7.太陽(中林豊)

 諒太郎りょうたろうくん、久しぶり。お元気ですか。

 僕は明後日から夏休みです。

 来週、剣道部の地区大会があります。僕は団体戦に中堅で出ます。大会案内を添付したので、よかったら見に来てください。


「なんなの、その業務連絡みたいな文章は」

 送信ボタンの上で指をさまよわせていたら、ゆかちゃんが眉をひそめて画面を覗きこんできた。勝手に見んなよ、とふりむいた目のまえに、これでもかとレースをあしらった真っ赤なブラジャーが迫ってくる。

「なんでここで脱いでんの」

「暑いから。あんたこそよくクーラーつけないでいられるね」

 裸族の姉は冷蔵庫を開け、飲みかけの炭酸飲料をコップに注いだ。俺は慎みぶかい弟なので、それ俺のファンタ、なんて愚かなことはもちろん口走らなかった。

「お母さんから聞いたよ。こないだ、多恵子たえこおばさん、来たんだってね」

「うん」

「リョウくんって呼んであげなよ。そんな他人行儀なメール、気ぃ遣ってるのバレバレだよ」

「急にこんな連絡よこす時点でバレてると思うけど」

「貸してみ、あたしが打ってあげる」

「いーよ、余計なことすんなよ」

 ケータイを奪われそうになり、慌ててふりはらう。ゆかちゃんは唇をすぼめて、

「じゃあ、千鶴ちづるに添削してもらいな」

 と、下の姉の名前を出した。

「やだよ、ちぃちゃん、絵文字使うじゃん」

「使えばいいじゃない、絵文字でも顔文字でも。あんたの文章は冷たいのよ。かっこつけてるやつにだれもこころ開きたくないでしょ」

 痛いところを突くだけ突いて、ゆかちゃんはファンタをごきゅごきゅ飲みほすと風呂へ行ってしまった。

 空のコップと一緒にとり残される。急に静かになった台所で、俺はもう何度も読みかえしたメールにまた目を落とす。お元気ですか、はやめた方がいいのかな。三浪したあげく二年もひきこもってる無職の成人男性が元気なわけないよね。でも、省いたら省いたでなんかぎこちないし。ああ、めんどくさいな。人の気持ちなんか、分かるわけないじゃん。

 他人をなぐさめるのは苦手だ。優しいことばをかけるのも、背中をさすったり笑いかけたりするのも。だって、たいていの悩みは聞いたところでどうにもできない。どうせ分かりもしないのに、「大丈夫だよ」とか「心配ないよ」とか、そんな気休めのことばをどうしてかけられるんだろう。火に油を注ぐくらいなら、最初から首をつっこまない方が思いやりってもんじゃないの。


 中林の家は医療一族で、その流れを作ったのはお産婆さんをしていたひいばあちゃんだった。戦争の気配を感じとっていたひいばあちゃんは、こどもが最前線に送られないようにと息子を医者の道へ進ませた。当時を思えば非国民と呼ばれてしまいそうだけど、とにかくひいばあちゃんの思惑通り、息子は負傷兵や民間人の治療をしながら戦禍を生き延び、終戦後、産科医になった。それが俺のおじいちゃんなんだって。

 おじいちゃんのこどもは三人いて、やっぱり全員が医者になった。長男の孝之介こうのすけおじさんは脳神経外科の開業医、妹の須磨子すまこおばさんは大学時代に結婚して夫婦で眼科病院を経営。で、「だれも継いでくれなかったから」と恨み節でおじいちゃんの産婦人科を継いだのが末っ子の智樹ともき、俺の父さんだ。

 リョウくんは孝之介おじさんとこの長男で、一番歳の離れたいとこにあたる。ちいさいころ、俺はちぃちゃんとふたり、孝之介おじさんの家によく預けられた。おじさんの家に行けば、リョウくんと弟のタケヒロくんのおもちゃで好きなだけ遊べた。プラレールにレゴブロック、ミニ四駆。年上の男の子たちといかにも男の子っぽい遊びをする。いま思えば、ゴツゴツしたおもちゃそのものより、女所帯の家にはない白熱した雰囲気が新鮮だったんだと思う。

