第22話 ひとこま目に戻る
ジョーガバーズに戻った我々は、昨晩泊まった宿に戻って、一息ついた。
ベッドの上に荷物を放り投げると、途端に恐怖が身体を走り抜け、ぶるっと身震いせずにはいられなかった。恐怖というのは、危機に直面している瞬間よりも、危機が過ぎ去った時により強く襲ってくるものらしい。
勝道が、関係各所に連絡し、石田、真田の官僚コンビが押っ取り刀で飛んできた。
「よく、生きて帰って来られましたね」
「シャレになってないですよ、この大きさは……」
「ねえ」
わたしも、苦笑いである。
さらに、先日カブブン街で知り合った『異世界調査研究チーム』の、牧野に連絡を入れて、ドラゴンのDNAなど、様々なことを調べることができる人間を紹介してくれるか?と伝えると、牧野は、
「まずわたしが行く!」
と言い、すぐさま飛んでやって来た。
「あれ?柳さんも来たんだ。この間はどうも」
宿にやって来た牧野の隣に、人懐っこい笑顔の柳がいた。
「どうもどうもです」
「早速見せてよ、ドラゴンの映像!」
再生された映像を見た二人は、あんぐりと口を開けながら映像を見る。全ての映像と、写真を見終わった二人は、もう一度!と言い、今度は真剣な科学者の顔をして凝視した。
「わたし、山の中でツキノワグマに出会ったことがあるけど、比べもんにならないわ」
「よく、生きて帰って来ましたね。幸運なのですよ」
柳は、石田たちと同じ感想を述べた後に、
「しかし、全く、いやほんとに、すごいのです。確かに見た目はティラノサウルスと共通点が多いと思われますが、それ以上に驚かされたのは、足の速さと持久力、そして、口から吐いた光弾です。これは、びっくりです。本当に。生物が、武器として化学物質以外の物を口から吐くというのは、いや、この光弾の正体が知りたいのですよ」
と言った。
「しかも、地面を吹っ飛ばして穴をあけるほどの破壊力。まともに食らっていたら、車ごとバラバラでもおかしくはないです」
「この映像、コピーしてくれないかしら。もっと検証したいし、他の専門家にも意見を聞きたいから。あ、そうそう。ドラゴンの研究スタッフにも、声かけてきたから、もうすぐこっちに来るはずよ」
「そうなの?ああ、そろそろ時間ですから行きますか」
「時間?何の?」
牧野がわたしに言う。
「うん、ギルガル――、このドラゴンね。ギルガルを、魔法を使ってこっちに運んでこようって話になってて」
「マジですか!」
ギルガルの死体をどうするか。ジョーガバーズに戻った我々が相談したところ、ユウリが、
「ひとまず街の外れに運んじゃったらどうでしょう」
と言い出した。どうやって?皆が訊くと、
「街には、魔法使いが沢山いるので、みんなに声をかけて手伝ってもらえば、ここまで運べると思います」
と、あっさり言った。そして、ユウリは、冒険者専用の仕事斡旋所に出かけて行った。
宿から出ると、十人ほどの、性別も年齢もばらばらの集団を連れてユウリがこちらに向かって来るところだった。先頭を歩くユウリのすぐ脇をいかにも魔法使いと言った風貌の、長いあご髭をたたえたおじいさんが歩いている。その後ろを歩くのは巻き髪のギャル風の女の子もいれば、太ったおじさんもいる。イケメンのモデルみたいな男もいれば、ユウリより若い、小学生みたいな女の子もいる。
この人たち、みんな魔法使いなのだろうか。
「あ、霞ヶ城さん、この人たちが手伝って下さるそうです」
「そ、そりゃあどうも」
わたしは、集まってくれた魔法使いたちに頭を下げた。そして、魔法使いたちは自衛隊の車両に乗り込んで、ギルガルの元へ。わたしたちも、後ろから無事だった高機動車に乗って付いて行った。高機動車には柳と、牧野も乗り込んだ。
ユウリによると、ジョーガバーズは、冒険者たちが集う街であると同時に、土木関係の人材募集がよくある街なのだそうだ。湖や川がすぐ側にあるため、治水に関する工事が多いらしい。そこで、堤防や橋を作る際の資材となる木材や石を、今回のギルガルのように魔法で運ぶ作業が行われる。つまり、重量のある物を運搬する仕事にありつこうと、それらの作業を得意とする魔法使いたちが自然と集まってくる。ユウリはそこに目を付けて、ギルガルを運搬できるはずだと言ったのだ。
