海を駆ける少女·····と俺
金曜日のゴールデンタイム勢三人が出揃い、消されるかもしれないという恐怖に駆られながらも、今俺らは某青狸の所有するピンク色のドア(諦め)によって浜辺に来ている。
そして、結構重要な所に今更ながら気づかされていた。
今····夜。
そう、めっちゃ暗い。
のだが、そんなことはたいして関係無い。
姉がいる限り。
「こんな暗い所じゃ何一つ遊べねーし、月の光を百倍にしてみよっか。」
ポン!
瞬間、昼間なのかと見紛う程にその場は一気に明るくなった。
ハァ···思わず溜め息がでた。月の光じゃなくて、月に反射した太陽の光だろう、まったく···天才なんじゃなかったのかよ···。
ナニが天才だ、ただのアホじゃねーか。
「さぁ、海に来たらする事は一つ。やはり、海の上を走らなきゃだな!」
·····ん?、空耳だろうか?今海を走るとか走らないとか····。
海に来たら泳ぐ。
この考えを持つ俺は普通ではないのだろうか?
否、恐らくこの答えは海水浴に来ている人100に<海に来たら何をする?>と聞いた場合、99人が即答して返す答えだと言えるだろう。
もしかすると100人かもしれない。
だが、そこに中二病が含まれるなら話は変わって来る。
中二病を簡単に説明しようとするとこうなるだろう。
現実と非現実の境を見失った者。自分が特別な存在だと信じて疑わない者。
中二病は簡単に現実をねじ曲げる······妄想をする。
そのままねじ曲げた気になり、錯覚する。
中二病じゃない俺には分からんが、まぁ大体そんな感じで間違ってないだろ。
少なくとも、姉を見ている俺はそう感じている。
だから、そんな中二病達は物理法則を完全に無視した海の上を走るなんていう行動に、憧れ、恋い焦がれる。
だから、中二病からしたら海に来たら海の上を走る。そんな妄想をするのもごくごく普通のことなんだろう。
····そう、妄想で終われば良いのだ。
結局出来ない自分を、水に触れたら死ぬ呪いにかかっている、とか言って肯定する。また今度だと諦める。それで終われば良いのだ。
だが、姉は自分の弱さを肯定しなくていい。
なぜなら姉は、実行出来るのだから。
そもそも弱くなど、無いのだから。
「本当に···、やってやがる」
姉は海の上に立ったかと思うと、えげつないぐらいの水しぶきをあげて地平線の彼方に消えていった。
中二病の姉が本気を出してきた!!! nisekoi @nisekoi912
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