第2話

サナギという、「声」を聴いたのは、その時でした。

アンジェラは、身構えて、あたりを見回します。

ファサファサと、きしむ羽根の音に、まぎれて聴こえてくるサナギの「声」を。

さがしても、見つからない。


―――見つからないよ。ふふ。


(私は、サナギ。でも、もう・・・・・・)


からだは、もう見えないのでした。サナギは。


風と、同化したサナギは、海のうえを、吹いて渉る「声」となって、聴くものの心に直接、はなしかけているのでした。


肉声を、失ったサナギは、とても、よく響く「声」で、ひとたちの心を、そっと撫でていきます。


その様子を、じっと見つめたアンジェラは、きゅうにサナギが、いとおしくなり、見えないサナギを抱きしめました。


ひゅっ。


翼を、たたんで、降り立った崖のうえ。


サナギと、アンジェラは、向き合いました。

空気の層が、厚く、たちこめています。

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