兄貴 4

警察から

長男を逮捕したとの連絡が入り

母と私は下着などの差し入れを持ち警察署に出向きました


私達は刑事課に案内され入って行くと

イカツイ顔した割には優しい口調の刑事さんが出て来て対応してくれました

刑事さんの説明によると長男は


道交法違反。

執行妨害。

殺人未遂。

薬物所持。

………


(まだ難しい罪名を言ってましたが覚えきれず忘れてしまいました)


なので……かなり長い刑期になるとの事でした


(キャー!ヤッター)



泣きながら頭を何度も何度も下げ

少しでも刑が軽くなる様に懇願する母


「無理なので頭を上げて下さい……」

と 困った様に母をなだめる刑事


(絶対罪を軽くしたりしないで)


と……私は心の中で願ってました


しかし……その願いも届かず

振り落とされた警察官が怪我もなく無事にすんだとのことで

後日……殺人未遂は

取り消されてしまいました


……がっかり……



暫くすると長男は留置所から拘置所に移され私は2回程面会に行きました


テレビで見た事のある

高い塀伝いに歩いて行くと小さな門があり

奥に面会の受付け所があります

そこでノートに名前を書き身分を証明する物を見せて面会の許可を貰います


呼ばれるまでの間

門のすぐ右側にある売店で差し入れの品を買う事が出来ます

結構いろんな物があり

下着・洗面用具・筆記類・果物・お菓子

など ありました


適当な物を選び

受刑者の名前を書いた用紙と一緒にカウンターに持って行き預けると後で受刑者に届けてくれるという仕組みです


買い物も終り待合室で待っていると

名前が呼ばれ面会室に行く母と私


中に入ると椅子が一つ

そして やはりテレビで見た事のある

ガラスの様な仕切りがあり


ガラスの真ん中に丸く小さな穴がポツポツ開いていてその穴から話をするのです


長男が入って来ると会話の内容を筆記をする人が 一緒に入り扉を閉めました


長男は明るく

「おう!悪いな」

と言った後続け様に


「差し入れしてくれた?筆記用具とミカンが食いたいんだけど」

と 悪びれる事もなくほざいたのです


まぁ……牢屋はこの中で唯一の楽しみと言ったら差し入れの物を食べる位だとは思いますので仕方ないとは思いますが……


「今、言うか!!」


って 感じです


時間は5分位だったでしょうか?

何話したかは覚えていません

どうせ上辺だけの詫びの会話だと思います


そして私にとってこの日は高校生で

拘置所面会デビューした記念の日となりました




結局長男は

3年半の実刑判決が下り

栃木県の黒羽刑務所に入りました


(3年半じゃ短かすぎるよぉ)



でもこれで我が家には暫く平和な日々が訪れる……

後は父さえ居なくなれば……

と 密かに願う私でした


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