 リョウくんは面倒見のいいお兄ちゃんだった。あのころのリョウくんとおなじ年齢になったいま、リョウくんがどれほどおおらかで優しかったか身に染みる。リョウくんは女の子のちぃちゃんも必ず仲間に入れてあげた。やんちゃなタケヒロくんがちぃちゃんをのけ者にしようものなら、「こらこらぁ」と全然怖くない感じで弟をたしなめ、絶対にちぃちゃんの味方になった。だから、俺たち姉弟のあいだで「こらこらぁ」は流行語になって、家に帰れば「リョウくんがほんとのお兄ちゃんだったらよかったのに」だの「ゆかちゃんとリョウくんを交換こできればいいのに」だの無邪気に酷なことを言うもんだから、「だったらあんたたちがリョウくんちの子になんな!」とゆかちゃんをしょっちゅう怒らせていた。

 学年が上がるにつれ、俺たちが本家に預けられることは減って、代わりに多恵子おばさん……リョウくんのお母さんがなにかとうちへ来るようになった。おばさんの顔はたいてい沈んでいた。いつだったか学校から帰ると、リビングにすすり泣くおばさんがいて、母さんが白衣姿のままおばさんの肩をさすっていたことがあった。

「ああ、豊くん、おかえりなさい。お菓子持ってきたから、食べてね」

 おばさんのくぼんだ目から視線をそらし、俺はただ「うん」と返事をする。洗面所へ向かう俺の背中に、おばさんの弱った声が煙みたいにまといつく。

「私が教育を怠ったせいだって、主人は言うんです。諒太郎も武浩もせっかく私立学校へ通わせてやったのに、私が母親として怠けているから……」

「そんなことないでしょう。多恵子さん、うちの子たちの面倒までよく見てくれたじゃない。私よりよっぽどいいお母さんよ」

春子はるこさんは働いてるから……。それも助産師として智樹さんと病院を立派に支えていて。私、最近は医師会の集まりに参加するのも億劫なの。先生方の奥様は女医さんか医療関係の方か、そうでなければ裕福な家柄のお嬢さまばかり。私みたいな頭の悪い専業主婦、いないもの。諒太郎が医学部に合格できないのは母親の血がよくないからだって、うわさされてるようで怖くて……」

「なに言ってるの。そんなの関係ないですよ」

 親ってのはふしぎなくらい比べる生き物だ。こどもを比べ、きょうだいを比べ、家庭を比べる。そのプライドの上塗りに見て見ぬふりするのがたぶんこどものマナーで、運が悪ければすりつぶされて、あるいは迎合することでしか親の愛情を得られないのかもしれない。

 孝之介おじさんは比較するのが生きがいみたいな人だった。おじさんは他人を引きあいに出すことでしか話ができない。相手を褒めるときは必ず別のだれかをけなす。それで相手が喜ぶと本気で思ってる。ヘンな人だな、とこどもながらに思っていた。まぁでも、そういう大人ってべつにめずらしくないよね。小学生のころ、それでちょっとだけ人間関係がこじれた。

「カネモチ」

 昨日まで仲のよかった友達が急にそんなことを言うようになって、しばらく不穏な気持ちで学校へ行っていた。何気ないおしゃべりのなかで、俺がなにか言うと「うるせぇカネモチ」みたいな。冗談めかしてるけど冗談にしては当たりが強いんだよね。だからって売り言葉に買い言葉で「だまれビンボー人」なんて返すわけにもいかないでしょ。べつにそいつ、そこまで貧乏じゃなかったし。

 最初はその程度だったのに、金持ちイジリはだんだんエスカレートして、そのうち俺の内面イジリに拡大していった。

「中林、ピアノ習ってるんだって。やっぱカネモチはちがうよな」

「ピアノって女子が習うもんじゃないの?」

「女子なんじゃない。セーラームーン詳しいし」

「オカマじゃん」

「シスコンだし」

「ハイソックス履いてるし」

 いや、ハイソックスはべつによくない?

