第8話 自分の性格と能力を物語に生かす

 今回は『第三者視点』を自分に当てはめたら、どんな事を知る事が出来て、これから書く物語にどう役立ってくるか。

 そんなことを、書き連ねていこうと思います。


 まずは例題として、花咲樹木がどんな人間なのかを解説していこうと思います。


 前回、少し書きましたが、自分が物書きを目指し始めたのは22歳の頃でした。

 いえ物書きというと、範囲が広いですね。最初は小説作家に成りたかったのです。小説を初めて書いてみたのも、その頃です。


 目指し始めたきっかけは、とある友人Tとの出会いでした。


 高校を卒業し、大学にも通わず、25歳まではのんびり暮らそうと考えていました。

 どうしてか? 単純に、やりたい事がなかったからです。

 世の中にまったくと言っていいほど、就きたい職業がありませんでした。正直に言うと、真面目に働きたくもなかったです。でも働かないとお金がないので、仕方なくアルバイトしていました。


 そのアルバイト先で出会ったT君と、趣味を語り合う友人になったのです。


 アルバイトが終わってから、日夜オタク話で盛り上がりました。楽しかったなぁ。

 どういう漫画が好きか、どんなゲームを遊んでいたか、そして好きなアニメの話です(これが一番盛り上がった)


 そこで、友人Tから『演出には制作側の意図がある』という概念を教わったのです。

 ここまでのエッセイで少しだけ記した、構造解析に関わるものですね。


 例えばアニメ制作には、様々な人物が関わっています。

 チームを全体統括し、アニメの方向性を決める監督がいて、実際のシナリオをまとめる脚本家がいて、絵を動かす特色を強く出す作画監督がいて、声優さんの音声やBGM等を演出に盛り込む音響監督がいて……といった具合ですね。


 アニメとは人が作ったものであり、そこには制作の裏側にいる人間の癖や好みが出ます。

“誰が”制作チームに関わっているかで、ある程度、作品の方向性が見えてくるのです。


 そして、どの制作会社が作ったかでも、特色がガラリと変わります。

(この会社なら安心だ。あぁ~この会社に作って欲しかったなぁ、という意見がこれにより出てきます)


 ……なにそれ、そんなの当たり前じゃんと思った方は大勢いると思います。


 しかし花咲樹木は、友人Tとの会話でそれを意識するまで、毎日のように楽しんでいた作品群の、そんな当たり前にすら気付いていなかったのです。


 毎日をなんとなーく、生きていました。頭ぼんやりでした。


『考える』ということを深く掘り下げていない人間だったので、あらゆる物事を大ざっぱに判断していたように思います。


 当然オタクではあったので、好きな作品というものはありました。

 しかし、それをなぜ自分が面白く感じるか、までは把握できていない時期です。


 楽しいか、そうじゃないか。

 好きか、そうじゃないか。


 そんな二元論で生きていました。

 友人Tよりもずっと多くの作品を嗜んでいたのに、一つひとつの作品についての『理解度』が、全然まったく違ったのですね。


 でもそこは元々、好きな作品たちです。


 その構造解析の概念を念頭に置くことで、自分が“無意識下で”面白いと思っていた特色に気付いていったのです。


 この作家さんは、こういった哲学を盛り込んだ小説が多いなぁ。

 この漫画家は、こういう特色を強く押し出すことで、ファンの心を掴んだのか。

 このアニメ監督は、温かくてハッピーエンドな作風が多いよね。


 そういった事を、まるでスポンジのように吸収していったように思います。

『考える』という奥深さに、気付いた瞬間でした。


 そして22歳の頃、就きたい職業がない、夢を持っていない自分に不安を感じ始めます。

 本当にこのままでいいのか。このまま過ごして、就職なんか出来るのか……?


 そこで初めて、オタク趣味を仕事にできたら、こんな不真面目な自分でも、努力が嫌いな自分でも、長く働き続けられるかもしれないと、ふと考え付いたのです。


 でもそこで、オタク趣味の何を仕事にすることを目指せばいいのか? に悩みました。


 自分には得意分野がなかったからです。

 絵も描けない(三日も持たず)、プログラム知識もない(HTMLを学ぼうとして挫折)、音楽制作の知識もない。


 何も、誇れるものがありませんでした。


 そこで構造解析を、自分に当てはめてみることにします。

 第三者視点ですね。自分がどういう人間なのか、自分が作品のどんな部分に一番興味を引かれるのか。


 自分は何のオタクなのか――その時、初めて気づきます。


 自分は『物語』のオタクだったのです。

 その作品にはどういう物語があるのか、そこに注目して楽しんでいる事を知りました。

(キャラクターの魅力ではなく、イラストや動画の出来でもなく、効果音やBGMでもなかった。皆さんも自分が何のオタクなのか、一度考えてみると面白いかもです。それをテーマに盛り込めば、専門知識という武器が備わります)


 では「物語」を仕事にする分野で、今まで努力してこなかった自分が入れる分野とは、なんだろうか?


 はた、と考え付きました。時間は深夜二時くらいでしたね。


 文字なら書ける。文章なら作れる。

 学校で通過してきた国語という分野のみで、もしかして『小説が書ける』んじゃないか?


