天罰 5

ある朝 父が刑事と共に家にやって来ました




━━ 奴が死んだ ━━





家に入って来た父の最初の言葉でした


私は一体誰が死んだのかわかりませんでした

が……話を聞くと

早朝に 愛人 が布団の中で死んでいた

との事でした



えっ!マジで……?


父の話によると

「前の晩まで元気でテレビを見たりして居たのだが……朝目を覚ますと隣で冷たくなっていた……救急車を呼んだが既に死んでいたので警察が来た……脳梗塞らしい……」


でも?……何故?刑事と一緒に家に来たのか?

私達家族のアリバイを調べに来たのです


夕べ何処にいたか?

もちろん母と私は家

姉夫婦も自宅

次男は舎弟と一緒

それぞれアリバイはありましたが どれも身内同士の証明なので


「他に接触した者はいないか」


「テレビは何をやっていたか」


「夕飯は何を食べたのか」


など こまごま聞かれました

何故?突然死ってみんなそんな事聞かれるの?

と……思っていると刑事が


「害者の頭に小さなコブがあったので一応調べさせてもらいました」


との事……


家の中の道具も調べられました


秘密の部屋に置いてある贋物の日本刀・木刀など 傷・凹みがないか?念入りに調べていました


一通り終わると帰って行きましたが

父はかなり念入りに調べられてました


ただ……何にも証拠となる物は出て来ません

ってか 殺ってないのだから当たり前ですけど……


結局 脳梗塞と診断され

愛人 は荼毘に伏されました


これは……





━━ 天罰 ━━



人を苦しめ続けたから罰が下ったのです



でも…死んでしまった今…


私の心の奥の何処かに 愛人 に感謝している気持ちもありました


私から父を遠ざけてくれた人


愛人 が出来てから余り家で暴力を奮わなくなった父

愛人 を囲った後ろめたさもあったのか……


その為 私は殺したい程嫌であった父の姿を家で見る事も少なくなり 幸せな日々を過ごせたのですから……


ある意味



「感謝」




しています



彼女も哀れで可哀相な

女性……

そして父の被害者

だったのかもしれません



愛人が亡くなって一ヶ月位は ちょくちょく刑事が家に来ていましたが

別に何をするのでもなく お茶を飲んで帰って行く程度でしたが

何かを探っていたのでしょう


愛人 は覚醒剤をやっていたと言う噂も耳に入りました


そして もっと凄い 噂


愛人 が亡くなる2~3日前に事務所で父と喧嘩になって

父が木刀で 愛人 を


殴った……


らしい……


父はやっていない!と一点張りでしたが

あの泳いでる目は……



やったな……


親父……。



警察にも その噂が耳に入っていたらしいのですが

医師から頭のコブは直接的死因ではないとの診断が出ていたし

証拠もないので うやむやになってしまいました


この後 父は暫くの間 愛人 の家に住み続けて居ました

しかし

悪運の強い父……

何故かいつもパクられない




またまた余談ですが


この話が刑務所に服役してる長男の耳にも入り

(誰かが手紙で父の姐さんが亡くなったと報せたらしい……)


母が亡くなったと勘違いをし

大泣きしたらしく

家に手紙が届き

今までの反省や親の死目に会えなかった親不孝を

つらつらと並べ立てていて……思わず大爆笑してしまいました


相変わらずお馬鹿な長男でした


あっ!でも可哀相だから少し日にちを置いた後ちゃんと知らせてあげました


てか


一生泣いてろ



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