『さなぎ』

ぽふ、

第1話 サナギ

私は、サナギ。

ひとと触れ合い羽化するまえの。


私は、この名前を嫌ってた。

おかあさんがつけてくれたという、この名前。

なにも、サナギってないじゃない。


ずっと、羽化しないでいろってことなのかなぁ。

私。


へやにひきこもって、もう何年たつだろう。


ひきこもってって言っても。

トイレには行くし、ごはんだって、ちゃんとダイニングで食べる。

お洋服を、買いにだって行くんだから。

完全に扉を閉めきっているわけではなく。


ただ、ひととの接しかたを知らないのだ。


へやの窓だって、閉めきっているわけではない。

むしろ開け放して、いまなら外の虫の音が騒がしいくらいだ。

いや、心地よくといったほうがいいかな。


好きなとき好きなだけ、布団に、くるまって寝ていられる。

しあわせ。


虫の音が心地よく聞こえるのも、そうしたわけなのだ。

ああそうか、私はサナギ。

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