第6話 リオンとの対話①

「レインさ~ん、勘弁してくださいよぉ。俺疲れてるんすよぉ。……も~寝たいっす。」


「疲れているのは俺も同じだ。朝までに帰ってくるだろうと思っていたが、またお前は……女か。」


  情報収集から帰ってきたリオンの部屋に、レインが入ってきた。リオンは、20代前半の、それはそれはお盛んな時期にいる若者であり、情報収集と言って出掛けてそのまま朝まで帰ってこなかったのは、仕事に飽きて女遊びに興じたのが真実である。誰でも、彼の火照った顔と、シワシワな服を見たら容易に分かることだった。

  リオンは、女を扱うのがとても上手かった。以前まで、ホステスのNo.1を務めていた。金髪で、キリッとした目の中にも、穏やかな面が感じ取られ、顎はシュッとしている、誰が見てもイケメンである。

 そんな彼が、何故今、レインの元で働いているのか……。

  ある日彼は、新聞、ニュースでレインの姿を見ただけで、「惚れました、弟子にしてください」と、なんとこの霧雨レインのアジトにまで乗り込んでお願いして来た。そもそも、警察や日本政府すらも見つけられていないこのアジトを、どうやって嗅ぎつけたのかがレインには不思議でならなかった。レインは少し唖然としながらも、彼から何かセンスを感じられる、と、この家に招き入れてしまった。

  リオンは非常にめでたい奴で、レインのスタイリッシュな数々の犯行に、素直に憧れを持ち、レインのような男になれるように頑張り始めた。こういう阿呆みたいなところはサニに似ているが、サニはとてもリオンを嫌悪している。駄目なタイプの男じゃん、が、リオンと会っての第一印象の感想だった。どっちもどっちである。一方リオンはそんなサニの視線は気にもせず、ただただレインの生活を観察しては、仕草を真似たり、口調を似せたりして、たまにレインの出掛け先にもついて行ったりしていた。彼がここに来てから、もうすぐ半年が経つ。



「情報は?」


「あー……、え、今聞くんですか。あとでで良くないですか?」


「ダメだ。今言え」


  リオンはベッドに腰をかけた。そこからちょっと離れたところで、レインが腕を組んで、リオンの返事を待ちながら仁王立ちしている。


「プロミス社本社の近くの繁華街に行ってきました。でもほとんどプロミス社に関係している人は居なくて…、やっと元社員だった人に会えたんですが」


「! ほう、それで?」


「例の計画については何も知らされていなかったそうでして……」


「他に何か情報は聞き出せてないのか。」


  レインは、思いのほかリオンがいい仕事をして来たと思って、近くのイスに座ると、食い気味にリオンに質問を始めた。


「社員構成を聞いてきました。プロミス社は、主に正社員と科学員に分かれていたそうです。正社員は、本社で商品の輸送手続きや接客対応、アイデアの創案などをしていたようなんですが、どうも科学員は何処で働いているのか分からなかったそうです」


「別に工場があるとかではないのか」


「そこまでは分からないですね……」


「……なるほど」


「も、もう、寝ていいですよね?」


  リオンが、レインの顔を伺う。レインは床をじっと凝視してから、パッと顔を上げてリオンの方を見た。


「いや、目を覚ませよう」


  レインは例の書類を、リオンに突き出した。

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