マンション comrade
わんこ
プロローグ ようこそcomradeへ
住宅見学中・・・
女「すごくきれいでいいお部屋ですね・・・あれ、ここは何に使われているのですか?」
不動産男「ああ、こちらは"吐き出し場"と呼ばれています。言葉で伝えるのは少々難しいというか・・・
いや、一度実際にご覧になられたほうがいいかもしれません。今夜こちらで泊まって見てはいかがでしょう?」
男「え、泊まれるんですか?まだ契約もしていないのに・・・」
不動産男「ええ、こちらの管理人さんは少し不思議なお方で。
ここを気になってくださる方がいらっしゃれば必ず一泊だけしてから契約するかを考えてほしい、とおっしゃっていまして。」
女「珍しいね・・あ、でも水道とかガスとか通ってませんよね?」
不動産男「1泊して、それからの契約が絶対となっております。
全て準備はできておりますのでご安心ください。
食事もこちらで用意させていただきます。
寝具も1度も使われていないものが保管されていますのでそちらをお使いください。
必要なのは明日のお着替えや化粧品等・・くらいです。」
男「どうしよう・・?せっかくだから泊まっちゃう??」
女「1回必要なもの取りに行けるなら・・・一度帰宅しても大丈夫ですか?」
不動産男「ええ、もちろんです。こちらのお部屋の前に19時頃にまたお越しくだされば、鍵を用意しておきますので。」
男「それならまだ時間もあるし大丈夫そうですね!是非お願いします!!」
不動産男「ありがとうございます。お待ちしております。」
19時 住宅前にて
女「ここまでよくしてくれて実はやくざとか!!」
男「かもしれないよ??普通はここまでしないよな・・・」
女「なんか怖いなあ・・幽霊が出るとかかもしれないし・・・」
不動産男「お待たせしました。やくざではございませんし、幽霊も出ませんのでご安心を・・ではこちらのカギをお使いください。
お食事はもうお部屋に用意致しました。明日の朝10時に迎えに参ります。
では、ごゆっくりお休みください。」
男女「ありがとうございます。」
22時 住宅にて
女「御飯もおいしかったしお風呂もきれいだったし広いしここいいなあ・・・」
男「住むならこんな部屋がいいよな・・とりあえずゆっくりするか・・・」
○○「なんで俺だけ彼女もいなくて一人なんだよ!!!やけ酒する日々ももうあきたよ!!!なんで俺ばっか・・・・こんなに寂しいんだよ・・・!!!」
女「えっ・・なに?どこから・・」
男「吐き出し場だっけ?そこからだな・・・ちょっと見てみるか・・」
確認するかためにカーテンを開ける。
男「!!!おい!来てみろよ!なんかすごいことになってるぞ!!」
窓の先の踊り場には住人がわらわらと集まっていた。
なぜか全員パジャマで布団と枕を抱えている。
女「あの泣いてる人・・・さっき叫んでた人かな・・」
叫んでいた男性は住人たちに慰められていた。
頭をわしゃわしゃされていたり、ティッシュをもらっていたり、
大勢で彼を囲んで・・
はたから見てもとてもあったかい空気が出来ていた。
男「・・もしかして吐き出し場ってそういうこと・・?」
女「だね・・明日不動産屋さんに聞いてみようか・・」
10時 住宅前にて
不動産男「おはようございます。昨夜はどうでしたか?」
男「とても満喫させていただきました。あの、昨夜10時ごろに吐き出し場で男性が・・」
不動産男「あ、ちょうどご覧になられてのですね、よかった。誰も吐き出す方がいないと2日連続の宿泊になってしまうので大変なんですよね~」
女「もしかして一泊するという決まりは・・・」
不動産男「はい、 あのあの光景をご覧いただいてご自分も混ざれるかを見ていただくために必ず宿泊していただくという決まりになっております。
あの吐き出し場は家族、友人にも言えない気持ちを吐き出す場所となっております。
皆の心のよりどころになれば、と管理人さんが考えたそうです。
誰かが吐き出した時、共感した方、昔自分も同じ思いをした方、慰めてあげたいと思った方々は踊り場に出て、
みんなで雑魚寝をするという決まりがございます。」
女「だからみんなで寝てたんだ・・・」
不動産男「こちらのマンションは相場の金額より安く良いお部屋、良い環境を提供する代わりに、先ほどお伝えした決まりを守っていただける方のみが借りることが出来ます。
どうでしょうか?もちろん昨夜の宿泊は無料のため、代金は一切かかりませんのでご安心ください。
結構この段階で借りない方も多いんです。」
男、女を見て頷く。
女「ぜひ契約したいです!!」
男「よろしくお願い致します。」
不動産男「ありがとうございます。では契約をいたしましょう。」
*
これは 不思議なマンション comrade のお話。
決まりごとは1つだけ
【吐き出し場からの声に共感した者は必ず一晩雑魚寝を行うこと】
*
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