リリミアとヴァンドルフは、肉屋に行って、ドラゴンの解体ができる者を探してくれることになっている。とはいえ、あれだけの巨体。一人二人では無理なのではないだろうか。
そんなことを考えているうちに、再びギルガルを倒した場所へ。
先ほどは気付かなかったが、ギルガルから逃げ回るうちに、近隣に住む人たちの大事な畑を突っ切ってしまい、めちゃくちゃにしてしまっていたようで、畑の持ち主たちが集まっていた。
不可抗力であるとはいえ、悪いことをしてしまった。
畑の持ち主たちも、ギルガルの巨体を見て、呆然としており、畑をめちゃくちゃにされた怒りや悲しみをどこにぶつけてよいのやら、という様子だった。
「うおおおおおっ!でかいのです!でかいのですううううううううう!」
高機動車から降りた柳は驚嘆の声を上げ、スマホなどで写真や動画を取り始めた。
「柳さん!これ持って!」
牧野は自分の鞄の中からメジャーを出してその先を柳に渡した。ギルガルの口先に柳を立たせて、メジャーを手にした牧野は尻尾の先まで走っていく。
「22m!!でか!」
牧野はギルガルの、体長や足、口や歯など様々な部位のサイズを計り、その度にでか!とか、すげー!とか声を上げていた。
そんな牧野をよそに、ユウリたちは魔法使いたちと輪になって何やら相談をしている。何を話し合っているのか、耳を傾けてみたが、魔法に関する専門用語と思われる言葉が飛び交い、何を話しているのかちんぷんかんぷんだった。
「じゃあそれで行きましょう」
相談が終わると魔法使いたちは、ギルガルの周りに立った。
「じゃ、作業に入ってもよろしいですか?」
「牧野さーん。運ぶってー!」
「あ、はいはい」
牧野がわたしたちの側に戻る。ちまりと春風がビデオカメラを構えている。わたしもデジカメを用意した。
「では、皆さんお願いします」
ユウリは、ギルガルの頭の先に立って、そう言うと、さっと杖を持つ手を挙げた。すると、他の魔法使いたちも、合図に合わせてギルガルに向けて杖や広げた掌を向ける。
そして、魔法使いたちは集中しながら何やら呪文をぶつぶつと唱え始めた。
「ほんとに持ち上がんのかねえ?」
未だ半信半疑の勝道が腕組みしながら言う。
「ええっと、ティラノサウルスが体長10m、体重5tとして、ギルガルの体長が22m?同じような体の作りだと仮定して、で、大雑把に計算すると、んー、およそ53tくらい?」
わたしは、スマホの計算機アプリを使い計算をしながら、柳に言った。
「まあ、それくらいですかねえ。とはいえ、あの足の速さとか俊敏性を考えると、身体全体に軽量化を助ける仕組みがなされているかも知れません。でも、どちらにせよ簡単に持ち上がる重量ではないのです。本当に魔法であの大きな物体が持ち上がるのか……」
柳は、魔法使いたちの様子を見守りながらそう言った。
すると、ギルガルの上に、水平に大きな円形の赤く光るものが現れた。
「なになに?あれ?魔法陣ってやつ?」
スマホで様子を撮影しながら牧野が声を上げる。魔法陣は直径が、ギルガルの体長とほぼ同じで、何か図形や文字のようなものが円形の中に配列されているが、それが何なのか、どう読み解けばいいのか全く分からなかった。柳が、しゃがんでギルガルを指差した。
「見てください。ほらほら、動いていますよ?」
見れば、ギルガルの身体が、ぐぐっと動き、そして、ほんの少し持ち上がっているではないか。
「おいおい、マジかよ」
魔法陣に吸い寄せられるように、ぐぐぐっと時間をかけてギルガルの身体が完全に浮くと、地面にも同じく赤い魔法陣が姿を現す。
二つの魔法陣に挟まれて、ギルガルの身体が、5mほど浮いた。
「おおおお―――――っ!!」
「では、お願いしまーす!」
ユウリが杖を持つ手を上げて声をかける。その後、ユウリはふわりと体を宙に浮かせた。
すると、何人かの魔法使いが、続いてギルガルに寄り添うように体を宙に浮かせる。見たところ、彼らが魔法を調整しているようだ。そして、ユウリが先導する形で、ギルガルの身体は宙に浮いたまま、街道がある方へと進みだした。
我々も、車両に乗って追いかける。
