第9話

ありがとう、という、きもちすら彼女のなかには、隠れて見えなくなっていたのです。

いったい、なにを、そんなに.。黒い塊のようなものに、支配されて。


そこから逃れるように、光を求め、もがきもがいて。彼女は。

天の使いとして生きようと思い描いたのは、彼女が意識してのことではありませんでした。


ただ漠然と、世界のことを救いたいと、救うという行為の本質すら知らず、彼女は。

自らの体を、異世界のものへと変化させて。


手で触れて、じぶんの背中から翼が生えていることに気づいたときの彼女は、茫然として、それでいて陶酔して、しばらく、動けませんでした。

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