10.ハナちゃんの小指(小野田舞子)

 イチョウの葉っぱを黄色に染める。普段めったに使わない一番大きな筆に絵の具をたっぷり染みこませるのは、甘いパンケーキにめいっぱいシロップをかけるみたいでドキドキする。となりではハナちゃんが虫食い葉っぱをていねいに塗っている。黄緑色にお芋みたいな紫色をうまくなじませていて、さすがハナちゃん、センスがひかる。

 美術部の夏休みは、実はけっこう忙しい。秋のコンクールと文化祭に出す作品を手がけながら、合唱コンクールのステージに掲げる巨大ポスターを部員みんなで描きあげきゃならない。それなのに他の部の人たちときたら、学校で顔を合わせれば「プール入りに来たの?」とか「宿題やりに来たの?」とか、あげく「部活だよ」って答えると「えっ! 美術部って夏休みも活動してるの?」だって。失礼しちゃうよ。

 今年の合唱コンクールのポスターは、ハナちゃんの原画が選ばれた。色も形もさまざまな落ち葉が並ぶ、シンプルだけどおしゃれなデザイン。A4用紙に描かれたその絵をステージサイズに作りかえるのは大変だけど、この絵を背にして全校生徒が歌うんだと思うと、やっぱり気合が入る。

「舞ちゃんの葉っぱ、きれい」

 イチョウの黄色のうえに黄緑色を乗せていたら、横からハナちゃんが褒めてくれた。そんなことないよ、と謙遜するはずが、わたしはつい「えへへ……」と照れてしまった。

 ハナちゃんの声は木琴の音色みたいなソプラノで、聞いているとこころがぽくぽくコロコロする。まえにもっちゃんにそう言ったら「なにそれ、全然分かんない」って鼻の頭にしわを寄せられた。でも、坂田くんは「なんか分かるかも」ってうなずいてくれた。「宮沢賢治みたいだね」とも言われたけど。

 幅広の眼鏡に二つ結びのハナちゃんは、男の子にも慕われている。だれにでも分け隔てなく接するし、なんでも入ってる巾着をいつも持ち歩いてて、困ってる子がいたらティッシュでも絆創膏でもサッと渡してあげる。クラスの男子いわく「菜花なばなさんって田舎の上品なおばあさんみたい」。ハナちゃんはおばあさんなんて嫌だと言ってたけど、わたしはちょっといいなと思ってしまった。名前のとおり春のお花畑みたいな人。かと思えば、体育のソフトボールで豪快なスライディングを見せたりして、そのギャップが人気に拍車をかけている。

 そんなハナちゃんが目下熱を上げているのは、志望校である姫ノ松女子高校の演劇部だ。

 七月初めの土曜日、わたしはハナちゃんともっちゃんと三人で姫女の高校見学へ行った。中林くんのツテで、現役生にして演劇部員のお姉さんに案内してもらうという豪華ツアー。まえから姫女の演劇部に興味のあったハナちゃんは目をキラキラさせっぱなしだった。

「姫女の演劇部って、脚本書かないんだって。あ、書くには書くけど、それはあくまでコンクールの提出用で、劇自体はほとんどエチュードで作っていくの。おなじ劇でも次の公演で内容をガラッと変えることもあるし、今年の春公演なんて、最後のセリフを言うか言わないか、そのときの役者の気持ちに任せることにした、って。すごいよね、そんなことできるなんて!」

 いままさに燃えんとしているのがハナちゃんなら、どうも燃えつきてしまったのがもっちゃんだ。地区大会を最後に、もっちゃんはバドミントン部の活動を終えた。学校でたまたま顔を合わせたもっちゃんは、ふやけた海藻みたいに覇気がなかった。