 そういう安直な妥協が、作家を目指した始まりでした。

 おいおい上手くいったら印税生活か!? といったゲスな考えも、もちろんありましたが(笑)


 明日も朝からアルバイトがあったのに、PCを立ち上げ深夜に小説を書き始めます。


 ですが無謀にも推理小説を書き始めて、それを構成するに必要な知識があまりにも足りていないことに、すぐ気付かされました。

 今まで努力して来なかった報いが、自分に襲いかかって来たんですね。


 推理のトリックってどう考えればいいんだろう? それをどう表現すればいい?

 キャラはどう書けばいいんだ? コイツはこの場面で、何を考えている?

 そもそもセリフや、地の文は。文章を書く時の基本だって、あるんじゃないのか?

 え、ノックスの十戒ってなんだよ。初めて聞いたわそんなルール。


 といった具合でしたね。

 そもそもが、常時ぼんやり生きていたので、自分のことも、世の中のことも、何にも知らなかったのです。

 文字を書いて、文章を長く打ち込んで、無理やりまとめることなら出来る。


 でもそれは――小説として『成立している』んだろうか?


 そんな基準や、自己判断も覚束なかったですね。


 そうか、物語を構成する前には、色んな事を知らないといけないんだ。

 ようやく、そう考え始めました。


 そこでまず、自分が『どういう人間なのか』を考え始めます。


 なぜか?

 ――物語を一度書いてみて、自分が知っている範囲でしか文章を書けない事に気付いたからです。


 知らないことは、書けないんです。

(※でっち上げることは可能です、しかしそれが正しくなければ批判を受けます)


 さて、それでは自分がどういう性格しているか。

 どんな事が出来るのか。

 構造解析という『第三者視点』を用いて、過去にどんな行動を取り、どんな印象を周囲に持たれてきたかを考えていきました。


・中学校までの成績は中くらい(可もなく不可もなく)、高校では一切勉強しなかったので最下位。

・運動はまったくできず(体育の授業がめっちゃ嫌いでした)。だけど足だけは多少速かった。

・顔も特段格好よくなく(告白されたこと・モテたこと一切ない)。だけど深く物事を考えていなかったので、後先考えずに告白することができ、何度か彼女を作ることが出来た。

・友達は少ない(極度の人見知り、緊張しい)。学年、クラスの中で数人としかつるんでない。


・そして見栄っ張りで、くだらない事にいちいち嘘をつく人間でした。

(かぁー昨日は二時間しか寝てないわー、かぁー。を地でいく人間。しかも五時間くらい寝ていたのに、寝てないアピールするというアホさ)


 承認欲求が高いため嘘をついてまで褒められようとし、物事が自分の思い通りにいかないと機嫌が悪くなり、自分の言動が相手をどんな気分にさせるか考えず、脳直で会話していたのです。

(いわゆる空気が読めない。KYですね)


 そして、だからこそ、友達が少なかったんだと理解しました。


 誰だって、そんな厄介な人と仲良くなりたがらないですよね。

 ああ、そういう事だったのかー……と、どんどん自分の過去の出来事を思い返しては、その度に嫌いになっていきました。


 しかし、そこでメゲない。諦めない。


 それを何とか『物語』に生かせないだろうか?


 そうも、考え始めました。


・嘘つきというのは、クリエイターにとって必要な才能だと無理やり納得する。

 → 話を盛る、誇張、脚色、でっち上げという物語の基本に必要なもの。


 物語とは『人間の嘘や妄想を形にした』ものなのだと。

(ノンフィクションと銘打っているものは別です)


・見栄っ張りは、作者が考える「格好いい人物」のイメージだと無理やり納得する。

 → 中二病がいい例ですね。自分が思う格好いいを、キャラ作りに生かす。


 自分のそういう部分を、『キャラを書く』時の参考にすればいいと。

(知っていることしか書けない、の部分にかかっています)


 こういった感じで、考える事で自分がどんな人間なのかを把握していきました。

 そして知った部分を、物語に生かそう、という発想に変えていったのです。


 ここでまた、改めて今回の意図を書きます。

 ――なぜ第三者視点で、自分を知る必要があるのか?


 物語を組む上で、何よりもプロットが大事だという話はしましたね。

 ですが、プロットという展開の中で生きる『キャラ』の存在も、蔑ろにしてはいけないのです。


 キャラが一人も登場しない物語などありません。


 だからこそ自分を知る事が、何よりキャラを描写する上で役立ってきます。


 なぜなら――物語やキャラは『自分が知っている範囲の描写』しか書けないからです。


 知らないことは、書けないんです。

 だからこそプロの皆さんは、作品作りの為に入念な「取材」を行います。

(調べるというインプット作業の本格化)


 物語とは、作家の嘘や妄想を形にしたもの。

 考えたことを言語化したものです。


 ですが現実に即していないと、読み手の共感が得られないという恐い側面も持っています。


 次回からは――『現実的思考に沿うことの大切さ』を順次カキカキしていこうと考えています。

 現実的思考による、物語の作り方です。


 ようやく考える事柄が「世界観や設定の作り方」に差し掛かってきましたね。


 世界観の選び方のメリット・デメリットを先に記すか、キャラの性格や人数決め、その配置についてか、プロットから来る各種設定の置き方か、どれから書き連ねていくか迷います。

 うむむ、プロット作成については、まだ詳しい内容を書いていないので、世界観かキャラ設定でしょうかねぇ……。


 どれから知りたいか、という要望がもしあったら、そこから攻めます。

 なかったら雰囲気で選ぼうかなと思います。気軽にコメント等にてどうぞ、よろしくお願い致します。

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