ギルガルの体は、自転車ほどの速度で進み、街道に出ると、そのまま南に進路を取り、ジョーガバーズへと向かってさらに進む。飛ぶのがあまり得意でないと言っていた割には、ユウリはギルガルの前を、すうっと進んでいく。確かに、速度の面では、ギルガルの走る速度に及ばないが、それでも宙を舞って進んでいるのだ。大したものだと思った。
「お兄ちゃん……。本物の魔法使いって、杖とかほうきにまたがって飛んだりしないんだね」
春風が空飛ぶ魔法使いたちを見て、ちょっと不満そうに言った。
ギルガルは、魔法使いたちの力で二時間かからずにジョーガバーズの街の外れの空地へと運ばれた。
そこではリリミアとヴァンドルフが待っていて、わたしたちに向かって手を振っていた。
そして、リリミアの脇には十人ほどのエプロン姿の男たちが待っていた。彼らが、ギルガル解体のために集められた者たちだ。肉屋や、食堂の料理人、魚屋までいた。そして、肉などを買い取るためにやって来た商人たち。
さらに、異世界調査研究チームのドラゴン部門のスタッフが二人来ていた。
「うおおおおおおお―――――っ!!すっげーええええええ!!」
「な、何じゃこりゃ……」
ギルガルを見て、近野は絶叫し、五十嵐は呆然とした。そして二人はわたしたちに簡単な挨拶を済ませると、牧野がそうしたように、ギルガルのあちこちを調べ、サイズを計り、そのつど大きな声を上げていた。
「こっちに来てる研究者って、みんなあんな感じなんすかね?」
二人の様子を見てちまりが言った。
我々の世界しか知らなかった研究者や学者といった者たちにとって、突然開かれた異世界へと続く扉。その向こうには、今まで学んできたことを根底から覆すようなもので溢れていた。
彼らにとって、どんな場所よりも心を躍らせる場所なのかも知れない。で、あるならば、はしゃぐなと言っても、無理な話なのだろう。
「旦那あ。作業に入りたいんですが」
肉屋の親父が、ヴァンドルフに言いヴァンドルフがわたしに言う。
「と、言っておりますが、どうします?」
さて、これからが面倒だった。
さっさと、ギルガルの肉や皮、骨を部位ごとに分けてしまいたい肉屋の親父たち。それを買い取ろうと集まって来た者たち。
そして、研究対象としてギルガルを調べつくしたい研究者たち。
どこを研究サンプルとして、持って帰るか、どこを食肉や加工用の材料として取り分けるか。
「いや、心臓は研究したいから、食べちゃダメだ!」
「はあー!?そこがうめえんじゃねえか!」
「骨も研究するからできるだけ傷付けずに!」
「いやいや!これだけ立派なドラゴンの骨は色々使えるんだぞ!」
目的が全く違う者たちが、そこは欲しい、そこは旨いところだから駄目だ、と、大揉めになってしまった。
そして、互いに一通り言い分を言った後、揉める一同が一斉にわたしを見た。
わたしがきょとんとしていると、ちまりがそんなわたしに言う。
「先輩の『物』なんだから、先輩が判断を下せ、ということでは?」
「は?」
「だって、ギルガルが自分を倒したのは先輩だって認めたから、鍵をもらったわけでしょう?だったら、あのギルガルは、倒したとされる先輩の『物』でしょ?」
「まあ、そうなるわなあ」
と、腕組みしながら様子を見ていた勝道も同意し、その隣の
そして、一同、「さっさと決めてくれ」と言わんばかりの熱い視線。
これは困った、さてどうしよう。ドラゴンのどこが旨いかなど知らん。どこが研究対象になるか。それは全てであろう。じゃ、全部研究に回すか?いや、それでは肉屋の親父たちがふてくされて帰ってしまうかも知れない。
すると、商人たちがすすっと近寄って来て、「高く買い取りますよ」とわたしに耳打ち。
マジ?んー。
しばらく考えた後、わたしは決めた。
「よし、こうしよう。まず、骨格は恐竜みたいに標本にしたいから角や骨、歯は全部研究に回す。内臓も、色々調べたいから、研究に。肉、皮は、右半身は売りさばいて、左半身は必要な分だけ研究に回すことを前提に――、でどう?」
「旦那あ、心臓は旨いんですぜ?焼いて塩振って、最高なのに」
心臓。つまりは焼肉や焼き鳥で言えばハツである。うん。旨いよねー。分かる。すごくよく分かる。分かるのだが、