 いまなら「ごめんね、脚が長くて」なんて鼻であしらってやるけど、そのときは「俺、なにか悪いことしたかな」と立ちどまってしまった。友達を家に呼ぶのもやめた。自慢に聞こえたかも、ことばを選ばなきゃ、そう思ってるうちにだんだん口数が減って、いつのまにかしゃべるのが下手になった。

「豊、シマくんと何かあった?」

 夕飯の支度をしながら、母さんが釈然としない顔でそう聞いてきた。

「今日、保護者会でシマくんのお母さんにご挨拶したんだけど、無視されちゃったんだよね。まあ、お母さんがなかなか集まりに参加できてないから、ご迷惑かけてるところはあるんだけど」

「それ、お母さん絶対やっかまれてるのよ」

 そばで聞いていたゆかちゃんが、食卓の漬物をぽりぽりつまみ食いしてそう言った。

「医者の奥さんなんてさぞ華やかな暮らしぶりだろう、って勝手に決めつけて盛りあがってるんでしょ。いいお洋服着て、高級な車に乗って、夕飯は三日に一回ぶあついステーキ食べてるって思ってるんだよ、きっと」

「ごめんね、現実は魚の塩焼きで」

 苦笑しながら、母さんは魚焼きグリルをガシャンと開けて、鮭の切り身の焼け具合を確かめた。

 あのとき、大人の世界にもそんなマウント合戦があるのかと衝撃を受けた。それから、急に冷めた。ああ、なるほどね、分かってきたわ。俺がいじられるようになったのも、要するに親の陰口がこどもに伝染しただけなんだ。

 お医者さんと結婚したい、ぜいたくな暮らし、玉の輿。そういうことばを聞くたび、てんてこまいで働く母さんや医者の家特有の重圧に押しつぶされた多恵子おばさんを思い出す。医者の息子なんて将来安泰、勝ち組。そう言われるたび、望まない医学部受験に未来をすりつぶされたリョウくんのうつろな目を思い出す。それでいて、病院が忙しくて家族旅行にほとんど行ったことがないとか、厨房のおばちゃんが作った病院食がよく食卓に並ぶとか、そういう内実をさらけ出すと今度は嬉々として同情される。

「あぁ、なんか分かるかも」

 いつだったか坂田がけらけら笑ってうなずいた。

「俺もちいさいころおじさんに面倒見てもらってたから、お母さんの手料理食べさせてもらえなくてかわいそう、とか言われた。余計なお世話って感じ」

 坂田は、俺とちょっと似てると思う。べつに俺みたいにひねくれてないけど、たまに温度を捨てたような目でさりげなく他人とのあいだに線を引くときがあって、ああこいつもけっこう幸せの定規で測られてきたのかな、とうっすら感じてしまう。

 だれにしてもらったかは案外どうでもいいんだ。だれかにしてもらったっていう記憶があれば。そのだれかにことさら実の親をあてはめたがるのは、たぶん、自分をいい親だって思いたいからでしょう。そんなに気になるなら、自分のこどもに聞いてみればいいのに。


「お先ぃ」

 風呂から上がったゆかちゃんが、ようやくパジャマに腕を通した。

「ゆかちゃんっていつまでうちにいるの」

「なぁに、いちゃ悪いわけ」

「いや、そうじゃなくて」

 濡れた髪をタオルで拭きながら、姉はふたたび冷蔵庫のなかを物色している。

「リョウくんに声かけるの、ゆかちゃんの方がいいんじゃないの。歳も近いし、医学部いるんだし」

「あたしじゃダメよ」

 さっきファンタを注いだコップに今度は麦茶を注いで、ゆかちゃんはこころなしか目を伏せて笑った。

「あたしは昔っから孝之介おじさんにリョウくんたちの焚きつけ要員扱いされてきたからね。ゆかりちゃんに負けるな。分かってるだろうけど、おじさんの言うそれは、女なんかに負けるな、本家に泥を塗るな、ってことよ」

