第4話 百鬼夜行と七五三田
僕は一心不乱にペダルをこいだ。
気が付いたら大通りに出ていた。やはりここも人がいない。
さっき居た場所からかなり離れた所まで来た気がし、僕は自転車を降りた。
「ハァ、ハァ、ハァ。逃げ切ったのか?」
僕は息を整えながら振り返ってみると、そこにはあの白い布の人物はいなかった。
「よかった……に、してもさっきのは何なんだ?明らかに人って感じでもなかった」
僕はあいつが追いつく前に学校に向かって自転車をこぎだした。
校門をくぐって学校に入る。
やはり、学校にも人の気配が無かった。
「ここもか……本当にどうなっているんだ」
僕は自転車を駐輪場にを置き、昇降口に向かって歩き出そうとしたら、この場にいるはずの無い人の気配を感じた僕は気配のする方に目を向けると、普段は使うことの無い最上階の教室に誰かがいた。
「?」
僕は気のせいだと思いながら、人がいるかもしれない教室に向かう。
同時刻、最上階の教室
「やはり、来たか。東雲蒼。いや、天邪鬼の従僕」
僕が2階の廊下を歩いていると、つきあたりの階段からまた『あいつ』が階段を下りてきた。
「な!嘘だろ……あの時確かに振り切ったはずなのに!」
僕が驚いた瞬間に、あいつが僕に向かって走り出してきた。
「マジかよ!今度は走るのかよ!さっきは走んなかったのに!」
僕は全力で階段を駆け上がり、階段横にあった教室に入った。
しかしそこには、僕以外にもう1人いた。
そいつは、茶髪でこの学校とは違う制服を着ていた。
「お前は誰なんだ?」
「初めまして。俺の名前は七五三田印(しめたしるし)。君と似たような者だ。東雲蒼」
七五三田印は窓際に立ち、僕を見て言った。
「!?なんで、僕の名前を知っている?そして、僕と似たってどういうことだ?」
「俺は、妖怪に眷属化された奴を殲滅している」
僕は殲滅と言う言葉に驚いた。
殲滅は、簡単に言うと皆殺し。跡形も無く殺すこと。
僕は、理由を聞いてみる。
「何故、そんなことをするんだ?」
「君は知らないのか?妖怪の眷属化をされたら、3か月後には人間じゃなくなる。人間じゃなくなると、主である妖怪に行動・思考すべてが奪われる。眷属を通り越しての奴隷化だな。俺は、そうなる前に殺している」
僕は天邪鬼から聞かせられてないことを聞いた。
確かに、この内容だと天邪鬼が話すわけが無い。そしたら、こいつは単なる殺人鬼ではないか。
「お前のしている事はたんなる殺人だ!お前は、人間ではなく妖怪を倒すべきではないのか?」
「俺が妖怪を倒す?ハハハハハ!実は俺も妖怪持ちなんだよ。だが、妖怪を倒すほどの力を持っている奴では無くてな。だから人間を殺っている」
こいつも僕と同じ妖怪持ちだと……そうだった、さっきこいつは『君と似た者』と言っていた。
その時に気づいておくべきだった。今の僕には天邪鬼がいない。多分この世界にもいないのだろう。だとすると、僕だけで戦うのか。
「じゃあ、僕も殺すのか」
「そうだが。もしや、怖気着いたのか?心配するな楽に殺してやる」
七五三田がそう言うと、一瞬で数多の数の妖怪が出現した。
「多すぎだろ!」
「言い忘れていたけど、俺妖怪は『百鬼夜行』。君は知ってるかな?」
「聞いたことはあるが詳しくは知らない」
「じゃあ、教えてやる。百鬼夜行とはな、日本の説話、つまり御伽噺に出てくる妖怪が深夜に徘徊することを言う。今は俺が所持しているから、時間帯を気にすることなく出現させられる。まぁ、ざっと説明した。じゃあ、死ね」
僕は迷うことなく教室を飛び出し階段を下る。人生でやったことの無い『下り階段の一段とばし』をやりながら下ってるのに、妖怪たちが僕に追いつき始めている。
「早っ!なんでこんな時に天邪鬼はいないんだよ!」
天邪鬼がいない今、後ろの妖怪たちを相手にするのはとても利口だとは言えない。だとしたら、今は逃げることしかない!
「逃げてるばっかで勝てるとでも?勝てるわけがない!東雲蒼。お前は俺が作った結界を破ることが出来れば勝ち、出来なかったら負けだ。このことを東雲蒼は気づくかどうかだな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます