第4話 祠の名前

レーダスの突然の告白に戸惑ってしまうアルベルト。


「それはどういうことですか?」


アルベルトは動揺しながらも質問する。


「アル君、君は自分がフィランテという滅びた都市周辺の、深い谷底で見つかった……のは知ってるね?」

「はい……しかし、その前のことは……」


アルベルトは幼少期の頃の自分と、なぜ深い谷底に倒れてたのか思い出せずにいた。いわゆる記憶喪失……ただわかるのは自分の名前だけ。そんなアルベルトを谷の調査に赴いていたレーダスはアルベルトを見つけ、救出、看病し、自分の団に入れた……というわけだ。


「俺を救ってくれたこと、本当感謝してます、ですがその剣が俺のだという記憶も、何の為にその谷にいたのか、幼少期はどんな生活をしていたのかわからないんです……」


「アルベルト……お前」


ハルマは初めて聞いたアルベルトの悩みに動揺する。


「ハルマ……悪いがアルベルトと大事な話がある……今後の君たちにも関わることだ、聞いてくれるな?」

「はい……」


ハルマはいつものふざけた態度をする余裕がないのか、あるいはアルベルトを気遣ってのことか真剣な態度で聞く。


「アル君が倒れていた谷底の周辺の調査で分かったことがある」


するとレーダスはその谷の地形などが記された地図を広げる。


「まず君が倒れてた所の周辺を調査したんだが……」

「何か、あったんですか?」


アルベルトは静かに聞く。レーダスはその質問に対し地図に指でアルベルトが倒れていた場所を指す。


「ああ、君が倒れてたすぐ横、いや君が倒れてた所に祠があった」

「それはどうゆう……」


アルベルトが疑問に思うとレーダスは突然話題を変え、本の話題を持ち出した。


「君は『混じり合って落ちた黒と白』という本を知ってるか?」


アルベルト首を横に降る。


「……すまない、君は小さい頃の記憶がないんだったな……」

「いえ、大丈夫です、気になさらずに」


アルベルトがそう言うとハルマが口を開く。


「俺は分かります、小さい頃によく読んでいましたから」

「そうだ、この本は誰もが知ってる、神と神が恋に落ちるという空想の世界の物語だ」

「でも、なんでそれを?」


アルベルトはレーダスに聞く、するとレーダスはこう答える。


「祠に……その本に出てくる神の名が刻まれていたんだ……」

「創生の神と、破滅の神……」


ハルマがそう呟くと、レーダスは続けざまにその神の事を説明する。


「名はアステラとグリアス……天界のルールに背き、天界を追放、人界に封印された神」


レーダスはそうゆっくりとアルベルトに言うと机の上に腕を組みながら両ひじをついた。


「物語の世界の……いや実際にいたであろう神の物語、それが今から話す『混じり合った黒と白』と言う神話だ」

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