第15話 食堂のミネア
食堂についたアルベルト達は適当に空いている席を探し、アルベルトの隣にミネア、その向かいにハルマ、というような席順で座った。
「よっとー……で、アルに何の用だ?ミネアさん」
「貴方には関係のないことですよ? ゴミマ……じゃなくてハルマさん」
「今のぜってーわざとだろ! てか最初のやつ無理やりすぎだぞこの先っちょヘビ!」
「はい? 先っちょヘビというのはどういう状況を言ってるんですか? エロマ……間違いました、ハルマさん」
席に座って早々、言い争いをするミネアとハルマ。それを落ち着かせるためにアルベルトはわざと他の席に行こうとする。こういう時にはこれが一番効果的だ、俺の予想だとこいつらは、『アルー、俺はいつだってお前について行くぜ!』とか『アル様! 私を置いていかないでください!』と言葉を発するだろう。
「アルー、俺はいつだってお前について行くぜ☆」
「アル様! 私を置いていかないでください!」
案の定その言葉を言ったがハルマのキザっぽい言い方は当たらなかった。ミネアの方は俺の服をつかんでいる。はぁー、とアルベルトはため息をつきながら元の席に座る。だがミネアはより一層アルベルトとの距離を小さくしていた。
「もう言い争いはするなよ二人とも?……ところでミネア、今日は食堂、休みなのか?」
「はい、そのぉ、アル様とお話がしたくて休みました……」
ミネアは顔を赤くしてもじもじしながらそう答える。
「その、話ってなんだ?」
「はい……アル様は旅に出るんですよね?」
「ああ、多分長くなりそうだ」
そう答えるとミネアは改まった顔でアルベルトを見つめる。
「私も、その旅に連れてってください!」
意外な言葉がミネアの口から出てきた。アルベルトは急な要望に一瞬戸惑ってしまう。 しかしその理由を聞こうとアルベルトは質問した。するとミネアは今のハルマとアルベルトのパーティー編成のバランスの悪さを指摘した。それは遠距離で攻撃、支援する役がいない事だった。
「そこでです! アル様! 私はいかがですか!」
ん?、確かにまだ編成の際の規定人数は超えていない。だがこの話の流れだとミネアは自分が魔法を使えることを言っている。そこでアルベルトはミネアに質問する。
「ミネア、魔法を使えるのか?」
「はい! しかし、リケアなどの基本的な魔法しか使えませんが……」
意外だった、食堂で働いているあの、戦闘とは無関係そうなミネアが魔法を使えるのだ。魔法とは魔書を見て覚えるか、他の人に教えてもらうか、あるいは高度な技術を要するが自分で作るかの三つだけだ。それをミネアが使えるなんて思いもしなかった。
「別に珍しいことではありませんよ? 料理を作る際に炎系の魔法を使いますし、切り傷などの際には治癒魔法を使っていますから」
「確かにその通りだけど、そんなヘボっちい魔法で俺たちを支援できんのか? なんだったらそのヘボっちい魔法を俺に撃ってもいいんだぜー、ほぉーら、ほぉーら」
ハルマはうざったらしくミネアに魔法を撃つよう煽っている。それに対してミネアは不気味に微笑みながらそれを承諾する。
「いいでしょう、ここではカリアントさん……食堂長に怒られてしまうので外に行きましょう」
「いいだろう、せいぜい服を焦がせられるといいな、はっはっはー」
「アル様はここでお待ちしていてください、すぐに終わらせますから」
「あっ、あぁ」
ミネアとハルマは言い争いながら外に出て行った。そして少しの間待っていると外で爆音とハルマらしき人物の悲鳴が聞こえた。そして二人は帰ってきた。ミネアは煙の出ている何かを引きずりながらこちらに向かってくる、ハルマはというと……ミネアに引きずられていた。ミネアが横に座るがアルベルトはかける言葉がなく、ハルマのことを見ていた。そして治癒魔法をかけてあげてくれ、とアルベルトはミネアに言った。
「まぁ、しょうがありませんね、アル様のお願いとあらば」
そしてミネアはハルマに向かって、治癒魔法のリケアをかける。そして目覚めたハルマはミネアに土下座をした。
「すいませんでした! ミネア様、貴女はとても素晴らしい魔法使いです! 是非僕たちのパーティーに入ってください!」
「どうしましょう? アル様、こう言われてしまいました?」
ミネアは上目遣いでそうお願いしてくる。無論、うちのパーティーに入って欲しい。しかし食堂のことはどうするのかと聞くと、その答えは長期間お休みをする、というように通っているらしい。
「なら問題はないか……それと俺たちはまだギルドの方に登録はしていないからあとで一緒に行こう」
「はい!」
こうしてアルベルトのパーティーにミネアが入った。しかしアルベルトはミネアとハルマはうまくやっていけるのか不安だった。そして肝心のハルマは土下座をしたままだった。
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