「ドラゴンについて調べたいことが沢山あるんす。ここは我慢してくれないですか?」
と、わたしが言うと、
「討ち取った旦那が言うんじゃ仕方ねえ」
と、しぶしぶ了解してくれた。
そこから、職人たちの動きは速かった。でかい包丁やノコギリで、てきぱきとギルガルの身体を捌いていく。皮を剥ぎ、腹を裂き、内臓を部分部分を綺麗に分けていく。
大分グロテスクな光景のため、ちまりが「げ」とヒキガエルのように短く言った後、どこかへ逃げて行った。わたしも、こういうのは苦手な方であるため、近くのカフェに逃げ込んだ。
数時間かけて、ギルガルは綺麗に解体された。
研究に回す分の肉なども、このままでは腐らせてしまうため、倉庫で魔法を使った冷蔵保存されることになり、運ばれて行った。数日中に、日本からも、応援の人員がやって来て日本へと運ばれて、ドラゴンについて深く調べられることになる。
最後に、肉屋たちがわたしたちの元にやって来て、ギルガルの代金を置いて行った。
お茶を飲んでいたわたしの座る席に、どんと置かれた代金が入った袋。これが予想以上の大金で、わたしは面食らった。
「はい!?」
「残りの代金は、後ほど支払いますんで、今後も、まあ、これだけのドラゴンを仕留めることなど、そうそうあるわけじゃないでしょうが、よろしくお願いしますね」
「残り!?まだあるの?」
「ええ。何せ、こんな大物ですんで。これだけ立派なドラゴンは、普通のドラゴンよりも高値で売れますんで。何せ食べれば、ドラゴンのマナがいただける、滋養強壮、性力増強、健康第一、年寄りが食べれば寿命も延びる、妊婦が食べれば元気な赤ん坊が生まれる、縁起も良いってんで。そんなわけでして、今日用意した金じゃあ全額を支払えないんですよ。すいませんねえ」
『マナ』というのは、生命力とか、力とか、そんな意味合いの言葉である。
「本当は、骨なんかもそりゃあ高値で売れるんですけどねえ……。まあ、今回は仕方がないです、じゃ、旦那、また」
どんと置かれた大金に戸惑って、口をぱくぱくしているわたしに、商人たちは挨拶をして、帰って行った。
口をぱくぱくさせながら、わたしはユウリに向かって、言った。
「こここ、こここ、これは、マジでもらっちゃっていいの?」
「ええ。でも、こんなにあると、色々大変ですねえ。この際、銀行か郵便局に口座を作ったらどうでしょう?」
こうして、わたしは、ギルガルの肉を売って、こちらで何年も遊んで暮らせるほどの大金を手にし、口をぱくぱくさせながら異世界デューワに銀行口座を作ったのだった。
ぱくぱくぱく……。
その後しばらく、わたしは間抜けな鯉のように口をぱくぱくさせたままだった。
春風がそんなわたしを見かねて、ばちこーんと鋭い突っ込みを入れた。見事な張り手であった。
「は!!」
ぶっ倒れたわたしは我に返り、
「ヴァンさん!」
と、屈強な剣士の名を呼んだ。
「何でしょうか」
「墓!」
「は?」
わたしは、ギルガルに挑んで死んでいった彼の友人をはじめ多くの冒険者のことを思い出したのだった。さらに、ギルガル自身のことも。
これは、皆の死を悼み、忘れないように供養塔の一つでもおっ建てるべきであろう。そう思った。幸いなことに、金はある。それを話すと、ヴァンドルフは、感激してどばどば涙を流して、わたしに抱き付いてきて実に鬱陶しかった。
さて、夜。宿泊する宿屋の近所にある食堂。ギルガルの肉を買い取った肉問屋の直営店である。
そこで、わたしたちは夕食に、ギルガルの肉をいただいた。
わたしを追いかけまわしていた巨大ドラゴンが、美味しそうな料理になって我々の前に並んでいる。
ドラゴンという、馴染みなど全く無い肉であることに加え、ついさっきまで喋っていたやつが、皿の上で温かい湯気と、鼻をくすぐる美味しいそうな香りを立てている。ちょっと複雑な光景である。だが、このよう料理人に腕によりをかけて調理されてしまっては、美味しくいただくことが、供養である。そう。人は他の命をいただくことで生きているのだ。そして、調理されたものは、食う!それが、命に対しての礼儀だ!ギルガル、ぼくは食べるぞ!!