「高校でもバドつづけたいから、あたし、姫女じゃなくて誠雲せいうん女子を受けようと思ってて」

「そっか、誠雲、バド強いもんね」

「でも、親には反対されてさ。プロ選手になれるわけじゃないんだから、もっと将来のことをよく考えろ、って。そりゃそうかもしんないけど、あたし、姫女入れるほど頭よくないし、ハナちゃんみたいに憧れるものが姫女にあるわけじゃないから……なんか、モチベーション上がんないよね」

 いまがよければそれでいい、って思ってるわけじゃないのに。そうもっちゃんはつぶやいた。

「将来のことも考えなきゃいけないのは分かってるけど、やりたいこととかそんな急には見つかんないし。だったら、とりあえずいま持ってるものに全力かけてみようって、そう思うのはダメなのかな」

 

「お泊りお好み焼きパーティーしようよ」

 数日後、ハナちゃんの突飛な提案でわたしたちは菜花家に集合することになった。昼下がりの台所には、お好み焼きの食材が所せましと並んでいた。

「なんか、パーッとやりたくて」

 大きなホットプレートをまえに、ハナちゃんはいつものほんわり笑顔でボウルの生地を手際よく混ぜている。

「るみちゃんもダメもとで誘ってみたんだけど、やっぱり吹奏楽部の練習があるから来られない、って」

「そっかぁ。るみこちゃん、夏休みもずっと練習だって言ってたもんね」

 千切りキャベツをボウルに投入する。待ち受けていたハナちゃんが、キャベツと生地を力強く混ぜあわせる。わたしはハナちゃんに言われるまま、今度は豚肉を切りにかかった。実は、お好み焼きの作り方をわたしはよく知らない。我が家ではたこ焼きも焼かないし、もんじゃ焼きは食べたことがない。いつだったかそんな話をしたら「じゃあ、いつかお好み焼きパーティーやろう」なんてハナちゃんが言って、そのいつかが今日になったわけだ。

「バドの練習してたときさぁ」

 食卓に頬杖をついて作業を眺めていたもっちゃんが、ふと思い出したように言った。

「たまに校舎から聞こえてきたんだよね、るみこのオーボエ。ランニングしてると、教室の窓から吹いてる姿が見えたりして」

「いいなぁ。るみこちゃんのオーボエ、聞いたことないや」

「あっちから声かけてきたときもあったよ。ベランダから、もっちゃーん、って手ぇ振ってくれて。あのときはちょっと嬉しかったな。ほら、るみこって最初、ちょっと壁あったじゃん。無理して仲良くしてるっていうか」

 うんうん。わたしもハナちゃんも赤べこみたいにうなずきあう。はりつめた空気をいまでも覚えてる。なにげないおしゃべりでさえ相槌を打つので精いっぱいの顔をしてた。くるんとした目の奥にいつも怯えた色を隠してた。

「それにさ、るみこの吹くオーボエって、マジできれいなんだよ」

 なぜか得意げな顔でもっちゃんが身を乗りだす。

「ただ上手いだけじゃなくて、ちゃんと感情が乗ってる感じがすんの。練習試合で負けて落ちこんでたとき、上からすっごく澄んだ音が聞こえてきてさ。おもわず校舎を見あげて、そんで、気づくの。あたし、いま、うつむいて歩いてたな、って。ちゃんと顔上げなきゃ、って」

 網戸を張った窓からツクツクボウシの声が流れこみ、軒下の風鈴がちりりん、と鳴った。ホットプレートの向こう側で、もっちゃんの広いおでこにじんわり汗が浮かんでいた。

 お好み焼きは驚くくらいふわふわで、お店のよりおいしいね、と三人で顔を見あわせながら食べた。おなかがすっかり膨れたら、近所の公園へ行って日が暮れるまでバドミントンをした。ハナちゃんがちいさいころ使っていたというキッズサイズのラケットとシャトル。わたしとハナちゃんでペアを組んで、もっちゃんと二対一で戦った。もっちゃんは、

