蹴って蹴られて蹴り飛ばせ

イデア

第1話出会いは低脂肪牛乳でした。

「…ったく、あの愚弟め‥」


四月。

私は、哀川風香。


明日から彩爽学園の高校一年生。


そう!


なので明日が待ちきれずに部屋でおニューな制服を眺めていたら、


『掃除の邪魔だ愚姉。


暇ならコンビニ行って低脂肪牛乳買ってこい。』


と,おかんな愚弟によって深夜に外に駆り出された。


何せ、おかんの時の愚弟は怖い。つまり逆らえない。


しかし、なぜに低脂肪なのだろうか。


そんな疑問を抱えながら、スニーカーを履き、


マンションから出て徒歩三十分のところにあるパニリーマートへ


足を進めた____________________________________
































「_____________________のは別にいいんですけれども、」


唯一パニリーマートへと行ける一本道。


私は物陰に隠れていた。


なぜなら、


「おい、てめえ金出しやがれ。」


「君さっきオトモダチにおごってやってたもんな~」


「、、、、、、、、いやだ。」


「あ~?いま、なんっつったてめえ。」


いかにもガラの悪そうな男子高校生ふたりが男子生徒にお金をたかっている。


、、、、、、いや、どうすればいいのさ。これ。



助けろと? 私に?


「、、、、、、、、、、いやいやいやいや」


むりにきまってるだろ!


だって私は、


愚弟のように家事洗濯はうまくないし、運動神経もよくない。


だからといって頭がいいわけでもない。






それなのに、



「、、、ッチ、こいつ何もしゃべんねーわ。」


「きみさ~もうどうなっても知らないよ?」



痺れを切らしたのか、ポケットに乱暴に手を突っ込み、


チチチ、と音が出されたそれ_____カッターナイフを一人の男子高校生が振り上げ、


勢いよく男子生徒の腕へと降り下ろす。




____さっきも言ったが、私はほかの人よりできるコトなど、微塵も持っちゃいない。


それなのに、


ザクッ__________


「______________!」


どうして、助けたのだろう。










ツーーーー、と切られたところから、ゆっくりと液体が落ちていく。


えぐられたところからそんな線がいくつもできあがって右手は真っ赤に染まっていった。


右腕に血が集まって、熱さと痛さのオンパレード。


いつものちっこい切り傷より比にならない。


反射的になみだがでそうになったが、ぐっとこらえた。


今すぐにでもうずくまりたいが、まだすることがある。


それに私が泣いたら後ろの子がかわいそうじゃないか。


「なんだこいつ_____!」


「正気じゃねえだろ絶た「ねえ。」ひっ!」


私は言った。


一生分の勇気をもって、


とびきりの笑顔で。


「_______どっかいけ?」









「っ、すみませええええええんん!!!!」


「ごめんなさああああああああいいいいいいいい!!!!」



血に濡れたカッターナイフは軽い音を立ててじめんに落ちた。


そのカッターナイフを見つめながらゆっくり息を吐く。


本当によくやったよ私、、、、。


「____どうして、」


「え?」


声がした方向へ体を向けるとしりもちをついた男子生徒がゆっくりと聞いてきた。


「どうしてたすけたんですか。」


「どうしてって______」




ねえ神様。


今日は、かっこつけちゃっていいですよね?






「_____たすけたかった、からかな?」


「________!」


ゴクリ、と息を飲む音が聞こえた。


そんなにこの子はいじめられてるのだろか。


だとしたらがんばってるんだなあ。


、、、、、うん。


私はきれいな方の左手で男子生徒の頭を撫でた。


暗がりでよく見えないが、


驚いているのはわかった。


「君は、ちゃんといやだって言えてる。


それは何より大事なことだと思うよ。


だから明日からも胸を張って生きてほしいな!


私今から低脂肪牛乳かいにいかなくちゃいけないから、ばいばいっ!」


「えっあの「ごめんね!」っ_______」


男子生徒の言葉は聞かずに、ダッシュでパニリーマートへ行った。






「_______名前、聞きたかったんだけどな。


まあ、血液検査すれば、わかるかな?」


ゆっくりと男子生徒は起き上がり、まだ歯がだしっぱなしのカッターナイフを


しまいながらうっとりとつぶやいた。


さっきの暗いオーラはどこへ行ったのか。


立ち上がった彼の顔に月の光が指した。


月明かりに照らされて見える彼の顔は、少し幼さを残しているがあまりにも整っていて、右目の下には、なきぼくろがついている。


金色の双眸は野獣のような荒々しさと、海のような壮大さを醸し出していた。


「俺の__________________恋人。」

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