 そんなことないでしょ、とは言いきれなかった。おじさんが医学部志望の姪っ子をよく思ってなかったことは、小学生だった俺ですら感じとっていた。

「あたしが高校生のうちはまだ格下のライバルで済んでたけどね。浪人生のリョウくんを追いぬいて現役で国立医大に合格したもんだから、もう笑えなくなっちゃったのよ」

「でも、リョウくんはそれでゆかちゃんを僻んだりはしないでしょ」

「しないよ、リョウくんは優しいもの」

 麦茶をこくこく飲んで、ゆかちゃんは言う。

「優しいから、他人に向かう感情もむりやり自分の方に曲げちゃうの。あたしが何を言ったとしても、リョウくんはきっと自分を責める材料に変えてしまう。……けど、豊はちがう」

「なんで」

「あんたは歳が離れてたおかげで孝之介劇場にほとんど登場しなかったでしょ。豊の存在はリョウくんを責めない。リョウくんのなかで、きっと豊はまだ自分のあとをちょこちょこついてくるかわいいのままだもの」

 ま、難しく考えすぎないことね。

 ぽんと肩を叩かれる。

「リョウくんを救ってあげたいとか、大それたことは考えちゃだめよ。自分を救えるのは自分しかいないんだから」


 ベッドに寝転がって、またメール画面をひらく。結局、今日は送れなかった。もう遅いし、明日の朝送ってみよう。でも、遅いとか早いとかリョウくんにはあるのかな。ずっと部屋に閉じこもってたら、今日と明日の境目もあいまいになりそう。

 リョウくんちの子になんな。

 いつかゆかちゃんが放ったことばが、夏の積乱雲みたいにむくむく成長して追いかけてくる。

「あれだけ時間も金もかけてやったのに」

 赤ら顔でビールをあおりながら、幸之介おじさんは言った。正月、親戚一同で本家に集まったときだった。そのころにはもうリョウくんは二階の自室から出てこられなくなっていた。

「家庭教師をつけて、高い学費の予備校に通わせて、受験する大学の学長にまで頭を下げたこともあった。家を守るとはなんだ、一族の歴史とはなんだ、そういう大切なことをこどものころから伝えてきたのに。ああ、俺のことばはなにひとつ響いてなかったんだなぁ。がっくりきちゃうよ、この二十年はなんだったんだろう。こんなに愛情をかけて育てたのに、あいつはどうして後足で砂をかけるようなことしかしないんだ」

 大きな木みたいに優しいリョウくん。だけど、温室で大事に育てられた木は、雨も風も虫も知ることなく、与えられすぎた水と肥料にすこしずつ根を腐らせていく。おじさんは息子に与えたものばかり数えて、奪ってきたものに目を向けようとはしない。小学生のころ「警察官になりたい」と作文に書いたリョウくんを怒鳴りつけたことも、中学まで打ちこんできた剣道を「勉強に差し支えるから」と辞めさせたことも、模試の成績が悪ければリョウくんの目のまえで多恵子おばさんをなじったことも、おじさんの記憶のなかでは透明になっている。

 リョウくんが部屋に閉じこもってから、多恵子おばさんは「だれかが私の悪口を言ってるの」としきりに口にするようになって、精神病院に出たり入ったりをくりかえしてる。タケヒロくんはいつのまにかピリピリした顔つきになって、医学部に合格したあとも鎧をまとったままの目でゆかちゃんを見てる。それでも、孝之介劇場の幕は下りない。リョウくんのひきこもりも多恵子おばさんの病気もおじさんにとっては悲劇を引きたてるBGMで、舞台の真ん中に立つ自分こそがいつだって一番かわいくてかわいそう。

