渇き

序章

私は乗りたいバスにも乗れない。いつだってそう友達の輪の中になんて入れっこないみじめで臆病者だ。常にドラマのエキストラでいう通行人役、何をしてもとりえのない。

前まではそうだった。

人は誰かを頼りにしなければ生きていけない生き物だ、そう綺麗事ばかりに思っていたあの頃にはもう戻れそうにない。今考えるとそんな事を思っていた自分に笑えてしまう。

友情、愛、そんなものがあれば生きていけるなどと、まんざらでもない事を本当に考えている人はいるのだろうか。

人は孤独でからこそ自分の行く道を切り開けるのにとひしひしと感じたのはあの事件からだった。