第3話
三
その日の晩、私は、1人暮らしの自分のアパートで、1人ぼっちでウィスキーを、シングルで飲んでいた。
そのウィスキーは、最近購入した、本場スコットランド産の、ヴィンテージウィスキー。そして、私が翔さんと、飲むはずだったウィスキー。
ウィスキー好きの私なら、味の違いも分かり、絶対においしい、はずなのに…。
今日のウィスキーは、味がしない。
『私の大好きな翔さんは、どこに行ってしまったの…?』
私は、翔さんを失ったショックから、立ち直れないでいた。
そして、寂しさを埋めるように、私はグラスにウィスキーを注いだが、ウィスキーはこんな時、私に何もしてくれなかった。
『やっぱり、ウィスキーは楽しんで、飲むもの。特に、大事な人と…。
でも、私にとって一番大事な人は、もう、ここにはいない。
私は、どうすれば…?』
私は、途方に暮れていた。
そうやって体に悪いやけ酒を、無理矢理流し込んでいる間に、私はあることを、閃いた。
『私が知っている翔さんは、幽霊だった…。
なら、ネットで調べれば、何か分かるかもしれない。
例えば、事故で亡くなったとか、何かの事件に巻き込まれたとか…。
それで、翔さんのことを調べれば…、もしかしたら、本当にもしかしたらだけど、
翔さんに、もう一度逢えるかもしれない。』
思い立ったら即行動するタイプの私は、早速パソコンを起動し、「桜谷翔」と、検索してみた。
しかし、というか案の定というか、翔さんに関する情報は、得られなかった。(唯一、同姓同名の人の、SNSは見ることができたが、そんなもの見てもしょうがない。)
でも、私は諦めきれなかった。そして、何を思ったか検索ワードを変え、「幽霊」で検索してみた。
すると…。
「幽霊との交信、承ります。」
というネット広告を、たまたま見つけてしまった。
『幽霊との交信?そんなことができるの?』
私はその広告を、少し胡散臭く思ったが、でも今は、それを信じるしかない、そうも思い、そこをクリックした。
「幽霊との交信をご希望の方は、○○○までお越し下さい。」
『○○○か…。ここからだと、ちょっと遠いけど…。
行くしかない。』
私は、そう決心した。そして、そこに行けば、翔さんに逢える。私には、なぜかそんな確信が、あった。
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