第26話 「そのネーミングは、どうかと思う」3



 まさか3があるとは思わなかったでしょ。偶然ですね、ぼくもです!



 そして、またこの注意書き、書かねばなりません。


 お食事中の方は、閲覧をご遠慮ください。




 うちの会社は最近、出勤簿にパソコンつかってます。なんかアプリケーションでそういうのあって、交通系ICカード、つまりスイカとかパスモとかをカードリーダーに読み込ませて出退勤するんです。で、このスイカ、パスモのことをB店長はこう呼びます。



『ピッ』



 まんまで分かりやすいんですが、新しく入ったバイトの子のICカードを登録するのはB店長の役目で、新人バイトにいきなりこういう。


「ピッ持ってる? ピッで出退勤管理するから、ピッ貸して」


 もちろんみんな、「?」となります。



 まあ、これは、わかりやすいからまだいい。




 つぎは手を拭くペーパータオル。


 いまは違うんですが、一時期うちは「タウパーナチュール」という商品を使ってました。

 これはトライフという会社が発売しているタウパーというペーパータオルの中のナチュールという種類なんです。


 で、これ。B店長、うまく言えなくて、「もう、『チュッチュ』でいいわね!」とわけわからん命名をしてしまったんです。


 よって、職場ではこんな会話が。これはノリちゃんが入社した直後のこと。



雲江「すみません、チュッチュとってくれます?」


ノリ「は?」


ザキ江「チュッチュって、ペーパータオルのことだから。雲江さんにキスしちゃだめよ」



 いーんですが、なんでぼくがセクハラしたみたいな流れになってるんでしょう。




 さて、ここから時系列は数年前に遡ります。


 そう、B店長とぼくが百貨店のイートインコーナーにいた当時。


 百貨店では、食品にたずさわる販売員全員に、定期的に腸内検査が義務付けられています。

 腸内検査。つまり検便ですね。


 いまの検便は、調査会社からもらったプラスチックケースに便を少量入れて、シールで封して提出し、腸内細菌の有無を検査して結果を出してもらうものです。

 当然これ、期限があります。いつまでに提出しないとだめ、という期限です。



 この腸内検査の容器はプラスチック製で、ちょうど万年筆のインクカートリッジ程度の大きさ。この容器にB店長がつけたコードネームが、まさかのこれ。



『うんこ』




 で、この腸内検査のプラスチックケースが配られて、みんなにそれを配布している期間のお話。


 ちょうどそのケースをまだ持って帰ってないワイ子ちゃんから電話がきました。電話はイートインのカウンターの内側。そのとき、カウンターではお客さんがお食事中という状況です。


B店長「ワイ子ちゃん、つぎ来たとき絶対うんこ持って帰ってよ! わかった? うんこ、忘れないでね!」



 そのとき、お客さん、食事しながら「えっ?」という顔でB店長の方を見たんです。で、つぎの瞬間、「まさかね」という顔でうなずき、お食事続行。

 あまりのことに、聞き違いと判定してくれたようです。


 とりあえず、のちほど、こう提案しました。



雲江「あの、腸内検査の容器を『うんこ』って呼ぶのやめません。第一、空容器だから、まだうんこ入ってないし」


B店長「そうね、そうね、そうね」


 そうねは、一回!





 ちなみに、そののちは、「検体」の容器のことを『ケンちゃん』と呼んでます。空容器だから、まだ検体も入ってねえけど。



 が、しばらくしたら、それをすっかり忘れて、また『うんこ』と呼び出し、再度注意されるB店長でした。




 余談ですが、この腸内検査。期限までに出さないとどうなると思います?


 検査施設に自腹で送るらしいです。


 過去に1人、期限内に提出しなかった娘がいて、それがモネちゃん。あのドラクエの発売日翌日に遅刻して来て、理由が「戦国バサラ」やってたという腐女子のモネちゃんです。


 モネちゃん、業務態度はまじめなんですが、ときどきドジふみます。


 腸内検査を期限内に出し忘れ、まさかの自腹発送しました。そしてひとこと。



モネ「クール宅急便でした」


 ま、中に入ってるしね。






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