俺は男だけど、どうやら最強の魔法少女らしいです
白味てこ
序章
プロローグ
「レオはやっぱり、このまま魔法少女になるのか?」
燃え盛る大地、崩れる街を背に傷だらけの少女は俺に語り掛ける。
その問いに俺は、何も答えることが出来なかった。
何故なら知ってしまったから。
その道が、どれだけ険しく辛いものであるのかを。
しかし、何も言えずに固まる俺を見て少女は笑っていた。
「また今度会えたら、その答えを聞かせてくれよ?」
少女はそう言って俺の頭をなでる。
その体はすでに傷だらけだというのに、これからきっと死ぬこととなるのだろうに彼女は決して笑顔を崩さなかった。
「また会える日までそれは預とくよ、だから絶対に死ぬんじゃねえぞ」
嫌だ、行かないでくれ。
そう思ってるのに声が出ない。
まだ俺は答えを言えてないのに――
そこで、俺の意識はだんだんと暗転していく。
「――話、聞いてますか?
誰かに揺さぶられ、意識が覚醒していく。
どうやら話の途中で寝てしまっていたようだ。
それにしても、嫌な夢を見た。
もう何年も昔の出来事だというのに、今でもこうして夢を見てしまう。
俺が魔法少女になったその日の出来事を。
「能力試験後とはいえ、これは君の採用面接のようなものですからもう少しシャキッとして欲しいですね」
咳ばらいと共に俺の目の前にいた面接官が嫌味を言ったので苦笑いしながら面接官に謝ると、彼女は再び話始める。
そうだ、今は面接の途中だ。
国の公認魔法少女が集う組織、魔法少女協会。
俺は協会に参加し公認ライセンスをもらうために、その面接試験を受けている途中だった。
「あなたのような間抜けでも、我々魔法少女協会はあなたを雇用しなくちゃならないなんて、本当に世も末ですよね?」
腰ほどまである銀色の髪に綺麗なエメラルドの瞳。
人形のように整った顔立ちだが、その瞳はかなり不機嫌そうだ。
顔はすごい綺麗なのに、性格はキツそうだな…。
って、めっちゃ睨まれてるし。
俺の心の中でも読んでるのか?
「まあいいです。今言った通り、我々はあなたを歓迎します。これから、人類の為に
せいぜい死ぬまで働いてください」
「了解っす。でも、何すりゃいいんだ?」
その質問に対し、帰ってきた答えは舌打ちだった。
いや、分かってますよ。
的外れな質問しちゃってるって。
でも、知らないもんは知らないんだし仕方ないよね?
「基本的に、あなたにはチームに加わってもらい協会から下る指令をこなしていただきます」
少し間をおいて、ため息とともに彼女は答えてくれた。
ただ、答えてくれるならもう少し優しく教えてくれてもいいのに。
その言葉がのどまで出かかったが、彼女の眼光によって押し戻される。
……この人、本当に俺の心を読んでるんじゃ?
「実際にあなたの能力を見させていただきましたが、最強と呼ぶにふさわしい能力でしたよ」
あれ、もしかして俺褒められてる?
けれども淡い期待は一瞬で打ち砕かれる。
「確かに最強にも成り得ますが、同時に最弱の能力にも成り得るということはゆめゆめお忘れなきように。あと、これがあなたの魔法少女ランクと配属先です」
そう言って彼女に手渡された紙を開いてみると、そこには大きく【E】という文字と恐らくはチーム名と思しきハクサンチドリという文字が書かれていた。
「ちなみに、S~Fランクの中でEという評価は、未だにあなたを測りかねているというのもあります」
「でも、頑張れば上がってくんだろ?」
「もちろんです。ですが、我々はあなたの努力よりも実用性をいち早く知りたい。だからあなたには最弱のチームに入って、その最強の能力でどこまでチームを生かせるかテストをしてみたいと我々は考えました」
「は?」
「だから、その評価はあくまで仮だと言っているのです。これから少しの間あなたの働きを見て本当の評価を下します」
思わず間の抜けた声が出てしまう。
最強とおだてる割にはその低評価、そしてよくわからん理論のテスト。
俺には何が何だか理解できない。
俺が混乱していると、俺の後ろにあるドアをノックする音が聞こえる。
「まあ、詳しい話は彼女から聞いてください」
音の主は、ドアの陰からヒョコっと顔を覗かせていた。
少し癖のある金色の髪がふわふわと揺れている。
面接官である彼女を北風と表現するならば、音の主ある少女はさながら太陽とでも表現したくなるような柔らかい雰囲気をまとった少女だ。
「彼女が、あなたの当面の上司となる
紹介されると、彼女はニコニコと笑いながら部屋に入ってくる。
その姿はさながら天使のようだ。
そして、面接官が平原なら、彼女は山……
「あいてっ」
そんな事を考えてたら面接官に思いっきり足を踏まれてしまった。
やっぱりあなた俺の心を読んでますよね?
「こんにちは、甘木レオ君。私がチームハクサンチドリのリーダー天春いちじくだよ。よろしくねー」
かくして俺の、いや、俺たちの魔法少女としての物語が始まることとなった。
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