「はぐ!!」
わたしは、躊躇する皆をよそに、一番にギルガルの肉を焼いてスパイスをまぶしたステーキにかぶりついた。
「ふぉ!おおお!?う、うめえ!!」
巨大な生き物の肉だから、固くて大味かというと、そんなことはなく、肉はほどよい弾力と柔らかさを兼ね備え、さして力も入れずに噛み切れる。そして口の中に広がる上品かつ深みのある脂と肉汁の旨みは、先日、東京に出た時ちょっと贅沢して食べたチェーン店のビーフステーキなど、比べ物にならない程の、極上の満足感を与えてくれる。味は、強いて言えば鶏肉に近いような気はするが、食感は牛肉に近い。しかし、断言できるのは、今までわたしが食べたどの肉よりも美味であるということだ。
「ま、マジすか!?」
ちまりも、ギルガルの尻尾の肉を使った煮込み料理をおそるおそる口にする。が、一口食べると、かっと目を見開き、声を上げる。
「う、ううううう、うまいっす!こんな美味しい煮込み料理食べたことないです!!」
「こっちの唐揚げもうまいよ兄ちゃん!」
春風も、がつがつ食べ始める。もっとも、こいつは何でもよく食べるので、いつも通りである。
「やっぱ、人間食べちゃってるから、こんなにいい味出るのかなあ!」
ぶ―――――っ!!
皆が春風の言葉に一斉に吹いた。
「せっかく忘れてたのに!」
「根性なしめ!食え!!」
自衛隊員たちは、流石に精神が鍛えられているからなのか、すぐに気を取り直してがつがつ食い始めた。左沢陸曹も、男たちに交じってがつがつ食べている。可愛らしい見た目に騙されてはいけない。彼女もまた心身を鍛えまくった屈強な自衛隊員なのだ。
ふと見れば官僚コンビの箸が完全に止まっている。
「そこ!酒で流し込んででも食え!」
「そうですよ!一生に一度の御馳走です!」
と、言って官僚コンビにから揚げを進めているのは、柳たち、研究チームの面々。研究チームというと、勉強ばかりしてきたガリ勉タイプで貧弱な人間たちの集まりかと思ったが、どうやら、異世界に来てまで研究に明け暮れるような者たちだけに、肝が据わっている。
春風の言葉に一瞬ストップしたが、すぐにばくばく食べ始めた。
「それにしても、霞ヶ城さん、今日一日で大金持ちですな」
「ねえ」
そうなのだ。わたしの懐には、突然、高級和牛を何頭も丸ごと買えるほどの金が転がり込んだ。これはびっくり。宝くじや超万馬券を当てたくらいの衝撃。
「これで、旅の資金は大丈夫ですねえ」
「何を言う。そこは出版社が出せ。それよりも、良い感じの土地を買って、さらにひと山儲けるというのはどうだ?」
「おほほ!いいっすねえ!」
「普通、駅を建設する計画があがったところの土地は、価値が上がるとかいうだろう?だから、交通の便がいいところに土地を買って、価格が上がったら、売る!もしくはマンションでも立てるか!」
「おー!!」
「流石兄ちゃん、ファンタジーの世界に来てるのに、現実的!」
庶民が大金を手に入れると、やはり考えがおかしくなって、いやらしいことばかり考える。
「石田さん、どっかに鉄道を通す計画とか、無いの!?」
と、わたしが酒を片手に訊いたところ、石田がさっと目を逸らした。
ははあん。これは、あるな。
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