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「彼、自衛官で」

 少しだけ悲しそうな表情が混じる。そうか、確かに自衛官ならなかなか会えないか。

「だからたまに会えると凄く嬉しくて。彼も疲れているのに笑顔でデートしてくれるし、凄く楽しいんです」

「そうでしたか」

「メールや電話ですらあまり出来ないから辛い時もあるんですけど、顔を見られたら全部どうでもよくなっちゃうんです」

 どこか遠くを見るように、ヒトミさんの視線が動く。

「あの人が傍にいてくれるなら、どうでもいっか、って。今回も無事に帰って来てくれて良かったなって」

 その顔は先日の彼の表情ととてもよく似ていて。お似合だなと素直に思う。

「まぁやっぱり帰っちゃうと寂しいんですけどね。だからこうやって先週のデートを一人で回っているんです」

「なるほど」

「傍から見たら結構痛いやつだと思うんですけど、彼の事を思い出せるから。って、口に出すと本当に痛いやつですね、私」

 隠すように笑う表情に、嘘はなくて。

「いいえ、素敵じゃありませんか」

「そう言って下さいます?」

「えぇ、もちろん。きっとこの事を彼に言ったら喜んでくれると思いますけれど」

 すると彼女は、くす、と笑って「いやいや」と首を振った。

「恥ずかしくて言えません」

「そうでしょうか?」

「だって凄く会いたいみたいじゃないですか」

 実際そうでは? と思いつつも口角を上げて黙っておく。

「彼には彼の大切なお仕事がありますから。私は待つことに決めているんで」

「待つことに」

「はい、それが女性の美徳ってモンでしょ?」

 それが本心かどうかは訊かなくとも何となく分かる訳で。二人の時間が少しでも長くなればと願わずにはいられなかった。


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