「もう、このラケットちっちゃすぎ!」

 と叫びながら、スマッシュをバシバシ打ちこんだ。

「ちょっと舞子! なんなのそのヘロヘロの球は! そんなんじゃあたくしに勝てなくてよ!」

「ひぇー、もっちゃんに勝とうなんて思ってないよぉ」

「あきらめないで、舞ちゃん! ふたりで全国へ行くって約束したじゃない!」

「ハナちゃんまでなに言ってんだよぉ」

「ほら、舞子、行くわよ!」

「ひぇー」

 夕ご飯はハナちゃんママ特製の夏野菜カレーだった。甘い野菜とスパイスが絶妙で、お昼あんなにお好み焼きを食べたのに、あっというまに完食してしまった。夜は順番にお風呂に入りながらテレビゲームで盛りあがった(いかつい格闘ゲームだったけど、ハナちゃんの圧勝だった)。

「ていうかさ」

 ゲームでさんざん笑い転げたあと、ハナちゃんの部屋にお布団を敷いていたら、もっちゃんがふとあらたまった口調で言った。

「今日、ふたりともありがとね。あたしが部活引退して落ちこんでたから、誘ってくれたんでしょ」

 たぶんそうなんだろうけど「そんなんじゃないよー」とハナちゃんは手をひらひらさせた。

「受験勉強に飽きちゃったから、みんなと遊びたくなっただけ」

「受験なぁ」

 大きなアザラシのクッションを抱えて、もっちゃんがため息をつく。

「正直さ、部活やってるあいだは、そういうこと考えるの先送りにしてたんだよね。けど、さすがにもう逃げらんないもんなぁ」

 そうだよね、とうなずいて、なんとなく三人とも黙ってしまう。その沈黙がかえって背中を押したのかもしれない。「あのさ」とわたしは口をひらいた。

「ふたりは、ちいさいころの夢ってなんだった?」

 えー、と腕組みをして、もっちゃんがさきに答えた。

「お花屋さんだったかな。花なんて買ったこともなかったのにね。まわりの子がそう言ってるから、あたしも! って感じだった」

「わたしはコロコロ変わったよ」

 ベッドのうえで体育座りして、ハナちゃんが指折り数えはじめる。

「パン屋さんでしょ、宇宙飛行士でしょ、その次は洋服のデザイナーで、あと食品サンプルを作る人になりたい時期もあった。テレビで特集してて、おもしろそう! って」

 夢多きハナちゃんにわたしともっちゃんはけらけら笑った。ひとしきり笑ってから、わたしはまえから思っていたことをぽつぽつと切りだした。

「なんにでもなれる、って大人は言うじゃん。こどもは無限の可能性を秘めてる、って。でも、たとえば、わたしがいまから音楽家やスポーツ選手を目指すのは、たぶんもう無理だよね」

「まあ、どっちもちっちゃいころからの鍛錬が必要だからね」

 多少なりともその世界を知っているもっちゃんが、神妙な顔でうなずく。わたしはつづける。

「生まれた性別ですでになれない職業もあるよね。女の人はお相撲さんになれないし、男の人は宝塚には入れない。あと、制限はなくても向いてないとつらい仕事もあると思う。船酔いする人が漁師になったらきついじゃん?」

