第五話「祈りは現実の否定なのか?」 2

 かなたが連れ去られた翌日、一日中彩花はベッドの上に横たわっていた。

 まだ昨日のアラームが頭の中で鳴っているようで、身体を起こす気分になれなかった。身体を捻りながら、ベッドの上を左右に行ったり来たりしている。

 手元にあった頭痛薬を一錠飲んで、彩花はベッドに転がる。

 彩花はベッド脇に置かれている置き時計に目をやる。

 もう夜なのか。

 時刻は20時を回っていた。

 いい加減空腹になってきたので、彩花はレンズを嵌めて遅めの一日を始めようとしていた。カリキュラムは今日は進めなくてもいいだろう、というか頭痛も酷くて進められそうもない。

 レンズを装着して起動するやいなや、接続を求める表示が広がった。

『コネクトOK? 相手は紗希です』

「OK」

『おい、どうした。大丈夫か? ずっと連絡取っていたんだぞ』

 熊がぶんぶん両手を振っている。怒っている、という仕草だろう。

 コネクト履歴が夕方からずっと溜まりっぱなしになっていた。

「あ、うん、寝てた」

 素直に彩花は言った。

『どんだけ寝ているんだよ。彩花までいなくなったかと思ったよ』

「ごめん」

『うん、ああ、まあいいけど』

「どうしたの?」

『こなたからコンタクトがあった』

「え?」

『病院に行ってくる、と』

「病院ってあの病院?」

 この辺りにある病院といえば、彩花の近所にある総合病院を指す。実質的にKLSが運営していると言っていい。

『うん』

「かなたさんがいるの?」

『そうだと思う』

 こなたの用件はそれしかないはず。KLSが連れていったのならなおさらだ。

「行ってくる」

『今からか?』

「そう」

『こんな時間だよ』

「そう」

『僕も行く、二人で行こう』

「だったら先に行く」

『おい、彩花』

「あとで会おうよ」

『彩花、なんで』

「じゃあ」

『おい、彩花ってば』

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