第16話 受付嬢フリース

食堂で食事をした後、アルベルト達は冒険者登録をするため依頼受付広場に来ていた。

熱気と活気が満ち溢れているそこは、大勢の人が行き交って賑わっていた。アルベルト達は受付の方に立ってとある人物を待っていた。


「そういえばアル様、その……フリースさんとはどんな関係なんですか?」


ミネアはアルベルトの方を見ながら心配そうな顔をし、そう聞く。


「いや、あいつは俺がここに来た頃、まだ目が覚めなかったときに付き添いをしてくれていただけだよ」


いや、あいつのことだ、それだけじゃないだろう。だがフリースは俺が目を覚ましたとき本当に嬉しそうにしていたからそんなことは多分だがしていないと信じたい。俺とフリースが今の親密と言える状況に陥っているのは実のところ言うとハルマのせいだ。あいつが女の風呂を除きボコボコにされている時、あいつを女の風呂場から連れ出そうとした日の次の日の朝からだ。アルベルトはフリースとの出会いとハルマの勇者伝を思い出しているとミネアはホッとした様子で胸をなでおろす。


「アルー、何ボケッとしてんだ?」

「少し、お前のことを思い出していてな……」

「アル……」


ハルマは拳を握りしめて男泣きをしようとしていた。それをアルベルトは澄ました顔で。


「勘違いするな、お前が風呂を覗いていたときの事だ」

「んなっ! アルさん? 何を言ってるんですか? あはは」

「そういえば私がたまたまここに泊まることになった時に風呂に入っていたら男が覗きに来たときがありましたわね。確かその男の名前って……フロマ、いやエロマでしたっけ? その場に居合わせた私から言いますと、頬をビンタされ腫れ上がった顔は見ものでしたわ」

「うっ……」


ハルマは頬を引きつらせている。一方のミネアはハルマを地味に煽っている。

そしてついに。


「ハルマさんは知りませんか? その男の名前を、赤髪で黄色い瞳の……」

「俺だよ!! 出来心でやったんです! どうか許してください! ……これで十分だろ!!」


ミネアはそう必至に訴えるハルマを見て上機嫌な笑みを浮かべている。ハルマとミネアがそんなことをしているうちにフリースが来たようだ。


「お待たせしました! アル様 、確認ですが冒険者登録で宜しいでしょうか?」

「あ、ああ……頼む」

「それでは少々お待ちください!」


フリースはそう言うと手元にある引き出しを開け一枚の紙を差し出す。


「これは登録用の紙ですので名前を記入してください」

「ああ、わかった」


アルベルトはフリースに促されてそばにあった羽のペンで名前を記入した。


「そしたら唇に指を押し当てて、その指を紙に押し当ててください」

「ん? そんなことするのか? ……まあ、必要なことだったらやるが……」


アルベルトは唇に人差し指と中指を当てて、その指を紙に押し当てる。

次の瞬間、なんとフリースは指を当てたところに自分の指を当て、それを自分の唇に付けようとしていた。


「ふん!!」


間一髪のところをミネアがその腕を掴んで阻止した。


「早くしてくださいませ? 後が詰まっていますよ?」


ミネアがそう微笑みながら言うとフリースは残念そうに頬を膨らませる。


「ま、仕方ないですね……アル様、フリースは離れ離れになってもずっと愛してあげられますから早く終わらせましょう!」

「次は正式な登録方法を」

「はい! アル様の命令とあればフリースは喜んでお受けします!」


その光景をそばで見ているミネアはフリースを睨みつけている。そしてハルマは何も考えてないような顔をしている。そしてフリースは白紙の紙と番号が書かれたペンダントをカウンターに置く。


「アル様、そのペンダントを紙に乗せ、その上から手を当ててください、それをやったら登録終わりです」

「あぁ、わかった」


アルベルトはそう言うと言われた通りに紙とペンダントの上に手をかざした。すると不思議なことに紙とペンダント、そしてアルベルトの手の周辺に淡い光が現れ、魔法を使うときに出現する、魔法文(ディサスペル)が刻まれた魔法陣(スペルアクター)が空間に刻まれ、そして消える。そしてペンダントを冒険者ということを示すものとして渡される。


「これはいつも持ち歩いていてくださいね! それと、こちらの紙はアル様が何かあったときにアル様の居場所を示す紙となっているので一枚はこちらで預からせてもらいます」


そしてフリースはその紙を複製してアルベルトに差し出す。


「それと、これはパーティー編成などにひつようになりますので大事に保管しておいてくださいね! それとパーティー編成のことでしたらアル様から見て、一番右にいる受付口に相談してください!」


そういうとフリースは深くお辞儀をする。

そしてアルベルトはハルマとミネアが登録し終えるのを待つため、窓際にあるテーブルに座る。

そして登録し終わったミネアとハルマを連れてパーティー編成専用の受付口に向かうのであった。

















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