「それで言ったら」

 ハナちゃんがあとにつづく。

「高所恐怖症の人は高いとこにのぼる仕事できないよね。消防士とか、ビルの窓拭きとか」

「動物アレルギーの人が獣医さんになるのもつらそう」と、もっちゃん。

「ものすごく手先の不器用な人はマジシャンにはなれなさそう」

「果物アレルギーの人が果樹園で働くのも厳しいかも」

「太ってる人が潜水艦乗りになるのも難しいってお父さん言ってたよ。すっごく狭い場所で何か月も暮らさなきゃいけないから」

「潜水艦乗りなんて太ってなくてもなるの難しいでしょ」

「そう考えるとさ」

 延々とつづけられそうな“こんな人はこの職業には向いてなさそう合戦”にピリオドを打って、わたしは言った。

「わたしたちの可能性って、自分たちが意識しはじめるころには、もうけっこう目減りしてると思うんだよね」

 ちいさいころは夢を抱けた。大人はみんな膝を折って「将来の夢は?」とやさしく問いかけてくれて、それにどんな突拍子もない答えをしても――たとえば、アマゾンの探検家、アメリカ大統領、ドラえもん、それから、単純に偉い人やお金持ちなんて漠然としたものでも――「すごいね、なれるといいね」と笑って許された。それがすこしずつ「現実を見なさい」と諭されるようになって、夢というのは、気づけば夜空でかがやくお星さまから手に届く距離にある電球に挿げかえられていた。

「大人って、どうやって大人になったんだろうなぁ」

 ごろりと寝転んで、もっちゃんが天井を仰ぐ。

「一組にさ、磯って男子いるの分かる? あたし、二年生のときおなじクラスだったんだけどさ。あいつ、医者目指してるみたいで、部活も習いごともしないで勉強ばっかしてて、あたし、そんなのつまんなくない? って聞いたことあるんだ。そしたらあいつ、坂本さぁん、勉強ってのは未来への投資なんですよぉ、とか返してきてさ」

 磯くんのセリフの部分だけ粘っこい感じで言うので、わたしもハナちゃんも吹きだしてしまった。

「そんときは小馬鹿にされた感じがムカついて、くだらねーって鼻で笑ってやったんだ。でも、いまは磯の言うことにも一理あるな、って思う。周りにはもう夢や目標を持ってる子もいっぱいいて、あたしがバドに費やしてたその時間を未来のために有効活用したり、まだ目標のない子だって、とりあえず将来の選択肢を広げようってコツコツ勉強してたりするわけでしょ? あたしは部活に打ちこんだこと後悔してないけど、なにが正解だったかなんて、蓋を開けてみないと分かんないよね」

 いましかできないことがある、というのは、きっと本当のことなんだろう。

 いまを生きる、というのは、とても大切なことなんだろう。

 けれど、時間は大きな河とおなじで一方向にしか流れないし、わたしたちは分身の術を使うことも、タイムスリップして未来の自分に会いに行くこともできない。いまを選びとって進むのは、まるで雲のうえを歩くように頼りない作業なのかもしれない。

「あんたたち、そろそろ寝なさーい」

 時計の針が零時を回るころ、廊下からハナちゃんママに促されて、わたしたちはようやく布団に潜りこんだ。

 電気を消し、おやすみを言いあって目を閉じたとき、

「あっ」

 と、もっちゃんが声をあげた。

「舞子のちいさいころの夢、聞いてなかった」

「えー、わたしはいいよぉ」

「ダメ。人に語らせといてそれはずるい」

「そうだよ、わたしも舞ちゃんの昔の夢、聞きたい」

「えー」

 蛍光灯の輪っかを眺めながら、どうやら逃げられそうもない空気を感じて、わたしはしぶしぶ打ち明けた。

「漫画家か小説家になりたかった」

 えっ、ともっちゃんがまた短く声をあげる。

「それなら、いまからだって舞子ならどっちも目指せるじゃん」

「そうだよ、舞ちゃん、絵も文章もすごく上手だし」

「うーん、でも、それだけで食べていくのはやっぱ厳しいと思うし……わたしより上手い人なんて、ゴロゴロいるもん」

「そんなこと言ったら、たいていの人はみんなそうじゃん」

 口をとがらせるもっちゃんに「まあ、そうなんだけどね」と苦笑いして、そのときふと、坂田くんの顔が浮かんだ。そうだ、思えばわたしの天狗の鼻を最初に折ってくれたのは坂田くんだった。坂田くんの絵と文章は、どっちも飾り気がなくてあったかくて、たぶんるみこちゃんのオーボエとおなじで、だれかのこころを動かす力がある。その坂田くんでさえ、プロの漫画家や小説家になるのは難しいかもしれない。もちろん、もしなにか書いてくれたら絶対読ませてほしいけど。

