Girl mam body

ミルキークマさん

第1話 生まれ変わるために

のんびりしすぎた。

死んだ後、ここに来たばかりの時は、

気持ちはあんなに急いで生まれ変らなきゃ、と思っていたのに。

生れ変われる列に並んでいる。

ずっと長い列だ。

不思議なことにお腹もすかない。


たまにお団子やお菓子を持った

綺麗な顔立ちの女性が

ふわり、ふわりと数人、気紛れのように現れて「食べへん?」「食べねーか?」などと声をかけてくる。

いらない、と断ると

「先はまだ長いんだから、ゆっくり休んでって」と言い、差し出したお饅頭を自分の口に頬ばりながらまたふわり、ふわりと去ってゆく。


列には心地好い音楽鳴り響いている。

列は少しずつ進んで行く。

集中力もだんだんと途切れ、何の感情もなくなってきて気持ちは空っぽになっていった。


「お待たせしました。」

営業成績No.1のような全身黒のスーツで

爽やかな笑顔の男性が声をかけてきた。


「あなたの生まれ変わる国はまた日本にしますか?決められますよ。」


私はハッとして旦那の顔を思い出した。

「旦那も日本に生まれているなら日本がいいです。そして旦那がいる町にわたしも生まれたい。」


爽やかな笑顔の男性は、持っていたペンを鼻の下に挟んでタコの口になった。


「気持ちはわかりますがね、近くに生れたからと言ってもまた会うとは限らないし、記憶もないんですよ。国が違っても生れた町が違っても縁があればまた出逢っているんだから。なるがままに任せませんか?」


そう言ってまた崩れた顔を爽やかな笑顔に戻した。


「嫌です。わたしは旦那と約束したんです。それを果たさなくてはいけません。」


一度決めたら曲げない。頑固な性格も死んでも私は変わっていなかった。


男はわたしの顔を覗き混んで、ぶつかりそうな距離でまっすぐわたしの目玉を覗きこんで言った。


「神様に相談してみましょう。」


そう言って男はピカピカの尖った革靴で

病院の廊下のように鳴り響く暗闇のほうへ消えていった。

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