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 コースターの上に置かれたハーブティからふわりと昇る香りは、何を使っているか分からないがとても安らげる香りがした。女性が好きそうな香りだ。一緒に出された焼き菓子のランクドシャは舌触りが最高だった。

 カップをコースターに戻すと、おもむろにミクリさんが口を開いた。

「私、恋占いも得意としているのですが」

「え」

「占いましょうか?」

 え、え、何の話? 恋占い? どうして?

「必要かなと思いまして」

 そんな真面目な顔して言わないで。別に必要じゃないからっ。

「あら、そうなんですか? 花菱さんからそういうものを感じ取ったから」

 感じ取った!? え、どういうこと?

「花菱さん・・・」

 驚いてミクリさんを見ると、名前を呼んでじっとこっちを見つめてくる。いや、俺じゃない、何かをか。え、ちょっと黙るのやめて、怖いから。

「花菱さんの身近な方、で必要な方がいらっしゃいますね」

 ・・・いるとしたら、ミケくらいしか思いつかないけど。てか俺の視たことについては何も言わないのね。

「ミケさんですか」

「はい、あるとしたらアイツくらいしか」

 ゲイのミケが恋した居酒屋のバイト君は、実は女の子だった、と言うことが先日判明してミケは結構なダメージを受けていたのだ。恋愛対象が男だから自分でも情報処理が追いついていないって感じで。今もその話題には触れようとしないし、こっちからも触れないからどうなったかは良く分からないけど。

「なるほど、可能性は高いですね。今度お話を聞いてみようかしら」

「ミクリさんなら正直に話すかもしれませんね」

 なんだかんだ言って、ミクリさんは話しを聞くのが上手くてついつい話し過ぎてしまうから。さすが占い師。

「花菱さんも何かありましたら、ご遠慮なくお話し下さいね。お力になれるかもしれませんから」

「ありがとうございます」

「ご近所さんですから」

 ミクリさんの無表情が少しだけ和らぐ。今度はうちへ招待することにしよう。

「ミクリさんも何かあったら言って下さいね」

「何でも言っていいんですか?」

 出来れば怖がらせることは言わないで。

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