらを、ただひとりで眺め、そして独り占めしていた。
空が360°×180°見えるその場所は、すべての終焉の場、逆には始動の場にも思える。とにかく、地上に立っている気がしないのだ。手前にある雲は雨気を含んだように暗いが、奥に流れる雲は曲がった角度からの太陽光により、茜色に染まっている。その差がどうも、私の中の固定観念を崩れさせた。
こちらの空の方が、雲一つない空よりずっと美しい。ふと、そんな言葉が脳裏に浮かんだ。雲一つない空は、逆に私たちの不安を煽る。そんなことを呟いた。
おもむろにその地に寝そべってみる。アスファルトの大地は、私の体温をじわじわと奪っていったが、私はそれを気にとめずに頭もこてんと地につけた。
太陽はさらに沈んでいき、地上の光を奪っていく。
私は訪れる夜を恐れた。
目を閉じ、心をこめて希った。
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