skill is nothing

そへ

第1話


器用貧乏きようびんぼう


自分のことを、そう思う。

特に何が得意というのは無いが、同時に苦手なことも無い。


それを良しと見るか、悪と見るか、それは人それぞれ。でも自分は、どちらかというとあまり良く思ってはいなかったかもしれない。

――――――――――――――――――――


1. 新:高校生活


「新入生の皆さん。ようこそ。我らが最特さいとく学園へ」


ここは私立最特学園。

何の変哲もない高校―――ではなく、少し、いやかなり変わった学校だ。


まずここでは、文武、つまり、知力、体力がものを言う。

文武、その2つは入試で検査される。

その入試結果と、生活態度、カリスマ性、etc…などを教員たちが総合的に分析、吟味した上、生徒たちは『階級クラス』が定められる。


そして階級ごとに教室が分けられ、まるで選り好みをされた牛肉かのようなその生徒たちは、3年間を過ごして行くのだ。


「―――ここが、俺の高校生活の場か…」


そして、この厳しい競争社会に身を投じる少年が1人。


名は、


「『八重荘氏やえそうし』です。えーと、どうぞ宜しく」


1-S、29番。彼は『器用貧乏』というコンプレックスを抱えていた。そしてそれ故に、彼は『Sクラス』だった。


説明しよう。Sクラスとは、『special』のSで、他のクラスと違い、他の追随を許さないスキルを持つ、そんな生徒たちが集まるクラスである。


そんなクラスに何故荘氏が入れたのか。それは知力がずば抜けてるわけでもない彼には到底わかるはずもなかった。


「―――」


次々と自己紹介が成されて行く。


さすがはSクラス。殆どがぶっ飛んだ人間。

宇宙から来ましたーだとか、ノーベル賞を両手で数え切れない程取ってきた、とか。


(って、何でこんなクラスに俺みたいな平凡なやつが…?)


まあ、百歩譲ってそれはいい。問題は最後。


その人物は、歴然と、悠然と、更には超然として、当たり前のことを当たり前にできる人間の顔をして、言った。


「我の名はスベルド・フォン・シュロウフェン!このSクラスを統括し、最強へ導くため、京の時より参上つかまつった!」


「「「「………」」」」


クラス全員、凍りついた。誰だ。この金髪乙女は。ってか、京都から来てるのになんで名前は洋風なんだよ。そこは貫徹しろよ。


「……………」


「えっと…月ヶ谷わちがやさん?ちゃんと自己紹介してくれないかしら…?」


少し長めの沈黙の末、担任の先生が声を発した。

というか、月ヶ谷?シュロウフェンは何処いずこ


「む、なんじゃ、先生。今いいとこなのにのう…皆、すまんのう。今のは嘘じゃ。私の名は月ヶ谷朝霞わちがやあさか。ふーむ。ウケると思ったけど…意外と皆笑いには厳しいのか?」


「こ、これはまた、キャラの濃い…はは…」


しかも。謎のおじいちゃん口調の女子、月ヶ谷朝霞の席は、荘氏の隣だった。


「ん、荘氏くんだったか。宜しく。私のことはファーストネーム、朝霞ちゃんと呼ぶがよい」


ひいいい!なんか普通に話しかけてきた!

……って、そのくらいは普通か。

何とか冷静を保つ。本当に、崖っぷちの所で。


「あ、えっと………あ、朝霞ちゃん。宜しく。俺のことは呼び捨てでいいよ」


「ふむ。お主、私のことを変だと思わぬのか?」


これまた不思議なことを聞いてきた。


「え。変だと思うよ。そりゃあ。でもさ、さっきからこのクラス、ぶっ飛んでるから…驚きは思ったよりかは少ない…かな?はは…」


「!!……お主なら………」


小さい声で、何かブツブツ言っている。先程の自己紹介とは打って変わって。


「…なんか言った?」


「ん、いいや何も」


「そうか。じゃあ、これから一緒に頑張ろう」


「うむ。こちらこそじゃ!」


彼女は、話してみると意外と気さくで、成程健常者に近いのかな、そう思っていた。

これから起こることも知らずに―――

――――――――――――――――――――


「……始まったか」


「はい。『スキル』は着々と集まっております。そろそろ彼女らも、動き出すでしょう…」

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