 だれかの人生を天秤にかけて、それより重くなるものってなんだろう。たとえば何百人もの命を救ったとして、それで自分の家族の人生を踏みにじったことはチャラになるんだろうか。ご先祖さまがいていまの自分に繋がってるっていうのは分かる。ひいばあちゃんのしたたかな戦略がおじいちゃんを生かして、そのおじいちゃんが戦後の焼け野原に病院を建てたおかげで、俺たち子孫はお金に困らず暮らせてる。でも、それはひいばあちゃんやおじいちゃんの物語で、孝之介おじさんの物語でも、リョウくんの物語でもない。おじさんが大事に抱えて離さないもの……病院という建物とそれを乗っけた何十坪だかの土地は、庭付きの大きな家は、医者の中林一族っていうネームバリューは、リョウくんの人生より価値のあるものなの?

 時計がいつのまにか零時を指していた。寝なくちゃ、明日も部活がある。明日も部活、って言える日もあと何日もないんだけど。

 部屋の明かりを消すと、ひらいたままのメール画面が暗闇のなかで煌々と光った。まぶしさにたまらずケータイを閉じ、ベッドにまた寝転がって、だけどまだ目は開けたままでいる。

 明けない夜はないとか、やまない雨はないとか、そういうきれいなことばがいつのまにか安っぽく聞こえるようになった。朝が来るのってそんなに嬉しいことかな。リョウくんにとっては、夜に包まれてる方が楽になれたんじゃないかな。

 リョウくん、覚えてる? リョウくんの中学最後の地区大会、みんなで応援に行ったよね。俺はまだ小学校に上がったばかりで、道着姿の中学生がみんな大人っぽく見えた。

 あのときの団体戦、リョウくん、副将だったよね。リョウくんは「地味なポジションだよ」なんて笑ってたけど、大事な役回りだっていまは知ってる。俺のチームの副将もさ、リョウくんとは真逆で小柄なやつだけど、めちゃくちゃチームを支えてくれんの。どんなに戦況が苦しくても、デカい相手に吹っ飛ばされても怖いくらい冷静で、「絶対に大将へ繋ぐ」っていう気迫がすごいんだ。中堅の俺が試合の悪い流れを断ち切れないまま、なんならさらに悪化させて崖っぷち状態にしちゃっても、ちっちゃくなった灯火をありがたそうに受け取って「まだ繋がってるよ」って言うように俺の拳をトンッて叩いて、そんでチームの全部を引き受けて開始線に立つんだ。リョウくんもきっとそういう選手だったんでしょう。

 俺さ、運動キライだし、チームワークとかもっとキライだし、運動部なんて自分とは縁遠いと思ってた。でも、あの日のリョウくんがかっこよくて、「剣道楽しいよ」って言ってたのが忘れらんなくて、だから剣道部に入ったんだよ。

 剣道の団体戦って、なんかふしぎだよね。チーム戦って言いながら戦うのはひとりずつで、自分が戦ってるときはだれも助けてくれないし、逆に仲間が戦ってるとき自分は何もできない。応援だって基本は拍手だけ。孤独だよね、わりと。なのに、俺のまえに戦ってる仲間の背中があって、戦ってる俺の背中を見守る仲間が後ろにいて、そうするとなんか、余計なもの全部とっぱらわれたような感覚になるんだ。リョウくんもそうだった? 剣道やってるとき、リョウくんもそんなふうに自由になれた?

 腕で目もとを覆って、むりやりまぶたを閉じた。寝なくちゃいけない。明日が来るから。俺にもリョウくんにも、動いてようが止まってようが、生きてるかぎりだれの上にも陽は昇るから。

 自分を救えるのは自分だけ。だったらなおさら、どうやって手を差し伸べればいいんだろう。こわばったことばしか吐けない。変にコーティングしてガタガタになったことばしか。それを差しだすのが恥ずかしくて、結局、なにも言えなくなるんだ。

 こころのなかでは、こんなにしゃべってるのに。

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