お題:「試験勉強」

No.1

「先輩。去年の過去問、取ってあったりします?」


 去年の夏。永峰さんに頼まれて、僕は自室の隅でダンボール箱を開けた。中身は高校時代の教科書やノート、期末試験の答案など。もちろん試験問題も保存してある。


「あー……」


 僕は頭を抱えた。英語。世界史。どれもこれも。プリントの裏面には、びっしりと書き込みがしてあった。




「自慢の剣術もそこまでだ」


「そのようだが」


 ミルは刀身が半ばから折れたレイピアを見やり、ため息をついた。


「手加減もできなくなった」


 刹那、ミルの瞳が蒼く燃えた。突然吹き始めた風に長い髪がなびく――




「この続きどうなるんですか!?」


 後日、永峰さんは瞳をキラキラさせて僕に迫った。試験はどうにかなったそうだけど、あの書き込みが気になって仕方なかったらしい。


 あれから一年。僕は今、新人賞に向けて小説を書いている。最後まで書いて読ませると約束してしまったから。


 小説の書き方を学ぶために、ずいぶん本を読んだ。通信講座まで受講した。はっきり言って大学の講義より真面目に取り組んでいる。あまり受かる気はしないけど、今までで一番意味のある試験だと思う。あの笑顔をまた見られるんだから。

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