「でも、舞ちゃんの気持ち、わたしもちょっと分かるよ」

 うすぼんやりした暗闇に、ハナちゃんの声がぽっかり浮かんだ。

「わたし、本当は保育園の先生になりたかったの。これはね、節操のないわたしにしてはけっこう本気の夢だったんだ。けど、保育園の先生ってピアノ弾けないといけないでしょう。わたし、生まれつき左手の小指がちょっと短いの」

 ほら、と体を起こして、ハナちゃんは左手を開いて見せた。ほんとだ。明かりをつけなくてもシルエットで分かる。いままで気づかなかったけど、ハナちゃんの小指はわたしのよりひと関節ぶん短かった。

「わたし、手も全体的に小さくて。オクターブが届かないの。べつにピアニストになるわけじゃないし、ピアノの弾けない保育士さんだっていると思う。でも、知りあいの保育士さんに聞いたら、やっぱり弾けるに越したことはないって言われて」

 ころんとベッドに体を戻して、ハナちゃんはささやき声でつづけた。

「ちょっとだけピアノ教室に通った時期もあったんだけど、どうしても小指を気にしちゃうの。だれかになにか言われたわけじゃないんだよ。先生も教室のお友達も、ハナちゃん上手、ってほめてくれた。けど、だめなの。左手の指が転ぶたび、この短い小指のせいだって思っちゃうの。そのうち、できるようになったことが増えても、それがなに? って。できないことの方ばかり数えてしまうようになって、自分の手も、自分自身のことも嫌いになっちゃいそうで、それであきらめたの、ピアノも保育士も」

 網戸から夜風が流れこみ、ハナちゃんの声をさらっていく。昼間聞いた風鈴のような声音に、ハナちゃんのなかでその夢はもうとっくに夜空の星になったんだなと思った。

「他の人から見たら、あきらめる必要はなかったかもしれない。わたしがわたしじゃなかったら、たぶん、あきらめるのはまだ早いよ、って言ってたと思う。それでも、あのころのわたしはあきらめることを選んで、当時はつらかったけど、いまは後悔してないの。だって、わたし、自分の左手、けっこう好きだもの」

 でも、舞ちゃんの夢はまだあきらめないでほしいな。

 急に話が戻ってきて、わたしは「うええ?」と変な声をあげてしまった。

「ま、まあ、まだ完全にあきらめたわけじゃないし。もしなれなくても、それに近い仕事に就けたらいいなぁ、とは思ってるけど」

「言ったなぁ? あたし、いまから舞子のサインもらっとこ」

「じゃあ、わたしが舞ちゃんのサイン、考えてあげる」

「えー、ふたりで勝手に話進めないでよぉ」

 間接照明のオレンジ色の明かりが三人分のくすくす笑いを包みこんだ。もう一度おやすみをささやきあって、今度こそ目を閉じる。

 ボーイズ・ビー・アンビシャス。いやいや、ガールズもビー・アンビシャス。手のなかに残っている可能性の種を、わたしはまだ信じてあげたい。だけど、なにかをあきらめずにつづけるのとおなじくらい、あきらめることにもきっと強さがいる。もしかしたら、わたしたちに必要なのはそっちの覚悟なのかもしれない。大人になるってことは、叶わない夢のひとつひとつを夜空に帰していくことなのかもしれない。

 それでも、そのひかりが行く道を照らしてくれるなら、大人になるのもそんなに悪くないことだったりして。そうだったらいいな。そうじゃなかったとしても、また三人でお布団を並べて、今日とおなじようにいろんな話をしたい。

 家の裏手に川があるからだろう、せせらぎと一緒にカエルの大合唱が聞こえる。その声にまじって、もっちゃんの寝息が耳をくすぐる。ハナちゃんも、もう寝ちゃったかな。いつもとちがう夏の部屋のにおいに、わたしはそっと深呼吸をした。

 

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