『やわらかな闇』

ぽふ、

第1話

でぶでぶの天使が、霞立つ雲のソファで、ぼんやり、遠くを見つめていました。

地平線のまわりが紅く、星がひとつ瞬きます。


でぶでぶのアンジェラは、両の手で、弓のような形のハープを弾きます。

ぽーーん・・・・・・。

響いて、あたりに溶けてゆきます。


くすくす。

むっちり体が、揺れて、黒い髪が、風に、さらわれるようになびきます。


―――おいで、おいで・・・・・・。


どこにゆくの?

私は、ここに、いるというのに。


連れて行かれるふうな心地で、風のこと、見つめます。


びゅぅぅぅぅぅぅ。

渦巻いて、雲たちは、さわがしい。


いつのまにか、陽光が、アンジェラの瞳に映り、まぶしく照らしています。

差し出された手の、その、あたたかなこと。

いだかれるようにして、ふぅわり、アンジェラは翼を、ひろげて飛び立ちます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る