他愛もない雑談

角槍頭ツノヤリトウ

第1話

「今日の議題はよくアニメでいる冴えない主人公についてだ。」


いつもの調子で夏目は後ろの席にいる僕に議題を投げかける。と言うのもこの男、夏目周平は授業が終わるやいなや僕に議題という名のこいつの頭の中の消しカスを僕に振りかけてくる。


ちなみに昨日の議題は「帝王切開って必殺技っぽくね?」だ。方々から怒られれば良いと思う。


「その冴えない主人公の何が問題があるんだ?」


「いやな、あいつら冴えない学校生活とか言ってる割に可愛い妹が朝起こしてくれて、可愛い幼馴染が一緒に登校してくれて、可愛い委員長が世話焼いてくれて、可愛いクールな先輩が何故か気に入ってくれてて、可愛い小動物系の後輩が慕ってくれてるんだぞ!?そんな奴の学校生活が冴えないならどんな学校生活が冴えてるんだって話だよ!」


まあわからなくも無い問題だった。


「あいつらにとっての夢見た学校生活って一体何なの?〈可愛い女子生徒とお話を出来る〉それだけでは飽き足らず何を望むと言うんだ?欲望が擬人化したキャラクターか?おい!!!くそが!!!」


妬み嫉みが酷すぎて怖すぎる。きっかけがあったら犯罪犯してるレベルの鬱憤が溜まってるなこいつ。怖いので話に乗ってあげよう。僕に被害が及ぶ前に。


「ま、まぁ取り敢えずお前の言いたいことはわかったから、それで何を議論するんだよ?」


「悪い熱くなりすぎた。本当に冴えない主人公っていうのはどういうものか?っていう話だ。現実的に考えて冴えてない奴はどういうやつか?っていうのを話し合いたい。」


「なるほど。それならやっぱり彼女の有無とか部活動とかじゃないか?」


彼女の有無これは言わずもがなだし、部活動はまずグループに属し、そこで友人関係も出来る。運動部ならハゲでもモテるし、文化部も女子に囲まれて3年間過ごすことが出来る。ちなみに僕は帰宅部だ。


「確かにそれに当てはめると冴えない主人公には当てはまらなくなるな。一発で解き明かすとかお前冴えてるな!」


答え出るの早くない?お前議論する気ないのかよ。まぁ取り敢えず夏目の中で納得がいったらしくこの議題は終わりを迎えたその後、教室の後ろのドアが開いて、誰かが近づいてくる。


「ねぇ!周くん!一緒にお昼ご飯食べる約束忘れてない?」


「あ、悪い。ちょっと秋月と駄弁ってたわ。ごめん秋月そういうことだから、俺ちょっと行くわ!」


そう言って夏目は自分の所属しているバスケ部のマネージャー兼彼女と教室を離れていった。


「何で冴えない主人公が彼女もいなくて、部活も入ってないか。僕にはわかったぞ夏目。冴えてる主人公は腹が立つからだ。」


秋月良介16歳。帰宅部。彼女なし。僕は冴えない主人公だ。

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